地理人レポート

展示や新グッズ作りに向けたコラボレポートと、空想地図&地図グッズ紹介をお届けします。

空想地図は誰でも作れる!〈作例と解説その1〉

2020年09月16日 | グッズトーク
こんばんは、おはようございます。地理人です。

みなさまお元気でしょうか。私は、元気…いやー…
健康っちゃ健康なのですが、最近は活力に欠けています。加齢でしょうか。インドカレーは好きです。いや、私より歳を重ねていて活力ある人たくさんいるんだよな…

 




 
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さて、コロナが深刻化してからというもの、最近やる機会がないのが空想地図ワークショップ。今年1月に千葉市ななめな学校で実施して以来やっておりません。先週品川アーティスト展で実施予定でしたがコロナ影響で中止に…。世のあらゆるオンライン化の波にも乗れないプログラムです。

これとは別のワークショッププログラムを今月オンラインで実施する機会がありました。リアルな場の力、価値を感じさせられます。季節野菜とミックスベジタブルカニとカニカマくらいの違いはあります(思ったよりうまいこと言えなかった…活力が…)以前であれば料理人の逸品と冷凍食品くらい違う…と言えば良かったんでしょうけど、最近冷凍食品のレベルが上昇中なんですよね…。



しかしこの空想地図ワークショップでやっている空想地図づくり、完全に自宅でできるものなのです。実はとてもリモート向きなものでもあるのです。なにしろ一人でやるので、そもそもオンラインでやる必要もない…一切グループワーク的なものもなく、ひとりオフラインプログラムです。

では紙があったらどうにかなるの…?
なるんですが、ゼロから地図を描けって…空想地図描画経験がないと難しいことです。スパイスさえあればカレーが作れる料理人or趣味者はひとにぎり。多くの場合は、スパイスセットやルーを使います。

そうか、空想地図のスパイスセットやルーがあればいいのか…
ということで数年前に生み出されたのが空想地図キットです。


2015年に試作し、バージョンアップしたのがこちらの2019年版。マルシェルでもお買い求めいただけますが、気になるのはワークショップでは何をしているの?ということ。

このプログラムの肝は、最後に私が皆さんの作った地図に描かれた街の解説をするというコーナー。ダメ出しではありません。そりゃ現実主義者の私から見て「現実社会では起こり得ない地図」なんてたくさんできてきます。しかしこれらはすべて空想。むしろこの地図が成り立つ社会を現実的に想像してコメントします現実に寄せていくのではなく、地図に寄せた現実を紐解いていくのです。私のコメントの後に、地元の人(作者)のコメントもいただきます。

それではいくつか見てまいりましょう。

こちらは2019年5月1日、令和初日に東急ハンズ新宿店で開催した際の参加者の作品です。


おやおや、いつの時代でしょう。戦前くらいか、あるいは案外未来すぎるかもしれません。川の河口が三角州になっていますが、ここにどうやら街ができています。ぐにゃぐにゃの細い道路網で、古い建物がたくさん並んで賑やかな市場や商店街があるのでしょう。しかし、川に流されることを恐れて空き地になりそうな三角州に、なぜ街が…?そして、橋が少ない…。ここが、前かもしれないし未来かもしれないポイントです。

よく見ると鉄道に沿って小さな道路がありますが、線路に並行する小さな道路があります。戦前くらいだと鉄道橋と道路が同じ橋の上を通っていたりしました。車の交通量が多くない時代です。そんなオールドスタイルな橋が、最近(2000年)まで残っていました。愛知県の犬山橋です。
この三角州を渡す橋、そんな、超オールドスタイルなのでしょうか。海沿いを左右に横断する鉄道(+道路)と、内陸を左右に横断する太いバイパスと思われる道路とあり、現代ならこちらのバイパス沿いにロードサイド店舗ができたりするんですが、それも一切ありません。やはり前の時代なのか…

鉄道とバイパスの間にこそ橋がほしいところですが、ありません。むしろこの川は流量が少なく、新しい川を作ったことでこちらは主流ではなくなり、公園になっているかもしれません。そして、今はドローンができたことでちょっとしたものは飛ばせるようになりましたが、この地図の時代は橋がなくても、人間はちょっとなら飛べるのかもしれません。なにしろ左下、海上に大きな橋がかかっています。かなり遠いところまで結ばれる橋でしょう。戦前なら作れない大きな橋を技術的には作れるのです。

また、地図の左を見てみると、海上の埋立地に向上が作られ、左上の田畑は全く手がつけられていません。今の日本なら、ロードサイド店だけでなく、埋立地に作られた工場もこちらの田畑をつぶして作られるはずです。埋立地造成、お金と手間がかかりますしね…。ここは相当、意図的に農地を守っているといえるでしょう。米は金なり、なのでしょうか。そう考えると江戸時代的オールドスタイルなのですが、時代は回るとも言いますので、未来かもしれません。

中央上にある四角い黄緑のエリアは、城址か古墳か…?ここもみどころだと思いますが、個人的には川沿いのマーケットを歩いてみたいところです。

続いての地図は同日の別の方の作品。


おお、これは歩いてみたい…。地図の中央少々右に賑やかそうな街がありますが、なにより太い道がなく、あるのは細い道ばかり。車が通ってなさそうですが、歩くにしてもかなり迷いそうで、土地勘がないと歩けない街です。

自家用車普及率が低く、大規模にインフラを整備しない時代なのか、今の時代だけどそういう国なのか。想像は膨らみます。そして川を渡る橋が、今度はひとつもありません。渡し船か、浅いから水中を歩いて渡るのか…。水中を渡るにはちょっと広い川幅で、簡単な橋なら作れそうな川幅なので、この2つの説は怪しいのです。ひとつ可能性があるのは、仲が悪い説。

注目は河口からちょっと内陸に入ったところ、川の左右に少し太い道路があります。つながってそうな道路なのです。これ、前は橋があったのかもしれない…もしや…戦乱の世で…橋が壊され流されたのか…いやいや物騒ですが、戦乱の中なのか、終わった後なのか。情勢も気になりますし、人々の営みも気になります。

本日最後は、現実的な作品を。昨年品川区で実施した際の参加者の作品です。


一気に日本の現実に引き戻される〜ただいまおかえり日本。
左下に城がありますが、今や公園になっているのでしょう。四方八方から橋がかかっています。そして城址の上に街が広がります。城址の近くに小さな駅が、少し上に大きな駅があります。小さな駅は地元私鉄(広電、嵐電、福鉄のような)、大きな駅はJRでしょうか。

地図上部になると山があり、山沿いにある住宅地は、道路網も新興住宅地のような道路模様です。城址付近から順番に人が住み始め、徐々に地図上部に行くにつれて、後の時代に開発されていき、ここ100年で徐々に人口が増えた都市といえるでしょう。ここまでは日本の典型例です。

城址の右にある田畑は大事に守られています。城址だけでなくこの都市を支えた大事な田畑として保全されているのか、農家の権利が強いのか。というのも、駅の上側に競技場があるのですが、住宅地の中にあります。ここに作るのはさぞ大変だったでしょう。あるいは競技場のためなら引っ越したり、遠方からの観戦客でワイワイすることい寛容な住民なのかもしれませんが、なにしろ日本では城址の中に作られたり、田畑をつぶして作られるので、なかなかレアなのです。そういう意味では、古風な日本の都市っぽいですが、スポーツ精神強めな市民が多いのかもしれません。


さて、なんか真面目に解説してしまいましたが…
こんな感じで読み解くことができます。まだまだあるので、次回はもうちょっと破天荒な地図を紹介して参りたいと思います。

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