昨年12月9日から六本木ヒルズ52階、森アーツセンターギャラリーで開催されていた『キース・へリング展』を、先日ようやく観に訪れた。会期は2月25日までなので結構ギリギリとなったが、何とか間に合って良かった。
当日は晴天にも恵まれ、52階からの東京の眺めも素晴らしかった!
僕はニューヨークで過ごした多感な高校生時代、アートの勉強にのめり込んでいたが、絵を描くのも、絵を見るのも大好きであった。特にマンハッタンのニューヨーク近代美術館(MOMA)は頻繁に通っていたものだ。そしてアートの中でも特に好きだったのが、ポップアートである。風景画などよりも、頭の中にあるアイディアなどを絵として描くことが一番好きだったので、思にペン画やポップアート作品を多く制作していた。
当時はポップアートの騎手としてアンディ・ウォーホル、ロイ・リキテンシュタイン、そしてキース・へリングなどが脚光を浴び、ポップカルチャーを牽引していたが、僕も当時彼らの作品に大いに刺激を受け、自分のアート制作も色濃く影響を受けたのが今振り返っても懐かしい思い出だし、今でも自分の中に息づいている。
そんなカリスマが多くいた時代の中で、キース・へリングも1980年代、まさにニューヨークの様々なストリートコーナーで生ポップアートをたくさん描いていたし、当時からあったPOP STOREというお店にも良く通ったものだが、ポープアートにより、それまでは富裕層がメインターゲットであったアート作品を人々に身近な存在に変化させたという意味では、アートの歴史の中でもかなり革命的で刺激に満ちた時代であったと言える。バブルの80年代は音楽も世界的に大きな進化と広がりを見せた時代であったが、アートも例外ではなかったのだ。
日本の山梨県/小渕沢に、なんと”世界唯一”のキース・へリング美術館である『中村キース・へリング美術館』が存在する。彼の出身地であるペンシルベニアや、主に80年代に活動拠点としていたニューヨークではなく、唯一の専門美術館が日本にあるというのも驚きだが、日本とも深い関わりがあったことを物語っている (2013年にこの『中村キース・へリング美術館』を家族で訪れているが、その時の模様は当時の下記ブログをご参照)。
小淵沢のキース・へリング美術館へ - blue deco design lab (goo.ne.jp)
今回六本木で開催された『キース・へリング展』は、まさにこの中村キース・へリング美術館所蔵の作品を公開されていた。2013年に小渕沢で観ていた作品などもあったようだが、何せ10年以上も前なので、今回改めて多くの作品を観ることが出来て、大いに刺激を受けた。6メートルにも及ぶ大型作品など150点が集結しており、当時のニューヨークの息吹を感じさせてくれるような展示空間が再現されていた。
また核放棄、性的マイノリティのカミングアウトの祝福、児童福祉活動、HIV・エイズ予防の為のセーフ・セックスなど、80年代当時の社会問題などが彼のポップアートに色濃くメッセージとして込められていたが、国や時代を超えて、今こそまた人々に響くメッセージがそこにあると感じた。
またキース・へリングは日本に対して特別な思いを抱いていたが、幾度にわたる来日が縁となり生まれた作品などの数々も展示さていた。
『アートをストリートへ』というサブタイトルが付いていた今回の展示会だが、専用の図録は用意されていなかった。しかし、今回展示されていた作品を殆ど収録したこちらのアートブックを美術館ショップで購入。6年前の2017年に、中村キース・へリング美術館10周年記念として出版されたアートブックだが、中村キース・へリング美術館所蔵作品が紹介されているので、今回の展示も殆どカバーされていたのが嬉しい。
これ以外に、記念としてこちらのTシャツを1枚ゲットした。
今回、久々に多くのキース・へリング作品を目の当たりにし、改めて新鮮な気持ちで、新たな刺激を受けることが出来たし、同時に80年代当時の自分を懐かしく思い出しながら観賞することが出来た。エイズにより、1990年に31歳という短い生涯を閉じてしまったキース・へリング。実にシンプルでポップな人物の形を生涯描き続けた彼独特な絵画タッチは、最高のポップアートとしてこれからも人々の心に残っていくことだろう。