□本日落語一席。
◆柳家わさび「佐々木政談」(寄席チャンネル『夢 寄席』)。
DDD青山クロスシアター、令和2(2020)年7月14日(「青山らくごVol.3~DDD寄席~落語界注目の若手の会)。
わさびは、本ネタに入る前に、「これからする噺は、文久年間のことで、坂本龍馬が活躍した……」と紹介した。「佐々木政談」(上方落語「佐々木裁き」)を演る際に、歴史上の実年を言ってから話すというのはめずらしい。
確かに、この噺に登場する佐々木信濃守(佐々木顕発)は、江戸末期に実在した役人なので、文久年間云々と紹介することができ、それはまちがいでもない。佐々木信濃守が江戸で北町奉行を勤めていたのは、文久3(1863)年のことである由。
ただ、これをあまり実年に即して語ると、とても滑稽に思えてくる。おもしろいことに、上方落語で語られる「佐々木裁き」も、やはり登場するのは、佐々木信濃守という同一人物で、うまいぐあいに、この実在の佐々木信濃守は、本当に大坂でも町奉行を勤めていたのである。それは、嘉永5(1852)年で大坂東町奉行である(ただし、落語「佐々木裁き」では西町奉行)。
わさびの演りかたに即すれば、上方落語「佐々木裁き」では、「嘉永年間のお噺で……」となるわけか。ただ、こちらだと「坂本龍馬の活躍」云々を言うのにはまだ早いことになるが。
◆柳家わさび「佐々木政談」(寄席チャンネル『夢 寄席』)。
DDD青山クロスシアター、令和2(2020)年7月14日(「青山らくごVol.3~DDD寄席~落語界注目の若手の会)。
わさびは、本ネタに入る前に、「これからする噺は、文久年間のことで、坂本龍馬が活躍した……」と紹介した。「佐々木政談」(上方落語「佐々木裁き」)を演る際に、歴史上の実年を言ってから話すというのはめずらしい。
確かに、この噺に登場する佐々木信濃守(佐々木顕発)は、江戸末期に実在した役人なので、文久年間云々と紹介することができ、それはまちがいでもない。佐々木信濃守が江戸で北町奉行を勤めていたのは、文久3(1863)年のことである由。
ただ、これをあまり実年に即して語ると、とても滑稽に思えてくる。おもしろいことに、上方落語で語られる「佐々木裁き」も、やはり登場するのは、佐々木信濃守という同一人物で、うまいぐあいに、この実在の佐々木信濃守は、本当に大坂でも町奉行を勤めていたのである。それは、嘉永5(1852)年で大坂東町奉行である(ただし、落語「佐々木裁き」では西町奉行)。
わさびの演りかたに即すれば、上方落語「佐々木裁き」では、「嘉永年間のお噺で……」となるわけか。ただ、こちらだと「坂本龍馬の活躍」云々を言うのにはまだ早いことになるが。
いや、何が滑稽かと言うと、これをあたかも実年に即した事実のようにして語ると、佐々木信濃守は、大坂在職の際に、桶屋の伜の利発を見出して取りたてることにし、その九年後、江戸に転勤して、また、ここでも桶屋の利発な伜を見出すことになるからである。
佐々木信濃守は、九年のあいだに、大坂と江戸でたまたま二人の利発な桶屋の伜と遭遇したことになるわけだ。しかも、どちらの伜も同じように奉行ごっこをしていて、佐々木信濃守がそれを見つけるという展開である。
なんだか重箱の隅をつつくようなもの言いをしているようだが、別に非を唱えているわけでも揶揄しているわけでもない。こんなふうに考えたら、なんだか滑稽でおもしろいなと思っただけである。パラレルワールドのようだ。
佐々木信濃守は、九年のあいだに、大坂と江戸でたまたま二人の利発な桶屋の伜と遭遇したことになるわけだ。しかも、どちらの伜も同じように奉行ごっこをしていて、佐々木信濃守がそれを見つけるという展開である。
なんだか重箱の隅をつつくようなもの言いをしているようだが、別に非を唱えているわけでも揶揄しているわけでもない。こんなふうに考えたら、なんだか滑稽でおもしろいなと思っただけである。パラレルワールドのようだ。
柳家わさびが実年を紹介してくれたおかげで見出した、「佐々木政談(佐々木裁き)」の、自分なりの新しい楽しみかたである。