あれからもう5年も経つのですね。
2019年末に「中国で新型肺炎が流行している」というニュースを耳にし、
「はて、今回のウイルスは何だろう?」
くらいに思っていたら、あれよあれよという間に全世界に拡大したCOVID-19。
その始まりは武漢でした。
当時のトランプ大統領が「中国ウイルス・武漢ウイルス」と呼んで物議を呼びました。
その後沈静化していましたが、
トランプ大統領が再登板し、またきな臭い空気が漂い始めました。
▢ コロナ「震源地」中国武漢の今を歩く。残された傷は トランプ2.0発足で「中国ウイルス」の批判再来も、くすぶる両国間の火種
杉田正史:共同通信
(2025/2/16:47NEWS)より一部抜粋(下線は私が引きました);
中国湖北省武漢市で、新型コロナウイルス感染症の発生が世界で初めて明るみに出てから5年がたった。中国の習近平指導部はロックダウン(都市封鎖)や人工知能(AI)を駆使したデジタル監視といった強硬措置を展開して、新型コロナ流行の抑え込みに「成功」したと誇示する。だが世界を未曽有の危機に陥れた新型コロナの流行「震源地」で危険と背中合わせの日々を過ごした武漢の市民らは、ポストコロナの国内経済の低迷もあって不満を募らせている。
▶ 指導部は”ロックダウン成功”を主張するが… 「震源地」武漢、不満募らせる市民たち
さらに米国で第2次トランプ政権が発足したことで、トランプ大統領が第1次政権時と同様に新型コロナの起源を巡り「中国ウイルス」と呼んで対中国批判の材料にすることも予想され、米国と中国の対立が再燃する火種もくすぶる。
▽兵士が舞い降りた巨大病院
中国内陸部の湖北省にある人口1千万人を超える大都市・武漢市。2019年12月30日、武漢市当局は何の前触れもなく、「原因不明の肺炎患者」が次々に確認されたと医療機関に通知を出した。翌31日には一般にも公表したが、当局が「人から人への感染」を認めたのは2020年1月20日になってからだった。 新型コロナという“見えない敵”との戦いが始まった武漢市。市中に患者はあふれ、一時は治療体制が追い付かずに医療崩壊が現実味を帯びていた。
混乱が続く中、武漢市政府は2020年1月23日、医療現場のひっ迫状況に対応するため、新型コロナ専用の臨時病院「火神山医院」の建設を決定した。突貫工事で約10日後には完成し、運用期間は約2カ月にわたった。
市中心部から西に約40キロ。2024年12月中旬、記者は「医療のとりで」として活躍した「火神山医院」の跡地を訪れた。総敷地面積は約7万平方メートル。建物面積は東京ドームよりやや小さい約3・4万平方メートルと巨大だ。
「天から神の兵士が降り、1400人超の白衣の天使が一線で戦った」。関係者によると、土ぼこりをかぶった看板には、流行当初に急派された軍や医療従事者らを英雄視する言葉が並ぶという。
▽放置されたままの設備
プレハブ造りの病棟は感染者の隔離や重症者の治療、ウイルス検査といった目的別に分かれ、病床は千床に上る。関係者によると、窓の鉄格子はさび付き、「封印」の紙を張ったドアは開きっぱなし。「武漢加油(頑張れ)! 抗疫必勝!」。今でも防護服を着た人のイラストが入ったポスターも張られており、外部連絡用とみられる小型モニターや、「酸素」「吸引」と書かれた設備も残されたままという。
看板には「収容した3059人のうち96・8%が回復し退院した」との文言が続くが、市民の命を守ったという誇りを感じる一方、廃虚と化した建物から当時の活躍を想起することは難しかった。
▽「危険だ」と店主は言った
流行の最初期に多くの感染者が出た市内の「華南海鮮卸売市場」にも足を運んだ。近隣で普段使いされる「色々な食材がそろっている市場だった」(周辺住民)。
