◇ フランスの鉄道教徒アルテュール・オネゲルが死去(1955年)。自らの信仰告白である『パシフィック231』(1923年)が大ヒットしたものの、その30年後に『私は鉄オタではない、作曲家である』と殆ど自己否定とも取れる著作を出した。 ◇ 伊勢湾台風のドサクサで、近鉄王国が三重から愛知へ本格的に進出(1959年)。三重県が近畿に乗っ取られるという危機感が、俄かに東海地方で高まった。 ◇ 日本一有名なニート軽音部員・平沢唯の誕生日(1991年)。
◎ ◎ 創刊120年以上の“ナショジオ”が綴る【 そうだったのか! 】 =第 26回= ◎ ◎
1956- « 隕石から地球を守る男に彼はなぜ選ばれたのか (2/3) »
= Webナショジオ そうだったのか! 『ナショナル ジオグラフィック』 =
……National Geographic Journal Japan 〉/ 2013年2月20日 / (Web編集部) ……
当初、彼は地球を7周する予定でした。ところが、1周回ったところでオートパイロット装置にちょっとした不具合があり、マニュアル操縦に切り替えます。それだけならまだしも、ちょうど2周目にさしかかるときのこと。予備の酸素が12パーセント減っているうえに、フロリダの管制センターのコンソールにある警告灯がともり、着水バッグが開いていることを告げました。まだそのタイミングではないにもかかわらず。
着水バッグは海に着く寸前に開くようになっています。そのとき、大気圏の再突入に必要な耐熱シールドはもういらないので外れる仕組みでした。つまり、もし宇宙を飛んでいる間に着水バッグが開いているならば、宇宙船を守ってくれる耐熱シールドは再突入の前に外れてしまいます。
これではグレンを乗せたまま宇宙船が数秒で燃え尽きてしまう。
管制センターは急にあわただしくなりました。警告灯の誤作動もありえます。グレンに不安材料を与えることを心配した管制センターは、警告灯がついたことをグレンに知らせず、さまざまな可能性をチェックします。
打ち上げから2時間26分36秒後。
管制:「着水バッグのスイッチはオフになっているか?」 グレン:「間違いない。オフの位置にある」
管制:「爆発とかそんな感じの音が聞こえなかったか?」 グレン:「ない」
それは管制センターが期待した答えでした。
だとすれば、警告灯の不具合か、エアバッグの不具合か、2つの可能性が考えられる。けれど、どちらにせよ状況が変わらなければそのまま再突入するしかありません。その間もグレンは管制の複雑な指示をこなしつつマニュアルで操縦を続けています。
結局、管制センターはグレンに3周で帰還するように決め、念のため、再突入前に切り離しておくべき補助ロケットを残して逆噴射するように指示しました。
いよいよそのときが来ます。 打ち上げから4時間33分8秒後。 管制:「……5、4、3、2、1、点火!」 グレン:「ラジャー。逆噴射開始」
大気圏再突入の間もオートパイロットはダメで、グレンは難しい操縦を強いられます。正確かつ安定して着水できるよう、宇宙船をゆっくりと回転させなければなりません。
逆噴射開始から約10分後、高温のプラズマに包まれるせいで、通信が途絶える時間帯があります。管制センターにできることはもうありません。耐熱シールドが外れていないことを祈るばかりです。
そのとき、グレンは窓の外に炎をあげながら飛び去ってゆくものを見つけました。それは本来、不要なはずの補助ロケットでした。そもそも再突入に耐えられるよう設計されていないのです。高度を下げるにしたがい、さらに宇宙船の温度は上昇。もはや彼は火の玉の中心にいました。窓の外はすべてがオレンジ色に輝いていました。
4時間47分22秒。
管制センターが声をかけ続けること約10分。宇宙船の炎は徐々に消えはじめ、「どうしてる?(How are you doing?)」というかすかな声がグレンの耳に届きます。 グレン:「ああ、万事好調だよ(Oh, pretty good.)」 管制センターは一気に沸きあがりました。
4時間55分24秒後、さまざまな困難を見事に克服して、グレンはアメリカ人初の宇宙飛行に成功。祖国を代表してソ連に反撃ののろしをあげ、世界でいちばん強い国アメリカというイメージを取り戻します。彼にはさまざまな賞や名誉学位が贈られ、パレードでは行く先々で人の山ができ、感動のあまり涙した人も少なくなかったそうです。
こうしてジョン・グレンは国民的英雄として人々の記憶に深く刻み込まれました。
オートパイロットの不調をマニュアル操縦でカバーするところなんかとりわけシビレますよね。たしか宇宙戦艦ヤマトにもそんなシーンがあったような……。波動砲を発射するシーンだったかな?
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