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単位の話

単位のお話

すっかり冬らしい気候となって参りました。師走も半ばを過ぎ今年も残り少なくなって参り、何かと気ぜわしい季節でございます。
本年最後のブログとなります。

少々難しそうなお話ですが・・・、

以前私の所属していた会社は、主要な業務の一つとして計測器の校正という仕事をして、糧を得ております。生業(なりわい)でございますな。
さて、計測器とは測定器とも云われ、モノを測る(計る・量る)器具であります。
普通に(家業に限らずという意味で)産まれて最初にお目にかかる測定器はおそらく、小学校で手にする定規であるか、健康診断の体重計、そして時計といったものでしょうか。

センチメートル、キログラムといった単位が最初に覚える対象だと思います。
これを難しく言うと「物象の状態の量」といい、例えば長さはメートル(m)、質量はキログラム(kg)がその単位となります。

このように計量の対象となる量を、具体的に列挙し、併せてそれについて単位を定め「法定計量単位」とし、これを定めた法律がわが国では「計量法:1992制定」であります。
この法の目的は「国際的に計量基準を統一(SI単位)」することと、各種計量器の正確さを維持するための、トレーサビリティ(追跡可能性:標準器の国際標準への繋がり)の維持となっております。要するに商売(国内、そして貿易)に使う質量などを標準化するためのものです。

単位、例えばメートルはもともとギリシャ語のメトロン(ものさし・計る)からの造語であり、地球の赤道と北極点の間の海抜ゼロにおける子午線上の弧の長さの1/10,000,000(早い話が、地球を縦割りにした円周の4分の一の一千万分の一)であり、1960年までは、白金製のメートル原器がフランスにあり、全ての標準とされていましたが、その後遍歴を経て現在は光が299,792,458分の1秒に進む距離として制定されています。

計量法には実は罰則があります。一つには非法定計量単位での取引又は証明に使用することが禁止されており、50万円以下の罰金となります。つまり勝手な単位で、モノを売ったり、サービスしてはいけませんよということ。
もう一つは非計量単位が記された計量器の販売(販売目的の陳列、法定計量単位での併記でも)も同様に、50万円以下の罰金であります。例えば温度の華氏(℉)長さの尺やインチ・Feetの目盛を℃や㎝と併記した場合などです。

さてSIとはフランス語でLe Systeme International d’unites すなわち国際単位系の略で、1960年のメートル条約に加盟する国々による国際度量衡総会で決定された、1つの量に1つの単位とすることを原則として統一し、採用を世界に推奨されていますが、それから60年を経ても採用しない国々が多々あります。
アメリカ合衆国、英国がその最たるものです。いわゆるフート・ポンドと華氏がいまだにかの国でのポピュラー単位であります。そしてかの国の得意分野として、航空機分野ではこれがスタンダードとしてまかり通っており、日本の計量法でも航空機分野に限って、マイル・ヤード・フィート、インチ、ポンドの使用が認められております。英米が発祥となるスポーツであるゴルフも一旦はメートル法を採用しましたが、またヤードに戻っていますね。

航空機の世界では、未だに距離はマイルで、高度はFeetで外気温度は華氏で表現されたりします。他に液体ヘリウム容器などのUSA製のものは、液面対しての換算表はインチを採用しているものが、日本国内でも主流になっていたりします。
このフィート・ポンドに関しては、まあ日本の尺などもそうですが基になるのは、人間由来の寸法が主体となっています。インチは大人の男性の指の巾に由来する、ラテン語の12分の一を意味するunciaから。フィートは大人の足(脛)の長さ(30センチ)に由来し、古代ギリシャ時代から使用されている単位であります。
マイルは元々ラテン語の千であります。すなわち古代ローマ2歩分の長さ(passus)を元として、その千倍をマイルとしたわけです。海里のマイルは本ブログの野分(台風)で紹介しています。
さらにポンド(lb)の由来は1日分として焼くパンの大麦の重さです。すなわち古代メソポタミアにて小麦1粒の重さを1グレーンとし、7,000グレーンをポンドとしたわけです。言葉としては天秤に由来するラテン語(略ではありますが)です。


単位は上記のメートルの様に即物的な転訛によるものがありますが、人名に由来したものが多々あり、自然科学者の有名どころが名を連ねております。今回はこれについて、一部を少しだけ紹介致します。

