マイ・ブラザー
※完全ネタバレ
とても重たくて苦しくて、でも見て良かった映画だった。
見たときの精神状態があまり良くなかったのもあったのか
いつもだと深く考えさせられるところなのだが
今回は見終わったあとパニックして、翌日もきつかった。
普通の人が見る分には、内容は重たいとはいえパニックするような
ことにはならない。
結婚して二人の娘を持つ兄サムは兵士。
強盗の罪で入っていた弟トミーが出所してきて兄に合い、
久しぶりに親もみなそろって食事となるが、
父親と弟はとても不仲で空気が悪い。
そんな中、兄はアフガニスタンへ。
ところが兄が向こうで死んだという報せが。
家族はみな悲しみに暮れ、何とか生きていこうとするが
抜け殻のように。弟が兄嫁グレースの娘たちの面倒を見たり、
グレース自身を励ましたりして、徐々に変わっていき、
すれていた彼が優しくて明るい人間になっていく。
逆に、死んだと言われていた兄は戦地でウィリスという兵士と
共にタリバンに拘束されており、監禁され拷問を受け過酷な
環境の中に閉じ込められていた。
やがてウィリスを殺すかお前が死ぬかと選択を迫られた兄は
部下を撲殺し生き延びる。だが部下を殺したことをどのように
自分が受け入れるのかはわからず、自分を許すことも当然できない。
結果的に米軍に救出されて家に帰ることが出来る。
その重たい事実に心が押しつぶされている彼は、再会を楽しみにしていた
家族から人格が変貌したように感じられる。
彼が戻ってくることを知る直前、弟とグレースはちょっと互いに
惹かれそうになっていた。二人はキスをしてしまっていて
二人の気持ちは娘たちにもなんとなく感づかれてしまっていた。
疑心暗鬼になっており、自分をどうすることもできない兄は
二人が関係を持ったのではと疑い、自分は人を殺してまで戻ってきた
というのに、と思うとどうしようもない怒りで狂いそうになる。
仕事に復帰もできず、地獄のような心境の中でついに、兄は
銃を手に暴れまわり、駆け付けた警察らの前で自分の頭に銃口を向ける。
弟が叫び続ける声が兄に届き、彼は銃を置いて警察に拘束され
病院に入ることになる。
面接に来たグレースに、何があったのかを聞かれ、とうとう兄は
それを口にする。
映画はおわる。
最後は口にできて本当に良かった。
そうでなければ、あのままの状況ではもう救いがない。
昔から弟にとって、兄は尊敬すべき人だった。
誠実でまじめで頼もしくて、そんな人が狂乱してしまうほどのことが
起きたとはいえ、何があったのかを分からない弟や周りには
大変なショックだったと思う。
どうやって兄を支えたら良いというのだろうか?
彼自身が壊れた中で落ちる寸前のところをもがいているのを
どのように救えるのだろうか。
何とか自分を取り戻そうとしている兄は死ぬか生きるかだった。
そんな中で弟の声が届いて本当に良かった。
役者がとにかくみなすごくよかった。
凄まじい演技を見せる兄役のトビー・マグワイアや
味のある演技が素晴らしい弟役のジェイク・ギレンホール、
兄嫁はナタリー・ポートマンときて、
なによりすごい演技だったのが、長女役のベイリー・マディソン。
家族の苦労を目の当たりにして、お姉さんらしく振舞おうと必死で
だけど心がついていけない様子を見事に演じていて感動する。
エンディングのU2の曲もとても良かった。
あかるいうちに家に帰れて良かったという歌詞が、
この映画のためにあったような気がした。
兄が仲間を殺せと命じられて実行してしまうシーンは悪夢そのもので
どうやって兄はこの先生きていくのか?ひどいショックを受けた。
PTSDの兄の前に現れた弟の知り合いの女性は戦争について思うことを
口にするのだが、兄の前ではあまりにも理想的過ぎて軽すぎた。
分からないのは仕方ないことだが、あのような兄の前で話す
内容ではなかったと思う。
戦地から帰ってPTSDになってしまった兵士は数えきれないほどいるだろう。
彼ら自身そしてその家族が、どれほど大変な思いをしているんだろうか。
戦争が人を大量に殺し、残酷にし、心を破壊してしまう。
いったい戦争ってなんなんだろうか。
とてもひどくて言葉にもできない。
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