風のたより #107 千葉甫 2019-10-30 13:57:02 | 短歌 二十年前の面影眼に浮かぶ通りすがりに見た表札に はっとしたまま立ち竦む夜の壁の手のひら大の蜘蛛を見つめて この夜も段下りて先ず壁を見る此処に居た蜘蛛何処に居るのか
風のたより #106 千葉甫 2019-10-28 13:55:38 | 短歌 明るんでいる窓を見る会ったのは故人ばかりの夢より覚めて 誰も居ない部屋に残っている声は点けっぱなしのまんまのテレビ 留守電に移る間際に取り上げた送受器に来る聞き慣れた声
風のたより #105 千葉甫 2019-10-26 15:05:46 | 短歌 わが声に応えるAIデバイスと私のほかには音の無い夜 留守電に入り始めてきた声に顔が伴い送受器を取る コンピューター消して夜更けのディスプレーに光っているのはわが前額部
風のたより #104 千葉甫 2019-10-24 13:38:19 | 短歌 木の下の陰に鋭く光るもの低く差し込む暮れ際の陽に ゆっくりとかたち出てくる先ほどは空白だった記憶の中に 点けた灯に光るゴキブリ冷蔵庫の下へと走る昨夜のように
風のたより #103 千葉甫 2019-10-22 14:55:25 | 短歌 荒れていた風音絶えて眼が覚めて見つめる闇は静まりかえる 近づいたサイレン過ぎて行くまでを聞き耳立てる咀嚼休んで トイレから戻って次の眠り待つ朝はまだまだ遠くにあって