断片：夜、雨に光

稽古場から出ると雨が降っている。キラキラしている。

昼間と夜では同じ雨でも感じ方が少し違う。たぶん脳のなかに昼の細胞と夜の細胞があるのだろう。用事も人間関係も夜は休止して、よほどの急以外はしない。夜はイメージの時間であるような気がするからだ。夜想という言葉があるように。

雨が降っている。LEDの光を吸い込んだ水滴がツルツルとガラスやスチールを転がる。勝手に結びついて糸になったり、一瞬、膜のようになったりもする。眺めていると、闇空から降る水は無数の鏡のようでもある。金属のように見えたりもする。僕らとは少し違う次元の生き物のようにも見えたりも、してくる。空気や様々な物に触れて音を立てているのに、無音を感じる。

イメージや音やリズムや動きや感触や、あるいは未だ何にもならないモヤモヤとした予感が、混沌と、しかし鮮明な断片となって、脳細胞の幾つかにスイッチを入れてゆく。まだ心には到達しない透明な断片。まだ熱にはならない幽かな感情。冷たくも美しい秘密が、宇宙から水滴のカタチで、さめざめと降ってくるようだ。

夜の雨が好き。なぜか、月よりも星よりも、、、。