2018年は、インド映画の日本上映作品が豊富な年でした。昨年末の12月29日公開の『バーフバリ 王の凱旋』に始まって、1月6日公開の『クイーン 旅立つわたしのハネムーン』、4月6日公開の『ダンガル きっと、つよくなる』、6月1日の『バーフバリ 王の凱旋』完全版公開、7月21日公開のドキュメンタリー映画『人間機械』、8月31日公開の『マガディーラ 勇者転生』、10月6日公開のドキュメンタリー映画『あまねき旋律(しらべ)』、10月27日公開の『ガンジスに還る』、11月23日の『ムトゥ 踊るマハラジャ』デジタルリマスター4Kステレオ版公開、そしてトリは12月7日公開の『パッドマン 5億人の女性を救った男』と、かなりの盛況ぶりでした。こうなると2019年が俄然楽しみになってくるのですが、今のところはっきりしているのは1月18日(金)公開の『バジュランギおじさんと、小さな迷子』だけ。かすかに聞こえてくるタイトル名はあるのですが、まだ情報リリースまでに到っていないようです。
というわけで、まずは『バジュランギおじさんと、小さな迷子』をイチオシしてヒットしてもらい、次に続く作品に弾みをつけようと思います。この作品のデータからどうぞ。
『バジュランギおじさんと、小さな迷子』 公式サイト
2015/インド/ヒンディー語/159分/原題:Bajrangi Bhaijaan
監督:カビール・カーン
主演:サルマン・カーン、ハルシャーリー・マルホートラー、カリーナ・カプール、ナワーズッディーン・シッディーキー
配給:SPACEBOX
※2019年1月18日(金)新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー
映画は、パキスタン北部の緑豊かな山あいにある、牧畜の村から始まります。パキスタン対インドのクリケットの試合に夢中になっていた村人たちの中にいた妊婦が産気づき、かわいい女の子を出産しました。ところが、シャヒーダーと名付けられたこの女の子は言葉を発することができず、6歳になっても何もしゃべらないまま。心配した両親はあれこれ試みた結果、インドのデリーにある聖者廟が霊験あらたかだ、という話を聞いて、母親はシャヒーダー(ハルシャーリー・マルホートラー)を連れて列車でデリーにやってきます。その帰途、たまたまみんなが寝静まった夜に列車が国境近くで一時停止している時、やってきた山羊の子を見ようと列車を降りてしまったシャヒーダーは、動き出した列車に取り残されてしまいました。叫んで母に知らせようにも声が出ないままで、列車はそのまま国境を越えてパキスタンへ。母親が気づいた時には列車はもう引き返せず、泣く泣く母親はパキスタン側から捜査を依頼することになりました。
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明くる朝目覚めたシャヒーダーは、賑やかなハヌマーン神のお祭りに遭遇しました。そこで踊っている青年(サルマン・カーン)を見たシャヒーダーは、このおじさんなら信頼できる、と彼について行くことに。その青年はパワン・クマール・チャトゥルヴェーディーと言い、ハヌマーン神に心から帰依する正直者でした。現在は亡き父の友人でデリー在住のダヤーナンド・パーンデー(シャラト・サクセーナ)宅に居候するパワンは、ダヤーナンドの娘ラシカー(カリーナ・カプール)と恋仲でしたが、就職しないと結婚させないと言われ、就活に努力している最中でした。気のいいパワンは自分を慕う幼い少女を捨てておけず、「ムンニー」と名付けてデリーへ連れて帰ります。口のきけない「ムンニー」でしたが、ひょんなことからパキスタン出身だとわかり、紆余曲折を経てパワンはムンニーを家に帰すべく、パスポートもヴィザもないのにパキスタンに入ろうとします...。
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本作の見どころはまず、ハヌマーン信仰と結びついた主人公パワンのキャラ。ハヌマーンはインドの古代叙事詩「ラーマーヤナ」に出てくるサルの武将で、森で隠棲生活を送っていたラーマが妻シーターをランカー島の魔王ラーヴァナに誘拐され、その行方を弟のラクシュマナと捜している時に出会ったサルの王スグリーヴァに仕えています。このハヌマーンは風の神とアプサラ(天女)の子とされており、超人的な力を持っていて空も飛べるスーパーお猿なのです。というわけで、ハヌマーンは別名バジュラング(屈強な(者))、あるいはバジュラングバリー(屈強で力のある(者))と呼ばれています。本作の原題にある「バジュランギー」は「バジュラングの」「ハヌマーンの」という意味で、「バーイージャーン」は「兄貴」というような意味です。邦題では「バジュランギおじさん」となっていますが、なぜ「おじさん」なのかは映画を見ていただければわかりますのでお楽しみに。
