転 覧 記

ほぼ展覧会レポ。たまに読書記録。

「伊藤若冲アナザーワールド」@静岡県美&千葉市美

2010年06月29日 21時37分04秒 | 展覧会

 もう終わってしまいましたが、
 静岡と千葉の若冲展に行ってきました。

 どちらも見れたのは後期だけだったのですが、
 図録に掲載の170点中、9割がたの作品を見れたので大満足です。





いずれの会場も思ったより空いていて意外でした。

「日曜美術館」や「美の巨人たち」で紹介された展覧会が
異常に混雑するのは周知の事実ですが、
逆に紹介されないとこの規模の展覧会でも人が来ないというのは
ちょっと寂しい気もします。



以下、作品の感想です。


◆烏賊図
水の中でふよふよと漂う足の描写がすごい。
実際に泳いでいる様子を見たんだろうか。

◆花鳥蔬菜図押絵貼図屏風
背中を見せつつ、うつむき加減でこちらをちらりと盗み見るオシドリのしぐさがかわいい。

今回、若冲の押絵貼図屏風って、左よりと右よりの構図の絵が交互に貼られているものが多いのにきがついた。
立てると折り目が「山」の部分に重心が寄り、「谷」の部分が余白となるようになっている。

若冲がどういう意図でそんな風にに描いたかは判らないけれど、
ぼんやり眺めていたら、まるで絵と絵の間から生命があふれ出てくるような錯覚に陥りました。面白い。

◆寒山拾得図
ニッコリと満面の笑みの寒山も可愛いけど、愛想悪そうに背を向けている拾得もかわいい。
寒山が「ごめんね、彼、人見知りなんだ」とフォローしているようにも見える。

◆百合図
背の高い百合の花が、寄り添うように咲く背の低い百合の上にしなだれかかっている。
まるで、上手の花が「どうだ、お前はここまで伸びてこられるか」と挑発し
下手の花が「何をこしゃくな」と睨み返しているかのよう。
そばで見ている小鳥は「しょうもない張り合いしとんな」と呆れ顔。

◆菜蟲譜
去年、佐野市立吉沢記念美術館まで見に行ったけど、そのときは後半しか見れず。
今回は前半が見れるといいなと思っていたのですが、残念ながらやはり後半でした・・・

まあでも、佐野市美の学芸員さんが「いじけ虫」と呼んでいたアブに再開できたのは良かった。
若冲は虫を描くとき、同じ粉本のデザインを何度も流用しているそうで、
この「いじけ虫」も会場のあちこちで見かけた。ほかの虫たちも。なんとなく嬉しくなった。

ただやっぱり、蟲達の表情が一番いいのはこの菜蟲譜だと思う。
足元の小さなジャングルの中を旅するようなこの作品は本当に楽しい。

◆象と鯨図屏風
写真では何度も観ていたのですが、やはり実物を見ると印象が違います。
「屏風」はやはり折り立てられた状態で観ないと駄目だと改めて思いました。

まず右隻の象ですが、ちょうど2扇から3扇にかけて「山」になる位置に身体が描かれてます。
これによって象の身体のボリュームが強調されて見えます。
また鼻は第4扇に描かれ、扇面の「谷」から「山」へ向けて
手前へぐうんと伸びてくるような印象を与えています。

また左隻の鯨の身体は、第4扇から第6扇にかけて描かれているのですが
斜め右前方から観ると、まるで長い胴体をくねらせながら岸へ迫りくるように感じられます。

これは実物見ないとわかりません。すごい。

また、この絵、個人的には何となく不安な感じを覚えるところがあります。
よく見ると背景の山と海とは曖昧につながっており、境界がよくわかりません。
正体不明の「うねり」が空間を埋めるように果てしなく続いています。
その茫漠と広がる世界に対して、あてどない不安感を覚えるのかもしれません。

しかしそれゆえに、その世界の中にそびえる
陸の王者と海の王者の姿をより頼もしく感じることができます。
この辺の表現もすごい。見に行ってよかった。


ショップで「玄圃瑤華」のポストカードをたくさん買って帰りました。
見覚えある絵がいくつかありデジャブ?とか思ったのですが、
家に帰って調べてみたら、酒井抱一がそっくりの図案の絵を描いていてビックリしました。

同じ粉本を写したのか、はたまた若冲の絵を真似たのか。


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