映画が好きな割に、あまり台詞が入ってこないのはアタマの癖なのか、人の表情や仕草や景色や音は鮮明に覚えているのだけど、、、。
もちろん耳には聞こえているし、それなりに色々思いながら言葉を追ってはいるのに、どうも次から次へと頭をすり抜けて消えていってしまう。ああ、なんでかな、と思うことが、よくありました。
そんな僕でさえ一発で覚えてしまった台詞が、「海が嫌なら、山が嫌なら、勝手にしやがれ、、、」という一言でした。ジャン・ポール・ベルモンドがパリの街を車でぶっ飛ばしながら呟くのです。
ゴダールの『勝手にしやがれ』という映画、脚本を書いたのはトリュフォーでした。
学生の頃に勧められて見たのですが、一瞬で興奮してしまいました。
この映画には特別な力があるのですが、その冒頭で、さっきの、「勝手にしやがれ」という台詞とともに走り去るジャン・ポール・ベルモンドを見て、いきなり脳味噌の中心に雷が落ちたのだと思います。
そして、あの興奮は『気狂いピエロ』のダイナマイトを巻き付けたベルモンドを見た時、より強烈なパンチを伴って蘇ってきた記憶があります。あのラストシーンで彼は、この映画の異様なエネルギーを完全に爆発させたのではないかと僕は思っています。
あの目つきと、あの唇は、あの腕やあの着こなしやあの声や呼吸は、巻き付けられたダイナマイトよりも、原色と鋭角が乱れ打つ画像のモンタージュよりも、遥かに猛スピードで危うい存在に思えたのでした。
ジャン・ポール・ベルモンドが亡くなったニュースを見て、さすがにガクッと来ましたが、同時に、少しでも同じ時代を歩くことができたことへの感謝の思いも、やはりグッと湧いてきます。
悲しみと敬意を、心から、、、。
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Stage info. 櫻井郁也/十字舎房:公式Webサイト
ただいま前回ダンス公演の記録をご紹介しております。次回公演情報は、いましばらくお待ちください。