圧力のSI単位はPa 即ちパスカルであります。単位面積に加わる力であり1Pa=1N(ニュートン)/㎡=1bar となります。力を表すNニュートンはリンゴの木で有名な物理学者でありますが、パスカルも天才であります。
Blaise Pascal(ブレーズ・パスカル 1623~1662)はフランスの、物理学といった自然科学のみならず哲学者でもあり、神学者でもあり、コペルニクスと並ぶ、人類史上に輝く超天才といってよい人物でしょう。
わたくしは彼の著書で哲学書である「パンセ」を何度か途中まで読み、未だ読破に至っておりませんが、物理で習った密閉容器中の液体に関する「パスカルの定理」を発見したパスカルと、「人間は考える葦である」とパンセで記した哲学者パスカルが同一人物であるという認識は当初は全くございませんでした。
かのパスカル、「5ソル(貨幣単位)の馬車」と称する乗合馬車も開発しております。現在のバスに相応するいわば最初の公共交通機関という訳です。

次に電圧、即ち電位差を現す、電気でおなじみのV(ボルト)でありますが、計量単位令では、「1Aの電流が流れる導体の2点間において、消費される電力が1Wであるときの、その2点間の電圧即ち1V」と定義されております。
このボルトも人名から採用された単位で、ⅡConte Alessandro Giuseppa Antonio Anastsio Volta アレッサンドロ ジュゼッペ アントニオ アナスタージオ ヴォルタ2世伯爵という、寿限無並みに長い名前のイタリア人がその人であります。因みに電力の単位であるW(ワット)はお馴染みの、蒸気機関を発明した、英国のジェームズ・ワットに起因しています。
かのヴォルタ伯爵は、世界初の化学電池であるボルタ電池の発明者であり、亜鉛と銅を電極とし硫酸もしくは塩化ナトリウムを混ぜた食塩水を電解液として使用しました。
イタリア北部のコモという国立中等教育機関であるギナジウムの物理学教授であり、電位と電荷を分けて研究する手段の確立と、それらが比例することを発見致しました。
ナポレオン・ボナパルトの崇拝者としても有名なようですが、1745~1827の82歳と当時としては長命な方であったようです。

他の電気に関わる単位では
インダクタンスの単位H(ヘンリー)はJoseph Henry(1979~1878USA):スミソニアン協会初代会長でファラデーと同時期に電磁誘導を発見したものの、発表はファラデーに先を越されました。電動機の発明者でもあり、ベンゼンの発見者としても有名です。このマイケル ファラデー(1791~1867英国)もコンデンサの静電容量の単位F(ファラド)に名を遺しています。

電荷を現す単位C(クーロン)はフランスのクーロンの法則を発見し土木工学者でもあるシャルル オーギャスタン クーロン(1736~1806)から。
電気抵抗の単位Ω(オーム)は、中学で習ったオームの法則R=V/Aの発見者であるGeorg Simon Ohm(ゲオログ ジーモン オーム: 現ドイツであるバイロイト侯爵領エアランゲン出身1789~1854)から取られました。

磁束密度のSI単位はテスラと申します。以前はガウスという単位が主でした。今でも地磁気には使いますね。あまり一般的ではありませんが、磁石を使って人体の透視を行うMRIに使用される超電導磁石などに使用されます。これも人名であり、最近有名なテスラ社同様に、エジソンと同時代の双璧をなす二コラ・テスラという発明家(物理学者)から来ています。

さて、SI単位ではありませんが、国際的な取引に使われる単位で真珠に限りということで、計量法にも認められた我が国固有(?)の単位が匁(正式には、「もんめ」であり、単位記号はmom:3.75g)であります。
元々は中国唐代の銅銭「開元通宝」1枚の質量で中国での単位は銭であり、当初は国内でも銭が一般的な呼称であり文目が語源のようです。字としては、15世紀には銭の異体文字として使われていたようです。

江戸時代には銀の質量イコール貨幣単位として使用されており、元禄時代に換算は金1両が銀60匁と公的に定められましたが、実際には変動相場での取引でした。

真珠が日本の特産品ということで、国際的にも真珠の取引は「もんめ」が使用されていますが、実は現代の穴あき五円玉の重量はきっちり3.75g即ち1匁であります。ここに財務省造幣局の拘りを感じて思わず頬が緩んでしまうのは筆者だけでしょうか?

「はないちもんめ」とは、1匁分のお花を値切った、値切られた。で嬉しい、悔しいと呼び合う童遊びではありますが、この一匁はお花の質量なのか、お金として一匁分のお花なのか、どなたか教えて戴きたいところであります。

今年もお読みいただきありがとうございました。
少なくとも来年3月までは、引き続き担当致しますので、一層のご愛読をお願い致します。
来年が皆様にとって、良い年でございます様、祈念申し上げます。
良いお年をお迎えくださいませ。
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