アジア映画巡礼

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『燃えよスーリヤ!!』が燃え上がる!<4>ジミー警備保障の懲りない面々

2019-12-17 | インド映画

ここのところ、『燃えよスーリヤ!!』について書かせていただくことが続いています。そのたびに、試写でいただいたプレスを隅々まで参照し、お借りしている映像を見直したりしているのですが、この映画、何度見てもその都度発見があって、と~っても面白いです。

©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

昨夜もある原稿を仕上げる中で、「ヴァーサン・バーラー監督は本作の出演者に対し、『ドラゴン危機一発』(1971)、『ドラゴン怒りの鉄拳』(1972)、『ドラゴンへの道』(1972)、『燃えよドラゴン』(1973)、『プロジェクトA(1983)、『サンダーアーム/龍兄虎弟』(1986)、『プロジェクト・イーグル』(1991)等を”見ておくべき作品”に指定したそうだ」とか書いていて、前半4作のブルース・リー作品はもちろんだけど、後半3作のジャッキー・チェン作品もいいセレクションだなあ、と感心しました。『プロジェクトA』の数々のギャグシーンと時計台落ち、そして『サンダーアーム/龍兄虎弟』のアラン・タム紅館コンサート場面は、特に忘れがたい名シーンですね。後者の、コンサートで「午夜騎士(ミッドナイト・ライダー)」が歌われるシーンと、パリのファッションショー銃撃シーンとの切り返しで構成される場面は、長らく私の「香港映画ベストシーン」でした。あの映画で初めて腐乳を知ったんだったけ、とかいろいろ思い出します。

©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

で、『プロジェクト・イーグル』は前の2作ほどにはインパクトがないのになんで? と思ってよく考えたら、そうだ、砂漠でジャッキーがヒロインたちに、ベストに偽装した水タンクからチューブで水を吸わせるシーンがあったんだ! と気づきました。そうか、それからの発想が、じいちゃん(マヘーシュ・マーンジュレーカル)がスーリヤ(アビマニュ・ダサーニー)に装着させる水タンクのリュックとチューブなのか。ヴァーサン・バーラー監督のオタク度、ここに極まれり、ですね。じいちゃんの「スーリヤ、水を絶えず飲んでいろ」という水信仰も、何か元ネタがあるのでしょうか? 本作をご覧になっておわかりになった方は、ぜひコメントで教えて下さい。

©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

あと、どこかのシーンで一瞬「小城故事」のメロディーが流れた気がするんですが、空耳だったのかなあ。あ、ありました、54分ぐらいのところ、スーリヤの父の再婚相手と一緒に、一家がチャイニーズ・レストランで食事するシーンです。ご存じの方も多いようにテレサ・テンの持ち歌なのですが、元々同名の台湾映画の主題歌で、その李行(リー・シン)監督の名作『小城故事』(1979)のヒロイン役は林鳳嬌(ジョアン・リン)、つまりジャッキー・チェンの奥さんなのです。そこまで知っていてこの曲をBGMに使ったとしたら、ヴァーサン・バーラー監督、そのオタク度たるや畏るべし、ですね。どっちだろう、監督に聞いてみたいものです。

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おっといけない、今日は本作のたくさんある見どころのうち、後半の見どころを担う悪の側、ジミー警備保障に雇われている警備員の皆さんを紹介しようと思っていたのでした。ジミー警備保障(ジミー・セキュリティ)は、空手マニの双子の兄弟ジミー(両方とも演じるのはグルシャン・デーヴァイヤー)が経営するガードマン会社で、立派なビルのワンフロアを占めています。警備員の制服が、日本のSE●OMやA●SOKのようにカッコよくないのでちょっと違和感があるかと思いますが、あのダークグリーンの制服は、インドの映画ファンには見慣れたものです。映画スターには必ず警備員、ガードマンが付いており、シャー・ルク・カーンやアーミル・カーンのような大物となると、ガタイのいいダークグリーンのおじさんが常時3人ぐらいは付き従っているのが普通です。本作を見て、こういう警備会社から派遣されてくるのか、と納得しました。

