数分経って、結果が出た――恒温性生物の体温程度の高温の反応無し、生物の脳幹が発するものと思われる電磁場の反応無し、気温、湿度の検索による動態反応無し、質量の移動で発生する空間歪曲の変化による動態反応無し。
結論――ここにいる二名を除いて、現在当該建物内に生きている生物はいない。
この建物の内部には《・・・・・・・・・》。
口元をゆがめて、アルカードは小型無線機の送信ボタンを押し込んだ。
「 . . . 本文を読む
だが――
遅いわ《・・・》、阿呆《・・》!
シィッ――歯の間から息を吐き出しながら、アルカードはタイラントが振り翳した腕を振り下ろすよりも早く掌打を突き込んだ――キメラの胸元に突き刺さった塵灰滅の剣《Asher Dust》の柄頭に、渾身の力を込めて掌を叩きつける。筋肉に阻まれて止まっていた塵灰滅の剣《Asher Dust》の刃が撃ち込んだ掌によってまっすぐに押し込まれ、まるで金槌で打たれた釘 . . . 本文を読む
床の上に膝を突いた体勢から、タイラントがばたんと横倒しに倒れ込む――ことここにいたれば、もはやキメラのいかなる特殊能力も警戒する必要は無い。警戒の対象がタイラント一体である以上、どの様な攻撃手段であろうと攻撃態勢を整える前に潰すことが出来る。
よもや自分よりはるかに小さな体躯の相手に力負けするとは思っていなかったのだろう、タイラントが痛みと怒りのこもったうなり声をあげる。起き上がろうとしたタイ . . . 本文を読む
一番近くにいるキメラに照準を定め、アルカードはトリガーを引いた。
耳を聾する轟音とともに、無防備な胴体に弾頭が命中したキメラが弾き飛ばされる――着弾の衝撃で筋肉繊維が細かく裂けて血が霧の様に舞い、口蓋から大量の血を吐き散らしながら、キメラは横殴りに吹き飛ばされて倒れ込んだ。
それでこちらに気づいたのか、フレイムスロアーが一体こちらに向き直る。威嚇の咆哮をあげようとして大きく開いた口の中にスラ . . . 本文を読む
甲殻の無い眉間に着弾したにもかかわらず、タイラントはわずかに頭を揺らした程度で、さしてダメージを受けている様には見えない。分厚い脂肪と強固な骨格、強靭な筋肉が銃弾を絡め取り、浅いところで破裂させてしまったのだろう。
それでも普通の弾薬で撃たれたよりは、ダメージになっているはずだが――
「硬いな」
「まあそう言うなよ――ここ何十年か、手応えの無え雑魚どもばかりでフヤけてたところなんだ。人間丸くな . . . 本文を読む
身長百五十センチ強、体重四十キロの、中学生並みの体格を持つ赤ん坊だという――学者の話だと、最終的には身長四~五メートル、体重百三十キロ前後にまで成長すると予測していたはずだ。
なるほど、三倍体の人間の遺伝子をベースにキメラを作れば、こういうふうになるのだろう。
タイラントの脇腹は内部に入り込んだ射出式擲弾が爆発したことでごっそりと肉が吹き飛ばされ、肋骨が剥き出しになっている――だが代謝速度を . . . 本文を読む
キメラは周囲を見回してこちらの姿を認めると、口蓋の奥に咽頭顎を覗かせてキィと一声鳴いた。攻撃をしようとしたのか右肩のレーザー発振器を展開し――次の瞬間アルカードが振るった三爪刀《トライエッジ》の一撃で頭蓋を半分削り取られて絶命し、分解酵素の働きで消滅してゆく。
そのときには、ほかの娘たちも臨月を迎えていた――実際に受胎に至ったのがいつごろなのかは知る由も無いが、ほんの数時間の間に植えつけられた . . . 本文を読む
だが、地の利はこちらにある。塵灰滅の剣《Asher Dust》を逆手に持ち替え――魔力を帯びた魔具が擬装モードを解除し、湾曲した刃に雷華を纏う。
あれを仕留めるには魔力《チャージ》が足りないが――まあ、あの生体炸裂弾《ミサイル》を片づけるには事足りるだろう。
胸中でつぶやいて、アルカードは塵灰滅の剣《Asher Dust》を振るった。
あえて収束をせずに解き放った世界斬《World End . . . 本文を読む
禍々しい形相の頭部は左側頭部にキチン質の装甲で覆われた巨大な頭角が、右側の側頭部には金属質の棘の様な鋭い頭角が数本まとまって生えている。ちょうど人間で言えば額の部分から後頭部、背中にかけて、やはりアイゴのものに似た棘のある鰭が形成されていた。
抱きかかえた娘の腰を下から突き上げるたびに、彼女の胎内に挿入された生殖器が見え隠れしている――やはりか。
胸中でつぶやいて、アルカードは嫌悪感に顔を顰 . . . 本文を読む
「なるほど――あいにくだが、死体を提供するつもりは無いね。代わりにてめえの死体を用立ててやろうか――ついでに量産したゴミの山も一緒に埋めてやるよ、お供え物はカ●ビーのポテトチップの空き袋と一●搾りの空き缶でいいか?」 アルカードの返事に、ステイルなんたらは口元をゆがめて答えを返してきた。
「ふむ、墓まで用意してくれるとは心優しいことだ」
「ああ、粗大ゴミが山ほど一緒に埋まってくれるぜ。そのうち埋め . . . 本文を読む
*
いくつか廊下の曲がり角を曲がって、そのままふたつかみっつ進んだ和室の前で、ふたりは足を止めた。
並びの部屋はいずれも和室で、鶴の間、亀の間、梅の間と、虎だの鰐だのに比べれば幾分まともなプレートがついている――その下に数字で部屋の号数が刻印されているから、正しくは●●●号室という呼び名が正しくて●の間というのは通称であるらしい。
襖の奥から魔力の気配は感じられないが――
鼻 . . . 本文を読む