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白星学園の食堂は、かなり大規模な硝子張りの建物だった――移動の手間を少なくするためだろう、校舎と寮の建造物に附随する形で建てられており、小中高等部それぞれひとつずつ食堂があることになる。
それがいいことなのか悪いことなのか、アルカードには判断がつかなかった――食堂は校舎と寮両方に渡り廊下でつながっているから、雨に濡れる事無く移動することが出来る。
これが各校舎からひとつの食 . . . 本文を読む
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頭上から降り注ぐ如雨露で撒いた様な大粒の雨滴が暴風に乗って横殴りに吹きつけ、ばたばたと音を立てて砕けてゆく――まだ風雨に晒されてから数分と経ってはいないというのに、先ほどまでの戦闘で獣脂を擦り込んで防水性を持たせた外套を失ったこの身はすでに濡れ鼠。金属で作られた重装甲冑の装甲板の表面を雨滴が伝い落ち、その下に着込んだ鎧下もぐっしょりと水が染みている。
周囲に発生した濃霧の様に . . . 本文を読む
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壁際にいくつかかけられた照明用のランプの周りで、その光に惹かれた蛾が飛び回っている――それをなんとはなしに眺めながら、御者、もとい牧場主は小さく息を吐いた。
姪は牧場主を病院で降ろして診察のための手続きをしてから、あの金髪の若者とともに荷物の納品に回っている――荷馬車は空荷であれば牽くのにたいした力はいらないのだが、今は荷物が満載になっているのでそうもいかない。
あの金髪の . . . 本文を読む
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白星学園高等部の教師寮は校舎、学生寮とそれぞれ渡り廊下でつながっている――教師寮と学生寮の間も渡り廊下で行き来することが出来るあたり、きっと課外に生徒が教師のところに質問しに行くことが多いのだろう。あるいは、教師が生徒の生活に干渉することが多いのかもしれない。
そんなことを考えながら、アルカードは鳥柴薫に続いて学生寮に入るための渡り廊下に入った。
先ほどフィットを止めておい . . . 本文を読む
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「――事情説明はこんなところかな、なにか質問は?」 アンソニー・ベルルスコーニの言葉に、ライル・エルウッドはかぶりを振った。
「無いな。まさか『アルマゲスト』の連中がこんなところに隠れひそんでいようとは思わなかったが」
まあな、と肩をすくめて、ベルルスコーニが鬱蒼とした森を見回す。野生の狼でも尻込みしそうなほどにあからさまな邪気の漂う獣道を平然と進みながら、彼は溜め息をついた。 . . . 本文を読む
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「……ん……」
ガラガラという振動に、ややあって目を醒ます――牛飼いの少女が身を起こしたのは、見慣れた馬車の幌の中だった。すでに外は雨が降っているらしく、幌を雨滴が叩くばたばたという音が聞こえている。
「……あれ?」
どうしてこんなところで寝ているのだろう。確かリスボンの港町へ、船乗りや酒場、宿屋などに納品する乳製品の配達に出かけている最中だったはずだ。そのときに――
「―― . . . 本文を読む
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「でもまあ、結果的に助かることはあるかもしれませんね」
そう続けると、鳥柴鏡花はひそめていた眉を少しだけ開いた。
「それで、貴方はこれからどうなさるおつもりですか?」
「当面は調査ですね――いくつか用意していただきたいものがありまして」
鳥柴がその言葉に席を立ち、紫檀のデスクの上に置いてあったメモ帳とボールペンを手に戻ってきた。uniの加圧ボールペン。
「どうぞ」
「ここ最近 . . . 本文を読む
Nosferatu Bloodには無 敵 の 楯《インヴィンシブル・シールド》、指弾《ブレット》、斬 刃《スラッシャー》等いくつかの中二秒満開の魔術が登場してますね。
実はこれら、ほかの小説(現在公開してません)からの使い回し輸入品です。
というわけで、これらについてちょっと解説など。
これらの魔術は精霊魔術と呼ばれるもので、精霊、つまり地脈の『点』から地上に噴出した無属性の魔力を利用す . . . 本文を読む