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死は忘れた頃に訪れる

2021年11月05日 11時24分56秒 | ちゅうたしげる詩集
                                        ”
議員が立った
「町長、あなたも通勤されてご存じのように
岩屋の曲がりカーブがこのほど改良され
工事も完成して新しい道ができました
まことに住民の念願がかない喜ばしいことであります
ですけれども
あのカーブにつながる交差点
あそこは非常に広々とした空き地ができました
この空き地にくらべて道路は非常に狭い
狭いのです
あれでは非常に危険です
何とかならないものでしょうか」
町長答弁
「わたしの家の近くでもありよく存じておりますが
確かに空き地にくらべて道路が狭いようであります がしかし
それも県の方でよく考えられて工事をされたものです
なにとぞ交通規則を守られて
事故のないように気を付けていただきたいと存じます」
議員
「しかし町長
ああいった場合はよく地元にも相談してコースを決めるようにして
十分事故対策をするべきであります」
町長
「ご趣旨はよくわかりますが
なにとぞ交通規則をよく守られて
事故のないようにしていただきたいと心から皆さんにお願いします」

そして一か月後
その場所でわたしは事故を見た
救急車の運転手の顔は緊張していた
自転車が道端に転がっていた
それは
町長夫人のものだった
町長夫人は意識不明
ヘリコプターを使って大病院に運び込まれた
外傷はないが頭蓋骨はばらばら
心臓はかすかに動いていた
事故を起こした大きなトラックの運転手は
以前わたしの家の近くに住んでいた男だった
わたしの家の分家のおやじである町長は
数か月前に再選されたばかりだった
最初に事故を通報したわたしの妻は葬儀屋につとめている
死は忘れた頃にやってくる




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