「最近ノクチル 樋口円香 コスプレ衣装
プロデューサーが元気無い気がするんだけど、円香先輩、心当たりとかない〜?」
いつもと変わらぬはずの能天気な幼馴染みのその口振りに、だけど私は心臓を素手でぎゅっと握りしめられたような感覚に陥った。
「さあ、知らない。どうせ仕事かプライベートでミスでもやらかしたんでしょ」
いつものように素っ気無い返事を装いながらも、しかし声がやや上擦ってしまったことは、幸運にもどうやら彼女に見咎められはしなかったようだ。「そっか〜」としょぼくれたように、彼女は机の上に片腕を伸ばして、ダラリと項垂れた。
「ていうか邪魔。そこ、私の席。昼休み終わるし、いい加減戻って」
「え〜、掃除が始まるまで、まだあと十五分もあるよー」
不平と不満を溢す彼女の膨れた横っ面を眺めつつ、私はこっそり、いつの間にかじっとりと浮かんでいた額の脂汗を手の甲で拭った。
気持ち悪くなったのは果たして、気の持ちようが悪かっただけだろうか。
いいや、そうではない。
何故なら私には、彼女の言うところの『心当たり』があるのだから。