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中森明菜に思いを馳せて~

今年も松田聖子のライブに行ったり、相変わらず彼女のアルバムなどを定期的に聴いているが、やっぱり同じ昭和のアイドルとして強く印象に残っているのが中森明菜である。

80年代中期はまさに松田聖子と人気を二分するアイドルであった中森明菜。松田聖子のライバルとして比較されることも多かったが、そのイメージと実際の性格はまさに対照的な二人であった点も興味深い。

中森明菜は当初クールで、ややつっぱり系のイメージで売られようとしていた。どちらかと言えば、山口百恵が確立した路線だ。結果的にシングルは、バラードとクール路線のロックを交互にリリースすることでファンを飽きさせない工夫が見事に功を奏してシングルはいずれも大ヒット。特にセカンドシングルの『少女A』で大ブレイクを果たした印象が深く、芸能界ではつっぱりでクールな明菜を切望する意見も多かったようだ。

しかし、本人的にはクールでつっぱり系のキャラ設定には少し抵抗があったようで、後にわかることだが、自分の本来の性格としてはバラード曲に象徴されるイメージに近かったようだ。結果的に僕が特に好きだったのはデビュー曲の『スローモーション』、『セカンドラブ』、『北ウィング』と、いずれも彼女のバラード系の名曲ばかりだが、その意味では、イメージ先行ではなく、本来の明菜の内面に惹かれていたのかもしれない。

そんな中森明菜を懐かしむ為、先日下記2つの本を購入した。いずれも中森明菜に就いて語られた本だが、その内容はまさに対照的なもので、多面的に中森明菜を捉えるには格好の2冊であった。

1)『中森明菜の真実』 著者: 渡邊裕二

こちらは昨年出版されたばかりの最新本で、過酷なスケジュールをこなしていたアイドル絶頂期の中森明菜のデビューからその後の舞台裏、そして一喜一憂していたヒットチャートの動きと連動した当時のトレンドや時代の流れをダイナミックに追いかけた内容となっており、まさに芸能界を垣間見れる内容であると同時に、“歌姫”としての中森明菜にスポットを当てた内容となっている。個人的にはヒットチャートが凄く好きであり、また純粋に歌姫としての才能にフォーカスして語られている本書の内容はとても好感が持てた。中森明菜の性格や内面などにも迫る記述も一部あるが、それはあくまでも客観的に捉えたもので、行き過ぎた表現ではなかった点も良かった。更に本書は昨年出版されただけあって、かなり最近までの情報を取り上げている点でも貴重な1冊である。

2)『中森明菜 哀しい性』 著者: 木村恵子

2冊目は、もう19年も前になる1994年に出版された、当時話題となったスキャンダラスな“暴露本”である。この本の存在は知っていたが、読んだことが無かったので、今回思い切って読んでみることにした(僕はあまり“暴露本”の類は好きではないので極力読まないのだが・・)。90年代当時、明菜が“お母さん”と呼んでいたほど信頼を寄せた近い存在であった木村恵子さんが出版した暴露本であり、明菜にとって信頼していた人がこうして反旗を翻して自分を裏切ってしまい、更には訴訟まで起こして暴露本で一儲けを企んでしまうという点で、まったくもっていただけない本である。しかし、内容は実際木村さんしか知りえないプライベートな内容が殆どで、またマッチとの恋愛関係に相当踏み込んでいる点や、明菜のドラッグ疑惑などにも及んでおり、相当にプライベートを赤裸々に綴った内容となっている点で当時出版された際の衝撃は想像に難くない。どちらかと言えば、歌姫の明菜というよりは、“可哀そうな人”として語られており、でも一見同情しているかのように見せながら、実際にはズケズケと土足で踏み込んだ内容となっている点でとても違和感があり、個人的にこの本は全く好きになれなかったし、木村恵子という人にも違和感を持ってしまったが、それでも中森明菜の“一面“を知るという意味では若干の参考にはなるものだった。

2冊の本を読み終わって僕が痛感したことは、やっぱり中森明菜は天才肌ではあったが,イメージとは裏腹に内面はとても繊細で完璧主義者。それがゆえに、“ワガママ”と誤解されやすい性格であり、また自己資産の管理がルーズだった点で、悪意を持った連中に漬け込まれる隙を作ってしまい、結果的に信頼出来る人が周囲にいなくなってしまったという、不幸な環境と悪循環を自ら招いてしまったこと。そして幼い頃からの家庭環境や家族との関係性などにより、周囲の人への依存度が高く(マッチ含め)、結果とても重く悲観的な性格となり、情緒不安定な状況に拍車をかけてしまったという事実は見逃せないポイントだ。ある意味、芸能界に食い物にされてしまった“悲劇の歌姫“とも言えるだろう。才能がある歌姫だっただけに、本当に悔やまれる。その意味では、良くも悪くも芸能界を上手く利用しながら渡り歩いた松田聖子とは対照的であり、その結果、今では全くメディアに姿を見せなくなってしまった明菜と、還暦を過ぎた今でもアイドルとして最前線で精力的な歌手活動をしている聖子という、対照的な現在の状況を作り上げている。

ファンとしては、やっぱりまた歌姫としての明菜完全復活を切望するし、できればスローペースで良いので、例えばNHKで密着するような番組での復活を観たいものである。また今年の紅白なども久々の登場を期待してしまうところだ。しかしそれは置いておいても、純粋に中森明菜には過去に縛られることなく、一人の人間として幸せな生活を送っていて欲しいし、今は本当に信頼できる人に囲まれていることを願うばかりである。そんな幸せそうな様子が少しでも垣間見れたら、ファンにとっても最高に嬉しい“復活“になることだろう。

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