寒い日が続きますねー。昨日はうちのマンションでもちつき大会があり、中庭でつきたてのおいしいお餅や甘酒、豚汁などをいただきました。うちのマンションは中庭を挟んで7階建てと9階建ての2棟が建っており、総所帯数は300を越す結構大きなマンションです。理事会もそれから自治会も経験豊かな委員さんたちががっちりと仕切って下さっていて、こういう行事も手際よく運営して下さいます。私も一度だけ任期2年の理事をやったことがあって、そんなわけで顔見知りもでき、住み心地のいい自宅でせっせと仕事をしています。あと、このマンションは全戸がほぼほぼ南向きなので、一部の1,2階部屋を除くとすごく日当たりがいいんですね。昼間は暖房がいらないぐらいで、夜はさすがに電気ストーブを付けていますが、まあ、ありがたいマンションライフと言えると思います。
さて、そんな自宅で本日見たのは、ラジニカーント主演作のタミル語映画『ジェイラー』(2023)。実はこの映画、2023年の9月にシャー・ルク・カーン主演作『JAWAN/ジャワーン』見たさにシンガポールまで行き、封切り日の9月7日を待つまでの間に見たインド映画のうちの1本だったのでした。こちらのブログに紹介を書いていますが、例によってけなしていますね、私(笑)。大体初見時は、よほどのことがないと誉めないんですよ、私は。まあ、英語字幕でもあるし、よくわかっていなかった、というところもあると思うので、今回じっくりと日本語字幕で拝見した次第です。というわけで、あらためてデータやストーリーと共にご紹介しようと思います。
©SUN Pictures
『ジェイラー』 公式サイト
2023年/インド/タミル語/168分/原題:Jailer/字幕翻訳:渡辺はな、字幕監修:小尾淳
監督:ネルソン・ディリープクマール
出演:ラジニカーント、シヴァラージクマール、モーハンラール、ジャッキー・シュロフ、タマンナー、ラムヤ・クリシュナ、ヴィナーヤガン、スニール、ヨーギ・バーブ
配給:SPACEBOX
※2月21日(金)より新宿ピカデリーほかにて全国順次公開
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チェンナイの警察を退職したムトゥ・パンディヤン(ラジニカーント)は、悠々自適の隠退生活を送っています。家族は妻ヴィジ(ラムヤ・クリシュナ)にひとり息子のアルジュン(ヴァサント・ラヴィ)とその妻シュウェータ(ミルナー・メーナン)、そして小学生の孫息子リトゥが一緒に暮らしており、アルジュンはムトゥの後を継いで警部として警察に勤務していました。ムトゥの毎日は、妻に代わって市場に買い物に行き、孫息子リトゥの動画配信撮影に付き合うといった、平凡な幸せで溢れていました。ところがある日、アルジュンが自宅に戻らず、行方不明になってしまいます。当時アルジュンは寺院の神像盗難事件を扱っており、ある食堂の主人を追い詰めようとしていました。その神像盗難に関わっているのはヴァルマ(ヴィナーヤガン)というヤクザ一味で、裏切り者をドラム缶詰めにして硫酸掛けて始末するなど、その非情ぶりはつとに知られていました。警察では、アルジュンの失跡はこの神像盗難事件と関わりがあるのでは、と疑っていましたが、警察自体がヴァルマ一味と繋がっており、いろいろほじくられてはまずいため、結局アルジュンは自殺した、ということにされてしまいムトゥは大きな失望を味わいます。ムトゥは自分の手でアルジュンの行方を調べようとし、タクシー運転手(ヨーギ・バーブ)の力も借りながら、息子の行方を追いますが...。
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最初見た時は、単に「眠る虎(劇中で「Tiger ka hukum hai/タイガル・カー・フクム・ハイ=タイガーの命令だ」という言い方が使われている)が息子の行方不明をきっかけに目を覚ます」ストーリーかと思ったのですが、今回見直してみると、少々奇妙な物語であることに気がつきました。映画の作りが奇妙である、と言った方がいいでしょうか。冒頭に思いっきり日常的な描写を見せておいて、その後は非日常的な展開を積み重ねていく、というシュールレアリズムと言ってもいい手法により、これまでのラジニカーント作品には見られなかった面白い味が醸し出されています。その非日常的な展開へと動くきっかけは、ヨーギ・バーブ演じるタクシーの運転手というか、主人公ムトゥ御用達のドライバーとの間に生まれる会話によって生じるのですが、何やら哲学的な意味も含まれているこの会話を、もじゃもじゃ頭で太っちょのヨーギ・バーブがやることで、違和感に拍車をかけています。脚本も書いているネルソン・ディリープクマール監督、どうやら相当にクセのある監督と言えそうです。ヨーギ・バーブ、下の画像の左奥に小さく写っています(笑)が、いろんな映画に味のある役で出演している、タミル語映画の名脇役です。
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上の画像でラジニと並んでいるのは、本作の三大カメオ出演者の1人、シヴァラージクマールです。もともとはカンナダ語映画界の大物俳優で、父はカンナダ語映画界の歴史的大スターであるラージクマールです。三大カメオ出演者、このシヴァラージクマールにマラヤーラム語映画の大スターであるモーハンラール、そしてボリウッドのジャッキー・シュロフに関しては、次回詳しくお伝えします(と、いつのまにか『ジェイラー』シリーズになってしまいました)。
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今回、もう一つ書いておきたいのは、「ジェイラー」というタイトルのこと。「jail(監獄、刑務所)」から派生した「jailer(看守)」だというのは皆さんご存じでしょうが、私は長い間、インドでは刑務所長のことをジェイラーと言うのだ、と思い込んでいたのでした。それというのも、1976年に見た映画『炎』(1975)のせいで、あの映画の冒頭、列車から降りて離れた村へと案内され、元警部である村長宅へやってくるのが、「ジェイラー・サーハブ」と呼ばれる役職の人だったのです。その扱いぶりから、単なる看守ではなくててっきり刑務所長だろうと思っていた次第です。本作でも、主人公のムトゥは単なる看守よりも偉そうですし、ティハール刑務所の所長なのだろう、と最初に見た時思ってしまったのですが、今回字幕で見てみると訳は「看守」になっており、せいぜい「看守長」ぐらいなのだな、とわかったのでした。この刑務所のシーンは、映画が始まった引退後のシーンの15年前となっており、ラジニカーントは髪も黒くて若々しい風貌で出てきます。しかも腰はビシッとのびており、細身の下半身といい、軽やかな足取りといい、カッコいい「タイガー」そのもの。昨年12月12日で74歳になった人とはとても思えません。
素顔はこうなんです(左は写真を提供して下さった、元チェンナイ総領事の多賀政幸氏)が、いつまでも元気な<スーパースター>として、新たな役に挑戦を続けるラジニSirであってほしいですね。最後に予告編を付けておきます。あれ、日本版予告編はこれからかな? とりあえず、インド版をどうぞ。
Jailer | Official Trailer | Amazon Prime