□本日落語二席。
◆九代目桂文楽「悋気の火の玉」(NHK-Eテレ『日本の話芸』)。
東京霞が関イイノホール、令和3(2021)年1月15日収録(第739回「NHK東京落語会」昼公演)。
去年からか、『日本の話芸』のオープニングのスタイルがかわって、演者の短いトークがあってから高座の映像にきりかわるようになったが、だいたいみなどの演者もここでは、今から演るネタについて、誰それから教わったものだというのを紹介するのが、定番のようになっている。
たぶん、そのようなきまりごとがあるのではないのだろうけれど、みな前の落語家が語った前例を踏襲するようなかたちになっているのだろう。
したところ、当代文楽はオープニングトークでそれを語らなかった。かといって、前例と異なる何か画期的な話題をもち出したかというとそうでもない。
まあ、よかろうと、落語本編を聞き出すと、当代文楽はマクラで「悋気の火の玉」を習った経緯について語り出した。そもそもオープニングトークは高座の前に撮るのかあとなのかわからぬが、いずれにしても、オープニングでこのネタの稽古のことを語るには及ばぬというわけだったのか。
で、当代文楽は「悋気の火の玉」を師匠の八代目桂文楽に習ったのだと言った。嗚呼、なんだかあたりまえだなと思っていると、さにあらず、八代目桂文楽は弟子の当代文楽にいっさい対面での稽古はしなかったとのことだった。だから、当代文楽は師匠から一席たりとも落語を習っていないのだと。さて、これは他の弟子についても同じなのか。まあ、いい。
とにかくこれはすこぶる興味深い。で、それがどうして「悋気の火の玉」について師匠から習ったということになるのだと。理由はこうだ。
黒門町の文楽は、ラジオでの落語出演があるときなど、かならず弟子にストップウォッチを持たせて、いっぺんネタ繰りをするとのこと。つまり、その師匠のネタ繰りにつきあう時間だけが、結果的に唯一師匠との稽古の時間になるということらしい。こうして、当代文楽は「悋気の火の玉」を師匠から「習った」のだと聞いて納得した。
ストップウォッチで時間をはからせてネタ繰りをするほど、きっちりした黒門町が「大仏餅」で絶句したというのはよほどのことだったのだろう。また、それだけにショックでもあったと推察される。
たぶんその「大仏餅」の際も、ストップウォッチのネタ繰りがあったのだろうと思うが、さて、それが当代文楽の任だったのかどうか。師匠の最後の高座について、今回当代文楽は何も語らなかった。
◆『笑点』大喜利:五代目三遊亭圓楽(司会)/三遊亭小遊三・三遊亭好楽・林家木久蔵(現木久扇)・桂歌丸・三遊亭楽太郎(現六代目円楽)・林家こん平(BS日テレ『笑点 水曜なつかし版』)。
大分文化会館、平成12(2000)年3月5日OA(『笑点』第1705回※テレビ大分開局30周年記念)。
◆九代目桂文楽「悋気の火の玉」(NHK-Eテレ『日本の話芸』)。
東京霞が関イイノホール、令和3(2021)年1月15日収録(第739回「NHK東京落語会」昼公演)。
去年からか、『日本の話芸』のオープニングのスタイルがかわって、演者の短いトークがあってから高座の映像にきりかわるようになったが、だいたいみなどの演者もここでは、今から演るネタについて、誰それから教わったものだというのを紹介するのが、定番のようになっている。
たぶん、そのようなきまりごとがあるのではないのだろうけれど、みな前の落語家が語った前例を踏襲するようなかたちになっているのだろう。
したところ、当代文楽はオープニングトークでそれを語らなかった。かといって、前例と異なる何か画期的な話題をもち出したかというとそうでもない。
まあ、よかろうと、落語本編を聞き出すと、当代文楽はマクラで「悋気の火の玉」を習った経緯について語り出した。そもそもオープニングトークは高座の前に撮るのかあとなのかわからぬが、いずれにしても、オープニングでこのネタの稽古のことを語るには及ばぬというわけだったのか。
で、当代文楽は「悋気の火の玉」を師匠の八代目桂文楽に習ったのだと言った。嗚呼、なんだかあたりまえだなと思っていると、さにあらず、八代目桂文楽は弟子の当代文楽にいっさい対面での稽古はしなかったとのことだった。だから、当代文楽は師匠から一席たりとも落語を習っていないのだと。さて、これは他の弟子についても同じなのか。まあ、いい。
とにかくこれはすこぶる興味深い。で、それがどうして「悋気の火の玉」について師匠から習ったということになるのだと。理由はこうだ。
黒門町の文楽は、ラジオでの落語出演があるときなど、かならず弟子にストップウォッチを持たせて、いっぺんネタ繰りをするとのこと。つまり、その師匠のネタ繰りにつきあう時間だけが、結果的に唯一師匠との稽古の時間になるということらしい。こうして、当代文楽は「悋気の火の玉」を師匠から「習った」のだと聞いて納得した。
ストップウォッチで時間をはからせてネタ繰りをするほど、きっちりした黒門町が「大仏餅」で絶句したというのはよほどのことだったのだろう。また、それだけにショックでもあったと推察される。
たぶんその「大仏餅」の際も、ストップウォッチのネタ繰りがあったのだろうと思うが、さて、それが当代文楽の任だったのかどうか。師匠の最後の高座について、今回当代文楽は何も語らなかった。
◆『笑点』大喜利:五代目三遊亭圓楽(司会)/三遊亭小遊三・三遊亭好楽・林家木久蔵(現木久扇)・桂歌丸・三遊亭楽太郎(現六代目円楽)・林家こん平(BS日テレ『笑点 水曜なつかし版』)。
大分文化会館、平成12(2000)年3月5日OA(『笑点』第1705回※テレビ大分開局30周年記念)。