前回の「流山ガード」つながりではありませんが、ガードに最も近い小金町を書いた本をご紹介いたします。
近世村落史がご専門で松戸市立博物館館長でもある渡辺尚志氏の最新の著作で、江戸時代の小金町(現千葉県松戸市)にスポットを当てて書かれています。
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小金町(江戸時代から町)は水戸街道の宿場町で古くから繁栄した土地でした。
人口のほとんどが百姓という身分であった江戸時代。百姓と言えば、黙々と田畑を耕していたように思われがちですが、そうではないという見方に立つのが渡辺氏です。江戸時代だからと言ってボーっと生きていたわけなどなく、主張すべき時は主張し、団結すべき時は団結したのが百姓の実際の姿であったようです。
水戸街道(旧水戸街道、水戸道中)があって繁栄した小金町ではありますが伝馬役の勤め、周辺の村々にとっては、助郷役の負担がありました。街道の交通や運輸のために賦役として人と馬を出さねばならず、時としてトラブルを生じました。
それはいくつもの訴状として残っていて、当時の人々の関係や思惑が伝わってきます。江戸時代の生産力には限りがありますから、村としては極力、賦役は減らしたいもの。分担したり、丸投げしたり、時には離脱を図ったりします。一口に街道と言っても、特権階級の武士の移動、交通のために、実は、周辺の人々へ大変な負荷をかけたものであったことが分かります。
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文章は語るようで平易で分かりやすいものです。最初に、江戸時代の常識(度量衡、宿駅制度など)が分かりやすく説明されていて親切です。92頁というコンパクトさながら、小金町という場所から江戸時代の町や村の生活が伝わってきて、この地方の歴史を知る上では大変よい本に思います。なにも大河ドラマの主人公や土地ばかりが歴史ではありません。このようなどこにでもあったような日々の暮らしや駆け引きも大河ドラマであると思います。続刊が待たれます。∎
渡辺尚志著『小金町と周辺の村々』(松戸の江戸時代を知る①)たけしま出版、2023年2月刊.