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このハヌマーンは、スーパーお猿であると同時に、ラーマに忠誠を尽くす正直者、というイメージも持っており、インドのヒンドゥー教三大神のひとりヴィシュヌの化身であるラーマの前にひざまづいて胸を開き、自分の心にはあなたがいる、と忠誠心を見せている絵もよく見かけます。こうして、ハヌマーンの異名を持つ主人公パワンは、正直の上に「バカ」がつくほどの好人物として描かれているのです。また、シャヒーダーがパワンと出会うハヌマーン神のお祭りは、ハヌマーン・ジャヤンティ(ハヌマーン生誕祭)と呼ばれ、毎年3月か4月にハヌマーン信奉者によって祝われます。ハヌマーンの信奉者は、特にインド式レスリング(『ダンガル』に出て来たクシュティー)をやっている人に多く、勇猛なハヌマーンにあやかろうと、劇中でも見られるような猿の扮装をして祝うのです。
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なお、あのシーンではハヌマーンの扮装をした人たちが「セルフィーを撮ろう(♪チャル・ベーター、セルフィー・レー・レー・レー)」、つまり「自撮りをしよう」と歌っていましたが、あれは2014年5月に就任したナレーンドラ・モーディー首相が何かというと「セルフィーを撮ろう」とカメラ(スマホ)を構えるため、この映画がインドで公開された頃その言い方が流行していたことによるものです。最後に、ハヌマーンのいろいろな画像を付けておきましょう。
ラーマ(中央)と妻のシーター、弟のラクシュマナの前に跪くハヌマーン。
胸を開けて見せるハヌマーン。
傷ついたラクシュマナのためにヒマラヤ山中に薬草を取りに行き、山ごと引き抜いてきたハヌマーン。あとできちんと返しに行ったそうです(^^)。
『バジュランギおじさんと、小さな迷子』の背景となるハヌマーンのことをもっと知りたい方は、日本とインドの合作アニメ『ラーマーヤナ ラーマ王子伝説』(1993)がちょうど上映中の劇場がありますので、ぜひお出かけ下さい。横浜市西区にあるシネマノヴェチェントで、上映時間等はこちらでご確認いただけます。ハヌマーンはこの作品だけでなく、『パッドマン 5億人の女性を救った男』や『PK ピーケイ』等々、いろんな映画に登場しています。この機会に憶えて、『バジュランギおじさんと、小さな迷子』をたっぷり楽しんで下さいね。
「バーフバリ」さえ小声でしか周りに勧めていなかった私ですが、今作はチラシを大量にばらまいて宣伝中です。
ダンスシーンが苦手な人でも、今作ならわりとすんなり見てもらえると思うので、自信を持って勧めています。
昨日、インド映画鑑賞数200作品を達成しました。
2年で達成する予定が3年かかってしまいました。
「インド映画完全ガイド」がなかったらどこから手をつけていいのかわからなかったと思います。本当にありがとうございます。
これからは英語字幕中心になると思いますが、見ていない名作をこれからもたくさん見たいと思っています。
どうぞよいお年を!
また、『バジュランギおじさん~』の宣伝もやって下さっているとのこと、インド映画❤、ありがとうございます。
続けて記事をアップ、とか思いながら、昨日から風邪気味で、今日は1日風邪薬づけのため意識モーロー。
玻璃さんもお気を付け下さい。
今年は公開作のタイトルがまだ上がってきませんが、DVD発売があったりするので、それもご覧になってみて下さいね。
後日、ご紹介致しますので~。
バジュランギおじさん,ほんといいですね!
米国AmazonにDVD注文済みですが,待ちきれず,さっきまでyoutubeにあがっているアラビア語字幕のを最初から1時間ほど視聴。
ほんと,一回,インドやパキスタン行きたくなりました!
pkのときにも相当ボリウッドボリウッド!状態でしたが,あれに近いです。
梅田では明日が最後のはず。
日本語版dvd出たらまた買います!
それにしても,ケチケチせず,日本語版dvdにも英語字幕つけてほしいなあ。あと,ヒンディー語のナーガリー文字字幕と,アルファベット字幕も。
ナーがリー文字はpkでアヌシュカ・シャルマ様にはまったおかげでゆっくりなら発音できるようになってるので。でも年のせいか,ぽろぽろと油断してると忘れちゃう(笑)。
ボリウッド映画,こんなに面白いのになんでもっと流行らないんでしょうかねえ・・・。
あ,cinetama先生,今夜,うちの大学じゃない大学の女子学生さんとお酒飲む機会あったのですが,そのご友人がバジュランギおじさんをみたそうでびっくりしました。たぶん梅田で1000人くらいなもんでしょうに・・・。
ほんと,バジュランギおじさん,こんなにいい映画が日本では3年ほど知られずに眠っていたなんてもったいない!
ラーマ神バンザイ!