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帽子にまつわるエトセトラ

現役時代は営業職ということもあり、現場作業でも国内各地の病院が業務先でしたので、出張が多く、テレビを視る時間は非常に少ない状況でした。

定年を迎え、子供たちもそれぞれ独立して家内と夕食後にテレビを視る機会が、とても多くなっています。

昔から必ず視ているのは、日曜の朝の「遠くに行きたい」「題名のない音楽会」という長寿番組ですが、このところ結構ドラマも鑑賞しています。旅行番組とか歴史系の特集みたいなのが好きな範疇に入ります。

旅行番組とドラマの刑事ものでちょっと違和感のあるのが、帽子の扱いです。

 

若い(中にはそれなりの年齢の)俳優さんやタレントさんが帽子を取らずに食事をしている風景や、訪問先の室内でも帽子を被ったまま、女性でも神社やお寺で帽子を取らずにお詣りしている光景には、違和感というよりも、多少の不快感を感じてしまいます。

 

もう一つは、刑事もので無帽の状態で挙手の敬礼をする場面。

 

そもそも帽子の役割は、頭部の保護。日差し、防寒、落下物などなどから、頭を守るのが本来。そこから宗教上の戒律、ユニフォーム化、おしゃれ、フォーマルに発展したわけです。

日本では烏帽子(えぼし)という頭部の被り物が古くからございまして、これが日本語の帽子の起源かとも。

この烏帽子、薄い絹でできていたものが、黒漆の紙製となり、衣装や身分により厳格に使い分けがされていたようです。庶民は麻糸織ですが、基本的には冠よりも下の格式として、普段着に被っていたとされます。

本来は男性が被るもので、女性は打掛などを外出時は被っています。例外は平安時代の白拍子。平家物語に出てくる仏御前とか、静御前などが被って舞を舞う挿絵などでお馴染みでしょうか。亭主の好きな赤烏帽子なんて言葉もありますが・・・。

鎌倉時代には庶民にも深く浸透し、男性の象徴化してまいりまして、これを脱がされたり取られたりすることは屈辱的かつ恥辱的なこととなり、紛争の発端になりかねませんでしたが、戦国時代以降は髷を露出して被り物を付けないのが普通となりました。江戸初期の町奴の幡随院長兵衛や、歌舞伎の助六は被っていません。烏帽子を被り続けたのは京のお公家さんくらいかもしれません。あ、相撲の行事さんは未だに着用していますねぇ。

 

別の用途としての冠とは何となく一線を引いて感じます。江戸時代までの武家や、公家の正装である衣冠束帯、今でも宮中の行事には皇室の方々や、神主さんのお付けになるのは冠。

 

もう一つは兜。これは戦闘にあたって頭部を保護するものです。これは現在のヘルメットでございます。俗信ではギリシャ神話の伝令の神(泥棒の神ともいわれますが)ヘルメスの被り物から来たとの説もありますが、あくまでも俗説です。

基は兜を現す(隠すとか守る、覆うという意味の)インド・ヨーロッパ祖語のKelmosから、ゲルマン語のHelmaz更にフランク語Helmを経由して現英語のHelmetに15世紀に成立とされています。

 

さて、元のお話に戻って、西洋のことわざに、もしその人物が家の中に入って来て、帽子を脱ぐようなら真の紳士。帽子を脱がないのなら紳士のふりをしている男。
そして帽子をかぶっていない人物は、紳士のふりをすることさえあきらめている男。というのがございまして、烏帽子ではない西洋風の帽子のエチケットして、西洋のマナー同様に室内では脱ぐのが、わが国でも継承された礼儀だと思います。

 

軍隊では(自衛隊も含み)入隊と同時に帽子の扱いを徹底的に叩き込まれます。

わたしの卒業した商船高専でも同様でした。

制帽、略帽(作業帽や、最近のベレー帽)、ヘルメットは室内では外す。挙手の敬礼は着帽時に限り、脱帽時には10度もしくは最敬礼の腰から折る敬礼を行う。屋外でも神社などの拝礼には脱帽し左脇に囲う。公式の別れの儀式として、帽子を右手で振り「ごきげんよう」を連呼する(号令は「帽振れ~」)等々。

元々挙手の礼とか、帽子(兜)を取るというのは武器を持っていない、つまり相手に対して、敵意が無いとか危害を加えないという意味合いがございます。

 

刑事ドラマで頻繁に無帽で挙手の敬礼をするので、警察ではそれが当たり前なのかと思っていましたが、どうやらそうでもないような。良質の刑事ドラマでは、「帽子をかぶっていないときには挙手の敬礼はしない」などとのセリフも耳にしたことがございます。

法的には警察礼式という国家公安員会規則第13号に定められており、やはり挙手注目の敬礼は制帽やヘルメット等着用に限るということのようです。

 

ただこれは男子のエチケットでございまして、女性の場合は帽子は正装の一部とみなされていますので、小さくお辞儀をするとか、カーテシーと呼ばれる、右足を引いて屈んで小さく身を鎮める動作で十分とされます。日中は室内でも食事に際しても女性は帽子を脱ぐ必要はないことになります。ただ夜間の行事では帽子は被らないのが、エチケットとされます。

これは女性皇族の皆様のお仕草でお馴染みのものでございます。

 

これはキリスト教が主流の西洋で発達したのエチケットでございますので、ユダヤ教やイスラム教ではシナゴーグやモスクで帽子を取る必要のないという宗教もございます。

帽子という命題であれば、冠の由来やらハットとキャップの違い、更にベレー帽の起源とか面白いお話は尽きませんが、最近の風潮としての帽子の扱いや、挙手の礼についての違和感を申し上げました。

 

さて、年末となりました。本年一年お付き合いを戴き、誠に有難うございました。

来年は戦火が収まり、穏やかな年となることを心より願い、また皆様に幸多かれとお祈り申し上げます。

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