へなちょこな詩 その２０ 宮尾昌成

昨日、僕は、整体院へ行った

いつもの整体院へ行った

７０代後半男性の先生が

いつものように、椅子に腰かけて

待っていてくれた

さっそく、僕は

施術台の上に、うつぶせになった

先生は、僕の背中あたりをマッサージしながら

話し始めた

ちょっと、気恥ずかしそうに笑ってから

話し始めた

「実はねー　こないだ、地区の祭りがあってね

山車が出てね　毎年、出るんだけどね

私も、一緒に歩いたんですよ

あー、毎年、そうやって、一緒に

町中を歩くんだけどね

今回、歩数計で計ってみたらね　うん

けっこう歩くもんだね　３８０００歩。　それでね・・・・・」

先生は、嬉しそうに　時々、恥ずかしそうに笑いながら

話しは続いて行った

ウオーキング大会に参加する予定があることや

秘境の地を歩くサークルを作ったことや　いろいろ・・・・・

で、僕は、そんな話しを聞きながら、ふっと思った

この先生、話を聞いて欲しいんだ　誰かに聞いて欲しいんだ

歩くことが大好きなんだよって

歳を取っても、まだまだ、こんなに歩けるんだよって

まだまだ、こんなに元気なんだよって

こんなに、毎日、楽しいんだよって

そして、もしかしたら、凄いね凄いねって言って欲しいんだ

きっと、そう、誰かに、凄いね凄いねって

偉いね偉いねって、言って欲しいんだ

きっと、そうなんだ

だって、僕も、そうだから

先生の気持ちが、凄くよく分かった

子供の頃は、みんなが、褒めてくれた

凄いね凄いねって言ってくれた

だけど、大人になると、誰も言ってくれなくなる

大人になっても褒めて欲しいんだよね

大人になっても、凄いね凄いねって

偉いね偉いねって言って欲しいんだよね

きっと、みんな、そうなんだよね

人って、そういうものなんだよね

だから僕は先生の話しを、ちゃんと聞いた

ちゃんと聞いてあげなきゃって思った

いつもは、途中で寝てしまうけど

寝ないで、相づちを打ち続けた

先生、凄い！凄い！