外観は工場のよう。1階にあった市場は外壁がぼろぼろで、窓ガラスは一部ひびが入っている。中の様子は高いフェンスで囲われていて見えないようになっている。外付けのスロープから2階に上がると、2階部分には眼鏡の卸売店が30軒ほど軒を連ね、客はまばら。眼鏡をかけていたからか、次々店員らが売り込んできた。1階が「過去」、2階が「現在」。明確に世界が分かれているようだった。
世界保健機関(WHO)国際調査団は2021年1月末に「華南海鮮卸売市場」を視察した。しかし今もなおウイルスの起源は突き止められていない。
せっかくだから黒縁眼鏡を新調しようと思った。約20年前から眼鏡店を営む男性は雑談に愛想良く応じていたが、話題が新型コロナに及ぶと「実家に戻っており覚えてない」とぴしゃり。それでも聞くと「覚えていないんだって」と声を荒げ、表情が一変した。1階に下りることはできないのかと記者が聞くと、一言だけ忠告してきた。「1階には行くな。危険だ」
▽トランプ氏復権、中国側の懸念
トランプ米大統領と同じ共和党が多数を占める米下院の特別小委員会は2024年12月、新型コロナを巡り、中国武漢の研究所に関連した事故でウイルスが出現したとみられるとの最終報告書を公表した。第1次トランプ政権は新型コロナを「中国ウイルス」と呼び、「中国による武漢ウイルスの隠ぺいで世界的な感染拡大が起きた」と中国を非難している。第2次政権も、コロナ起源や流行拡大の責任論を持ち出して中国を攻撃する可能性がある。
これまでの科学研究はおおむね、野生動物を扱う武漢市の「華南海鮮卸売市場」で動物から人間にウイルスが広まったとする説を支持している。2024年9月、米国とフランスのチームが流行最初期に市場で採取された試料の遺伝情報の解析結果を米科学誌セルに発表した。タヌキやハクビシンなどが起点になった可能性が高いと指摘した。
一方で英科学誌ネイチャーによると、武漢の研究所の担当者は中国南部のコウモリからウイルスを収集したことは認めたが「新型コロナとは近くない」と主張した。
中国外務省の林剣(りん・けん)副報道局長は記者会見で、米最終報告書は「中国を陥れる政治的な操作だ。信頼性はない」と反発した上で、「他国への侮辱」をやめるよう米側に要求した。
▽習指導部への消えない疑念
中国の習近平指導部は、新型コロナの流行を巡る情報隠しや初動対応の遅れから国内外の批判にさらされ、“汚名返上”とばかりに強硬措置を次々に実施した。
2020年1月23日に武漢市を封鎖したのを皮切りに、全市民へのPCR検査や、デジタル監視を使った厳格な「ゼロコロナ」政策を全国に拡大した。体制批判につながる言論の統制も強化した。こうした措置は経済活動の停滞、富裕層や若者世代の国外流出という“副反応”を生み出すことになった。
習指導部は新型コロナとの戦いで「大勝利を収めた」とアピールする。だが葬儀業の男性は「当時、近隣の団地だけでも死者が相次いで対応できなかった」と振り返る。
当局によると2024年11月までの中国の死者数は約9万人で、人口比では日本や米国よりも圧倒的に少ない。中国では実際の死者数がもっと多かったとの疑念が消えない。2022年12月には詳細な統計の発表も停止され、実態の把握は難しい。
新型コロナ禍の激動の日々がうそのように、武漢の街中ではマスクを着けた市民の姿は数える程度だ。飲食店の店内は客でにぎわい、ソーシャルディスタンスを訴えるポスターは破れて文字が見えなくなっていた。武漢市の20代の女性会社員は新型コロナ感染で親戚を亡くした。葬式は執り行えず火葬にも立ち会えなかった。コロナ禍は「悪夢だ」。悲しい思い出は消えない。
中国経済の低迷は今も続いている。2年間の休業に追い込まれた武漢市の飲食店の女性は「中国の景気は低迷した。何をもって勝ったと言うのか」と不満を口にした。
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