ドイツには、僕の好きなシュタイフ社以外にも、ケーセン(Koesen)という有名な老舗ぬいぐるみメーカーが存在する。やはりこういった手作り&匠の技はドイツと日本に多く技術が残っており、これを継承していることが実に感動的である。
先日、初めてケーセン社のぬいぐるみを入手した。それがこちらの柴犬のぬいぐるみ。ケーセンのぬいぐるみの中でも特に人気が高いモデルだ。定価は18,000円以上してしまう結構高価なぬいぐるみなので、シュタイフ同様コレクターも多いが、今回少し安く入手することが出来たのはラッキーだった。
全長26 x 20cmくらいなので、サイズはそう大きくない。本棚などに飾るにはちょうどいいサイズ感である。それにしてもリアルで、毛並みがとても美しい。まるで本物の柴犬のような毛並みである。
どの角度から見ても絵になるぬいぐるみである。柴犬らしいくるっと丸まったしっぽがとても可愛いのだ。シュタイフの耳タグと同じように、ケーセンのトレードマークとなる木製のタグが付いており、”Handmade in Germany”と書かれたタグは、そのぬいぐるみが本物の証であることをさりげなく主張している。
ケーセン社の前身であるケテ・クルーゼ工房は世界的に知られるドイツ人形のメーカーで、1912年に旧東ドイツ・チューリンゲン地方の町バートケーセンに生まれた。1989年ベルリンの壁崩壊を機に、ぬいぐるみメーカー・ケーセン社となり、伝統的な技術と、良質なものづくりへの気概を引き継いでいる。1992年からは芸術大学で学んだアーティストと組み、理想のぬいぐるみづくりに取りかかった。その哲学は、子どもたちが「気持ちよくほおずりできて、型くずれしにくい良質なもの」「その時々の感情を移入できる自然さをもつ」「やわらかく、動きがあって、自由に動かしてあそべる」ぬいぐるみを子どもたちの手に、というもの。ケーセン社のぬいぐるみは、動物の個性を、できるだけ忠実に布の素材で再現することを目指しているメーカーなのだ。野生の動物をスケッチすることにはじまり、たくさんの作業工程のほとんどは手作業。布地の選定はとくに重要で、動物の特徴によって、綿、アクリル、モヘア、合成皮革などを使い分ける。特種な布地は、ヨーロッパや日本のメーカーにまで染めや織りを特注するほど。中身はポリエステル、目や鼻にはプラスティックを使用。ひとつの動物に、20種類以上の素材を使うこともあるのだ。その徹底したものづくりから、子どもからおとなまで世界中のファンを魅了する“世界でいちばん美しいぬいぐるみ”が生み出されるのである。
実家で昔飼っていた柴犬のマックに思いを馳せながら、今回ケーセンの柴犬を購入したが、精巧に出来たケーセンの柴犬を見ていると、どうしてもマックのことを鮮明に思い出してしまう。マックは本当に小心者で、何とも人間味のある可愛い柴犬であった。今回ケーセンの柴犬が、マックと過ごした多感な青春時代を懐かしく思い出させてくれたことに感謝したい。