松本市の文化活動の中心として2004年に誕生したまつもと市民芸術館。
画像参照:http://www.toyo-ito.co.jp/WWW/Project_Descript/2000-/2000-p_11/main%20photo-800.jpg
建築家・伊東豊雄氏が設計を手がけ、従来の劇場建築の概念を覆す独創的なデザインが随所に施されています。
主に下記の三つの特徴が、この建築を唯一無二のものにしています。
劇場の常識を覆す「逆転した平面計画」
通常、劇場建築ではエントランスが1階にあり、大ホールが上階に配置されるのが一般的です。しかし、まつもと市民芸術館では、この配置が逆転しています。
建物のエントランスをくぐると、まず目に飛び込んでくるのは吹き抜けのホワイエ。
画像参照:https://architecture-museum.after-post-office.com/collection/matsumoto-performing-arts-centre.html
そこから階段を上ると、2階部分に馬蹄形の大ホールが現れるのです。
このユニークな配置により、劇場に足を踏み入れると徐々に舞台の世界に引き込まれていくような感覚を生み出しています。
まさに、「演劇が始まる前から劇場体験が始まっている」と言える空間設計です。
幻想的な外壁に沿うシークエンス
まつもと市民芸術館の外壁は、曲線的で軽やかな印象を与えるスチールパネルで覆われています。
このパネルが、周囲の風景や時間帯によって表情を変えるため、建物自体がまるで生き物のように変化していくのが特徴です。
また、エントランスからホールへと続く動線にも伊東豊雄氏のこだわりが光ります。
建物の外壁に沿って歩くにつれ、光の入り方が変化し、内部空間の印象が徐々に変わっていく。
この「シークエンス(連続する体験)」が、劇場という非日常の空間へと誘う重要な役割を果たしています。
エレガントな馬蹄形の大ホール
劇場の心臓部である大ホール(主ホール)は、古典的なオペラハウスを彷彿とさせる馬蹄形を採用。
画像参照:http://www.toyo-ito.co.jp/WWW/Project_Descript/2000-/2000-p_11/2000-p_11_j.html
舞台を囲むように観客席が配置されているため、どの座席からも舞台との一体感を感じやすい設計になっています。
さらに、音響設計にも徹底的にこだわり、舞台から発せられる音がホール全体に心地よく響くよう調整されています。
観客と演者の距離が近いため、舞台の息遣いまで伝わる没入感が特徴です。
都市と自然が融合する劇場
劇場というと、閉鎖的な空間になりがちですが、まつもと市民芸術館は街と開かれた関係を築くことを意識しています。
ガラス張りのファサードからは松本の風景が望め、周囲の街並みとのつながりを感じられる設計です。
また、屋上には緑化が施されたテラスがあり、建築と自然が融合する空間を生み出しています。
画像参照:http://www.toyo-ito.co.jp/WWW/Project_Descript/2000-/2000-p_11/2000-p_11_j.html
都市と自然、日常と非日常が交差するこの場所は、まさに松本の文化と芸術の象徴と言えるでしょう。
最後に
伊東豊雄氏の手によるまつもと市民芸術館は、単なる劇場ではなく、「空間そのものがドラマを生み出す舞台」として設計されています。
この劇場は、松本の文化的なシンボルとして、訪れる人々に新たな体験と感動を与え続けているのです。松本を訪れる際には、ぜひこの空間を体感してみてください。
施設情報
名称:まつもと市民芸術館
住所:〒390-0815 長野県松本市深志3丁目10-1
設計:伊東豊雄
開館:2004年
公式サイト:https://www.mpac.jp