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映画「ソロモンの偽証  前篇/後篇」 抜群に優れて引き込まれた大傑作

2015年04月25日 19時00分00秒 | 映画・テレビドラマ・漫画
映画「ソロモンの偽証 前篇・事件」と「ソロモンの偽証 後篇・裁判」を観終える。
なんて素晴らしい物語だろう!

筆者は前篇を公開1週目に鑑賞した直後、続きが早く知りたくて仕方なくなって、遂に我慢できなくなり書店で原作小説を買おうとしてしまったほど。
それでは後篇を鑑賞する楽しみが減ってしまうだんぞ、そう自分に強く言い聞かせて購入を思い止まらせたけど、それくらい前篇に引きずり込まれたんだ。
そして待望の後篇を観て、また前篇を改めて観返して。

いたく感動した。
陳腐な言葉だけど感動した。
主人公の藤野涼子役の藤野涼子ちゃんを始め、オーディションを潜り抜けてみっちりと演技の勉強をしてきた少年・少女の芝居に感動した。
そして、人間の業というのものを深く考えさせられた。

クリスマスの朝に死体で見つかった中学2年生男子の柏木卓也。
彼の死の原因は、自殺なのか、殺人なのか、事故なのか。
自殺ならその動機は?
殺人または事故ならその経緯は?

そして交通事故で死亡した浅井松子、彼女の死の遠因も柏木に関係あるのだけど、その関係性とは何なのか?

真相は、正直なところ“ええええ、そういうことなん??”ではあるんだけど、『ソロモンの偽証』の醍醐味はそこではないんだよね。
当たり前だけど、柏木の死の真相は重要。
でもこの物語でそれ以上に、同級生の死、ひと一人の死に少女と少年たちはどう向き合い、大人社会に対抗し、そんな子どもたちに親・教師・警察はどう接するか、その描き方こそ重要であり本質。

それと、正義の在り方を問う。
この死亡事件に飛びつくマスコミは、社会正義を気取るけど、実は深く掘り下げた取材はしておらず、却っていろんな人を傷つける。
いじめは悪いことだと口にしながら、その場面に出くわすと見逃す―実際、いじめを咎めれば自分に類が及ぶ危険性はあるし、面倒事に首を突っ込むのは煩わしいけど、そのせいで悲劇が起こってしまった。
また素行不良の生徒に、教師も警察も真摯に向き合わなかったから、事件に混乱を招いた。

でもこれ、子ども社会限定だけのことのようで、大人の世界でもありふれたことなんだよね。
いじめを不正と置き換えれば、いくらでも似たようなことはあって。

テレビ朝日のドラマ「相棒」もそうなんだけど、事実(真実ではなく)を暴くってことは、心を血らだけにする作業。
社会に、人間関係に、人生に亀裂を入れるのが事実を明らかにすること。
だから人は、不都合な事実を隠そうとするんだけど、そんな人間の業を藤野涼子を通して、観客の心に突き刺す演出。
ホント、考えさせられます。


でもって、この映画、原作は読破してないからそっちはどうか分からないけど、映画はサスペンスやミステリーというより、青春映画。
ミステリーの表紙をした少女少年の成長譚に仕立て上げています。
だからなんでしょうね、奇妙な爽やかさが物語の終わりから漂ってくる。
アンハッピーエンドといえばアンハッピーエンドなのに、でもそう感じさせない明るさが差し込んでくる結末でした。


最後に、クラス担任の黒木華(はる)ちゃんと、柏木は殺されたと告発する手紙を書いた少女の母親役を演じた永作博美さんの芝居が素晴らしい。
ももいろクローバーZ主演の映画「幕が上がる」でも黒木華ちゃんは先生役なのだけど、とても同一人物とは思えない演じ分け。

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