アジア映画巡礼

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『チェイス!』前夜祭:ヴィジャイ・クリシュナ・アーチャールヤ監督インタビュー(下)

2014-12-05 | インド映画

インタビューの後半です。こちらは少しネタバレ気味の箇所がありますので、『チェイス!』をご覧になってからお読みいただくことをお勧めします。


:『Dhoom』シリーズでのヴィジャイ・クリシュナ・アーチャールヤ監督のお名前は、原作(Story)、脚本(Script)、そして台詞(Dialogue)と3つの箇所にもクレジットされていますよね。それぞれ、どんなお仕事になるのかを教えて下さい。

:「原作(Story)」というクレジットは、インド映画独特の分類ですね。「脚本(Screenplay)」は、以前のヒンディー語映画では「台詞(Dialogue)」と区別されて使われていたんです。

全体の筋立てを作る人が「原作」で、主人公の青年がいて、父親が自殺に追い込まれたためその復讐をしようとする、といった、各キャラクターとシークエンスを考えます。それに基づき誰かが「脚本」を書くわけですが、「脚本」は各シーンを決め、それがどのような因果関係で起こっていくかということを書き込んでいきます。さらに「台詞」を書く人は別にいて、口語で会話文に仕上げていくわけです。

ヒンディー語映画は従来から、映画の下敷きになる「書く」という作業をこの3つのプロセスに分けていました。とはいえこれは人工的に分けられたもので、ハリウッドで言えばすべてが「脚本(Script)」に含まれます。それがインド映画では、時としてそれぞれ別々の書き手を使うことになるんです。ある人は脚本を書くのに優れているとか、台詞が非常に重要になるインド映画では得意な人が台詞を担当するとか、そういう理由ですね。私の場合は、この3つの仕事を1人でやっていることになります。


:3人分の仕事をすべて1人でおやりになるというのはすごいですね。ずっとアーチャールヤ監督が共通して手がけておられるせいか、この『Dhoom』シリーズには3つの共通点があるように思います。一つはバイクアクションが入ること。もう一つは、警官と泥棒がどこかで心を通わせ合ってしまうこと。そして最後は、”落下”のイメージが盛り込まれていること。ほかに何かご自分で、シリーズ3本に共通して入れ込んでいる要素といったものはありますか?

:3本に共通している点は、「刑事と泥棒」もの、ということですね。”落下”のイメージは、そうですね、どれもそれで”エンド”に向かう、ということでしょうか。それも、”栄光のエンド”というイメージで、物語の収束を象徴するシーンになっています。今回の『3』、つまり『チェイス!』では特に、観ている側も”落下”を体験できるようなシーンにしました。映像的にもコンセプト的にも、印象に残るシーンになっているのではないかと思います。


『チェイス!』は一つの頂点に立った、という感じの作品ですが、この後はさらに『Dhoom:4』の企画があるのでしょうか? それとも、まったく別の作品を作ってみたい、と考えてらっしゃいますか?

:『Dhoom』の側からすると、いっぱい期待はされています。もちろん、続けてシリーズを作りたいとは思っているのですが、今すぐにとは考えていません。当面は、何か別の作品を1、2本作って、それから『Dhoom』に戻ってきたいと考えています。

『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』(2007)の中では、映画賞のシーンでアビシェーク・バッチャンが『Dhoom:5』でノミネートされていましたからね。『5』まではお作りにならないと。

:あっはっはっは。そうだね、あなたの言う通りだ(笑)。次のタイトルは『Dhoom:5』にしようかな(笑)。


黒澤明監督と共に、三池崇史監督、北野武監督が大好きだというヴィジャイ・クリシュナ・アーチャールヤ監督。この日、以前試写を見てキープしていた三池崇史監督作品『一命』(2011)のプレスを差し上げたら、とても喜んで下さいました。通訳を担当して下さった藤井美佳さん(『チェイス!』の字幕翻訳者)に後日聞いたところによると、「神様のようにいい方だった」というアーチャールヤ監督。これからどんな作品を撮っていってくれるか、とても楽しみです。

なお、アーミル・カーンのインタビューは、『チェイス!』公開日発売の「キネマ旬報」に掲載されています。こちらも併せてご覧下さい。 



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