先週から移動中の電車でこれを読んでいる。「国民経済学とは何か」からなかなか抜け出せない。
戦前に刊行された改造社版の『資本論』全5巻。この第一巻にしおりが挟まっていた。もう90年以上経っているのだけど、割ときれいに保たれている。マルクスの肖像画の下に、このしおりの使い方が書かれている。
「資本論をお讀みになる時は目を疲らさないやうにこの栞の裏を行にあててお讀み下さい」
どこまで読んだか目印として使うのでなく、目を疲れさせないため当てて使うのか…。
第3章「貨幣または商品流通」の最初のほうにこんな記述がある。
「価値尺度としての貨幣は、商品の内在的な価値尺度である労働時間の必然的な現象形態である」(p.123)
『資本論』には理解の難しい文章が多いが、出てくる用語が抽象的でわかりにくい、というのも原因の一つ。上の例だと「現象形態」。抽象的だな。
これを英訳で見てみると「form of appearance」。 なあんだ、現れた形ということか。元のドイツ語は1語で「Erscheinungsform」で同じ意味。日本語で分かりにくい用語に当たると英訳を参照している。
『資本論』の精読はまあ順調。
「いまもし商品体の使用価値を無視するとすれば、商品体に残る属性は、ただ一つ、労働生産物という属性だけである」(p.49)
本書は『資本論』の入門書としてもよく紹介される。『資本論』とくに第一巻のエキスがわかりやすく書かれているんだな。何よりいいのがそのコンパクトさ。付録部分を入れても文庫で100ページほど。
資本論に関する本のほとんどは研究者が書いたもので、たとえ入門書であってもかなりレベルが高く、最後まで読むには大変な根気がいるから、まず本書から読むのがいいね。