岐阜県高山市の緑豊かな風景に佇む「瞑想の森 市営斎場」は、建築家・伊東豊雄氏による独特な空間デザインが特徴の施設です。
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生命の終わりに寄り添い、静寂の中で祈りと瞑想のひとときを提供するこの建物は、その美しさと機能性から高く評価されています。
今回は、「瞑想の森 市営斎場」の建築的魅力と、そこに込められた哲学について詳しくご紹介します。
◎瞑想の森 市営斎場とは
「瞑想の森 市営斎場」は、2006年に岐阜県高山市に完成した市営の火葬場施設です。建築設計は伊東豊雄氏。
この施設は、単なる火葬場としての機能にとどまらず、自然と一体化した空間で遺族や訪問者が心穏やかに故人を見送ることができる場所として設計されています。
◎建築の特徴
- 自然との調和
瞑想の森は、高山市の山々や豊かな緑に囲まれた立地にあります。この環境に溶け込むよう、建物は低層で水平に広がるデザインとなっています。
建物の外観には白い曲線が多用されており、自然界の流れを連想させる形状が特徴です。
この設計は、人工物である建築が自然に対して威圧感を与えないよう配慮されています。
また、敷地内には水盤や植栽が配置され、建物と風景が一体となるよう設計されています。特に、水盤に映る建物の姿は、静寂と神聖さを象徴する美しい光景を生み出しています。
- 柔らかな曲線の空間デザイン
内部空間は、直線よりも曲線が多用されています。天井や壁が波のようにうねるデザインは、訪れる人々に柔らかさと包み込まれるような安心感を与えます。
特に、火葬炉のある空間では、天井が高く取られ、自然光が柔らかく差し込むよう工夫されています。
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この光が宗教的な祈りの空間を彷彿とさせ、心を穏やかに保つ効果をもたらしています。
- 光と影の演出
伊東豊雄氏の建築には、光の使い方が特に注目されます。「瞑想の森」でも自然光が重要な役割を果たしています。
屋根に設けられたスリットや壁の開口部から差し込む光は、時間帯や天候によって異なる表情を見せ、空間に変化を与えています。
この光の演出は、生命の移ろいや儚さを象徴するかのようで、訪れる人々に深い感動を与えます。
伊東豊雄が込めた哲学
伊東豊雄氏は、「瞑想の森」において、建築が人間の感情や精神とどう向き合うべきかを探求しました。
- 死と向き合う空間
火葬場は多くの場合、悲しみや別れの場として機能します。しかし、伊東氏はこの場所を「祈りと瞑想の場」として捉えました。
瞑想の森では、建築が遺族の悲しみを癒し、故人への感謝や祈りを深める空間となることを目指しています。
- 自然との共生
伊東氏は建築を自然の一部として設計することを大切にしてきました。
この施設でも、山々や水盤、植栽が一体化した設計を通じて、建物が風景の一部となるよう意識されています。
このようなデザインは、死という重いテーマに対し、自然の循環や生命の連続性を感じさせるものとなっています。
最後に
「瞑想の森 市営斎場」は、単なる公共施設ではなく、建築が人々の心にどのように寄り添えるかを考え抜かれた空間です。
伊東豊雄氏の建築哲学と、高山市の美しい自然が融合したこの場所は、訪れるだけで心を静める特別な体験を提供してくれます。
次に高山を訪れる際は、この静謐な空間に足を運び、自然と建築が織りなす「祈りと瞑想」の世界に浸ってみてはいかがでしょうか。
アクセスと基本情報
所在地:〒506-0033 岐阜県高山市越後町1246-2
アクセス:JR高山駅から車で約10分
高山市街地からバス利用も可能
営業時間:午前8時30分~午後5時15分
見学は事前予約が必要です。火葬場として利用中の時間帯は見学不可。
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