偏平足

里山の石神・石仏探訪

里山の石神端書147 遍照金剛(千葉県富津市)

2022年12月24日 | 里山石神端書

千葉県富津市竹岡・白狐川流域観音堂の遍照金剛

 集落奥の山際に観音堂が建っています。お堂が山際にある光景はこの国の原風景です。

 遍照金剛は空海の灌頂名。空海が唐に渡って真言僧・恵果から受けた結縁灌頂、目隠しをして曼荼羅の上に花を投げ、落ちた場所の仏と縁を結ぶこの儀礼で、空海の花は胎蔵・金剛両曼荼羅とも大日如来の上に落ちました。これにより恵果は空海に遍照金剛(へんじょうこんごう)の灌頂号を授けました。遍照金剛は大日如来であり、空海をさす号にもなりました。観音堂の空海には「南無遍照金剛」銘。空海にすがります、の意味です。


 空海が座る椅子の下に水瓶と靴があります。空海の絵図には必ずこの二つが描かれています。特に水瓶は灌頂に使う閼伽という水が入っているもので、空海にとっては象徴的なものなのでしょう。江戸時代の『仏像図彙』には92人もの仏教の祖師が描かれていて、そのなかで水瓶も描かれているのは真言系の龍猛・龍智・金剛智・不空・善無畏・一行の真言八祖の歴代6名、そして弘法大師空海だけです。


 空海の脇には「奉山王造立」銘がある「貞享三丙寅天(1686)」造立の三猿塔もある。『房総の石仏百選』(注)に「君津市・富津市を中心に丸彫りの三猿像が分布している。(略)寛文年間(1661~72)にこの周辺各村で三猿を山王権現として祀ることが盛行したと思われる」とあります。観音堂は丸彫りの三猿ではありませんが、山王権現を背景とした三猿塔にみえます。
(注)『房総の石仏百選』1999年、房総石造文化財研究会
(地図は国土地理院ホームページより)


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 里山の石神端書146 窟屋(千... | トップ | 屋上菜園2022-12闘病日記7 »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。