©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

本作ではラスト近く、スーリヤが空手マニを促し、ジミーが奪ったマニのロケットを取り戻すべく、ジミー警備保障に乗り込みます。ところが、ジミーは自宅で優雅なお風呂タイム中。警備員が持ってきたスマホの中の入浴中ジミーと対峙しているうちに、マニは思わずクシャミをしてしまい、それが引き金になってマニ&スーリヤVs.警備員たちの闘いが始まる、というえらくひねった戦闘開始シーンなのですが、そこに登場する警備員たちが実に個性的なのです。一番個性的なのが武器庫を預かる老人で、セリフがいちいち面白い! 白いヒゲのおじいちゃんが出てきたら、要注目です。特に、拳銃をくれ、というガンマンとのやり取りはよく考えてあって笑えますが、一部にちょっと不明な点も(次に映像を見る時の課題にしましょう)。それにしても、インドでは民間の警備会社が、こういう武器庫を持っているんですかね?

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もう一人の注目すべき人物はコーヒー運びのボーイで、制服の色が違い、上の写真のようなカーキ色です。ところが、その場の雰囲気に染まってしまったのか、自分も警備員であるかのように振るまい始めます。そして、次の日の闘いにも参画してしまうのですが、写真からもわかるように小柄なボーイで、顔つきからしてネパール人のようにも思われます。ほかにも、電信柱みたいに背の高い警備員(『死亡遊戯』のアブドゥル・ジャバーのパロディかも)やら、糖尿病の警備員やら、いろんなキャラクターの警備員が登場して、クライマックスの前半を盛り上げてくれます。

©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

クライマックスの後半は、ジミー警備保障が火事になり、スーリヤやマニ、スプリがビルから逃走、じいちゃんの手引きで取り壊し予定の元の住居に潜り込んで一夜を明かしたあとの場面になります。ここを突き止めたジミー率いる警備会社の面々が襲撃をかけてくるのですが、ジミーがやけに正々堂々と闘う方に傾いてしまい、「百人組手」的な方法で決着を付けようとする、というシーンが展開されます。どの警備員も達者な脚技を見せたりして、クライマックスにふさわしいアクションシーンが見られるのですが、ピカイチなのが下写真の真ん中の人物、「サムライ」(プラティーク・パルマール)です。プレスにある江戸木純さんの文によると、プラティーク・パルマールは「格闘技オタク」だそうで、これまでもいろんな作品に出ているようです。サムライとスーリヤの一騎打ちは、ジミーをジャッジにしたポイント制で、壮絶な闘いが繰り広げられます。


その結末がどうなるかは、映画をご覧いただいてのお楽しみ、ということで、今、どんどんYouTubeにアップされている『燃えよスーリヤ!!』本編映像から、<カンフーヒーローに、俺はなる!編>と、<空手マニVS悪党ジミー編>を付けておきましょう。

映画『燃えよスーリヤ!!』12/27(金)公開/本編映像<カンフーヒーローに、俺はなる!編>


映画『燃えよスーリヤ!!』12/27(金)公開/本編映像<空手マニVS悪党ジミー編>


え? いいシーンをこんなにアップしちゃっていいのか? ですか? いいんです、まーだまだ、すごいシーンがいっぱいありますから。残念なのは、ジミー警備保障の警備員の皆さんを逐一画像付きでご紹介できないことで、せめて武器庫番のおじいちゃんと、お茶係のボーイの顔写真はほしかった、と思ってしまいます。その代わり、と言っては何ですが、スーリヤのケッサクな「痛くない!」ポスターが公開されていますので、その中の1枚を付けておきましょう。


全部で20枚ぐらいあるので、ご覧になりたい方はこちらのサイトをどうぞ。『燃えよスーリヤ!!』公式サイトはこちらです。公開まであと10日、さあ、カウントダウンだ、スーリヤ!!

 


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