受賞前から、この映画にはとても興味が有り、3月1日に公開が始まってからはシネコンで観たいと思っていた矢先、ロンドンへの出張が入り、ちょうど機内エンターテインメントで上映されていたので幸運にもシネコンに行かずに早速観ることが出来た。
まずは何ともインパクトのある映画である。あらすじを極簡単に言うと、声が出せない女性とアマゾンの半魚人が恋に落ちるという物語。これだけ聞けば、何ともB級映画的なプロットである。そんな映画がアカデミー賞の候補になるのが不思議であった。
しかし、この映画、何とも不思議な魅力に引き込まれてしまう。半魚人は相当リアルでグロテスク。一瞬かなり気持ち悪い感じだ。そしてこの半魚人と恋に落ちてしまう女性がまた”おばさん”で、これまたリアルなキャラ設定であり、決して“美女と野獣”では無く、“おばさんと半魚人”なのである(笑)。しかし、観はじめるとこのおばさん=サリーが何とも魅力的に思えてきて、更に半魚人も不気味で気持ち悪いという感覚を通り越して“カッコいい”と思えてくる不思議である。だんだん二人に感情移入して、二人の恋を応援したくなってしまうのだ。
この映画の中の半魚人は、世の中から差別され、虐げられた存在を象徴する。また、主人公のおばさん=サリーは言葉が喋れないという障害を持っているからこそ、普通の人とは違い、純粋に半魚人と心を通わせることが出来たのである。また、半魚人もそんな彼女だったから、心を開くことが出来たのである。その意味では、社会で虐げられているマイノリティーを表している映画でも有り、現代社会における人種差別問題にも一石を投じている点でアカデミーからの評価を得たのだろう。
映画全体を包むやや暗いトーンは、冷戦下という時代背景からも来ているが、これがまた独特な空気感を作り出している。日本の怪獣やウルトラマン好きでも有名なギレルモ・デル・トロ監督が、半魚人を題材に恋の要素を盛り込み、ここまで魅力的且つリアルな映画に仕上げたデル・トロ監督の手腕はさすがであり、アカデミー監督賞の受賞に値するだろう。
またこの映画、音楽の魅力も忘れてはならない。アカデミー作曲賞も受賞したが、冒頭からかかるテーマ曲が何ともノスタルジックで切なくて、映画への期待感を煽る。またアカデミー美術賞の受賞も頷けるが、視覚効果的にも青、赤、緑という原色を上手く使っており、それぞれ主人公の感情や状況などを表現する方法として効果を発揮している点も秀逸だ。
この映画は純粋に怪獣映画、ホラー、ファンタジー、SF映画、そしてラブロマンスとしても楽しめる。その上で、アカデミーにも響くテーマも内包されており、とても素晴らしい映画に仕上がっている。また、このような“怪獣映画”がアカデミー賞を受賞したのは、ハリウッド映画史上でも画期的な出来事といえよう。今回の受賞は、新たな扉が開かれた瞬間でもあった。
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