本棚に長く鎮座ましましている文庫本を開いています。長い間、利根川と江戸川に囲まれた地域に暮らしていますが、川や船については興味がほとんどありませんでした。今春、野田の人車関係を調べたとき、船が醤油の運搬の主役だったことを知り水運や河川そのものに関心を寄せるようになりました。
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この『利根川図(圖)志』は若い頃に買ったものです。江戸時代のこの地域を知る貴重な文献で、知っている地名がたくさん登場します。この本が世に出たことがどれだけ後世のためになっているかは、疑いを入れない思います。しかしながら、漢文調ですし、当時とは地理も社会の様子も変わっていて今ではぴんと来ないところも多いようです。従って、折に触れて、興味のある部分を読んでいます。
布施の弁天様には子供の頃から親に連れられて行った記憶がありますが、『利根川図志』(第2巻)には布施辯財天社として見開きの挿絵入りで紹介されています。
その絵は私が子供の頃見た風景とさほど変わってはいません。60年ほど前までは江戸時代とあまり変化がなかったわけです。しかし、その後の変わりようはあまりにも激しく、僅かな間に松並木は消え田んぼは駐車場になってしまいました。
そもそも利根川自体が大きく変わっています。流れも変わっているし、高い堤防ができて川の存在感がありません。高瀬舟も浮いていません。河岸(かし)も消えました。地名も変わっています。
それだからこそ、この本の価値が高くなったと言えるかもしれませんが、この本をガイドに地域を訪れても失望だけが待っているようにも思えます。
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この本を定年してから再び開いているのは、やはり、歴史に興味を抱くようになるのには年齢が必要だからなのでしょう。
自分のいる地べたや空間がどう経過して現在に至ったのかということに興味が向くのは中年を過ぎてからなのだと思います。有り体に言えば歳をとったのです。
持主同様、本の方もすっかり古書になって壊れそうになってきましたので、新しいのに買い直そうと思って検索してみたら、なんと品切れ。岩波よ、お前もか(笑)。ライバル本?の『北越雪譜』はあるのになあ。∎
赤松宗旦著、柳田国男校訂『利根川図志』(岩波文庫)1971年10月刊(第4刷).
利根町(布川)に行かれたのですね。私も柳田國男記念公苑とともに訪ねたいと考えていますが、今のところストリートビューで我慢しています(笑)。
本格的な暑さの前にいきたいと思っていましたがどうなることやら。
貴ブログ、いつも興味深く拝見させていただいております。
これから手賀沼近辺も暑くなることでしょうから、どうぞお気を付けて。