当初のブログは大宮神社からスタートしました。久しぶりに神様のお話。日本に限らず古い神話には、森羅万象の神様が登場します。天体の太陽や月、水、海、山、火などが神として人格をもって崇められてきました。今回は『風の神さま』についてでございます。
風は気象用語では同義語の気流として、大気の流れを意味しますが、厳密には水平方向の流れをのみ意味し、垂直方向には上昇気流もしくは下降気流が正しいようです。
自然現象としての風は、視覚化は揺れる木々で顕在化されたりということもあり、日常的ということや、嵐自体を指すこともあり、雷同様に神格化されていたようです。
雷についてはその瞬間的な破壊力と相まり、ギリシャ神話の主神ゼウスや、バラモン教のインドラ(帝釈天)の武器であったり、日本では天神様(菅原道真)の祟りといった破壊を現す武器的な感覚が多いような気もします。
最古の文明であるメソポタミアでは、都市ごとに崇拝される神はその都市が有力なほど、神の力も強く、神々の力はその都市の隆盛により変遷していきます。初期メソポタミアでは非常に有力だったシュメールの主神エンリルが、風と嵐の神であります。エンリルは疫病をもたらし、干ばつを起こし更に大洪水により滅びをもたらします。旧約聖書のノアの方舟伝説の原型でございます。
ず~っと時代は下ってギリシアの神話群ではアネモイと呼ばれる風の神々があります。
北風は翼のある老人で冬の冷たい風をもたらすボレアース。晩夏と秋の嵐をもたらす南風ノトス。季節に拘らず暖気と雨を運んでくる不吉な東風エウロス。
そして最も出番の多いのが西風ゼピュロスで、春を告げるさわやかな豊穣の風を運びます。虹の女神イーリスと、春の花の女神フローラの夫でもあり、ヒアシンスの花の物語では、アポロンとスパルタの王子ヒュアキントスの愛を張り合ったあげくに恋に破れ、円盤競技の円盤をヒュアキントスに風でぶつけて死に至らしめたり、エロスとプーシュケの物語では、プーシュケをエロスの元に運んだりする、重量な脇役であります。
ボッティチェリのヴィーナス(ギリシャ神話ですので、アフロディーテが正しいと思いますが)の誕生では、左側にフローラを抱き頬を膨らませて強風を起こし、生まれたばかりのヴィーナスを陸地に近ずけようとするゼピュロスが描かれています。
インドではリグヴェーダには、インドラと並んで三界(天・空・地)のうちの空界を治めるヴァーユ(サンスクリット語ではワーユ)が風の神さまであり、仏教に取り入れられて、風天となります。和製ヒッピーを指すフーテンや、寅さんとの関係は?よく判りません。
この神様、わたくしの個人的に大好きな叙事詩ラーマヤーナに準主役的に大活躍する、猿将ハヌマーンの父神でもあります。
古代マヤの嵐の神にフラカンがあり、これは古代マヤ語(Jun Raqan:一つ脚(のもの)を意味する)を語源とする風・嵐・火をつかさどる創造神であり、ハリケーンの語源ともされています