僕は1987年の夏に米国のハイスクールを卒業し、日本に帰国した。日本にいた同級生たちはまだ高校3年生で、受験勉強真っ只中であったが、私は幸運なことに帰国子女枠の受験で9月頃には既に大学が決定していた。そして帰国してからTOEFL アカデミーという塾の帰国子女クラスに入っており、そこで多くの帰国子女友達が出来たものだ。あの宇宙飛行士となった星出彰彦くんもそんな同級生の一人で、当時良くみんなで飲みに行っていたのが懐かしい。
そしてその頃、僕は2人の帰国子女仲間、KさんとEさんに恋をしていた。Eさんはその後僕のイラスト創作の大きな原動力になったミューズだが、Eさんの話はまた別の機会に話すとして、今回はKさんとの思い出に少し触れてみたい。
当時はKさんととても仲が良く、いつも一緒に遊んでいたし、お互いの家に遊びに行ったりしていた。そして今振り返ってみると、Kさんからは音楽の趣味という面でも色々な影響を受けた。今でも思い出に残っているのがKさんからプレゼントして貰ったマンハッタン・トランスファーのCDアルバム、『BRAZIL』である。今でも大切に保管しているし、iPhoneで時々聴いている。
当時はアメリカから帰国したばかりで、アメリカで聴きまくっていたのは80’s POP音楽。まだジャズやフュージョンなどは殆ど聴いたことが無く、この時マンハッタン・トランスファーを初めて知ったのだが、正直最初に聴いた時は、“随分と大人っぽい曲だな~”とKさんの趣味に感心したものだ。
マンハッタン・トランスファーはその美しいコーラスボーカルが何とも心地良いフュージョン・ジャズグループで、後に人気を博したシャカタクなどもかなり雰囲気は近い。彼らのアルバムの中でもこの『BRAZIL』はブラジル音楽を取り入れたことで、とてもエスニック色の強いアルバムだ。そして、Kさんのことが好きで、少しでも彼女のことを理解したいというのもあって、当時はこのCDを頻繁に聴いていたのが何とも懐かしい青春の思い出である。
アルバム『BRAZIL』は1987年にリリースされたが、収録されているのは下記9曲。
- Soul Food to Go
- The Zoo Blues
- So You Say
- Capim
- Metropolis
- Hear The Voices
- Agua
- The Jungle Pioneer
- Notes From The Underground
どの曲もレベルの高い、上質なジャズ・フュージョンで秀逸なアルバムになっているのだが、僕が特に思い出に残っているのが『The Zoo Blues』、『Capim』、『Metropolis』の3曲。このアルバム、そしてこの3曲を聴くと今でもKさんのことを思い出してしまう。結局その後Kさんとは正式に付き合う形にはならず、翌年にはそれぞれ別の大学に進学し、新たな道に進んだ為、その後の彼女の消息は全く掴んでいないが、彼女は今も元気にしているのだろうか?そして、僕に『BRAZIL』をプレゼントしてくれたことをまだ覚えてくれているだろうか・・・。
Kさんとは別れてしまったが、その後も彼女のくれた音楽、マンハッタン・トランスファーは良く聴いていた。ニューヨークに駐在していた2006年頃、本場のBlue Note NYでマンハッタン・トランスファーを観に行ったのも今となっては懐かしい思い出である。