祈りを、うたにこめて

祈りうた(ちいさな翼  こちら側から「希望」へ)

こちら側から希望へ

 

1 病んだ坂

ある日とつぜん 坂が病んだ

坂がのけぞったのだ 苦しそうに

天は雨をたたきつける

坂は身もだえする

 

天に容赦(ようしゃ)はなかった

わらってさえいる

坂は悲鳴をあげた

─坂の下に人びとがいる そう思いながら

 

坂の病は重かった

優しいこころが崩(くず)れ落ちそうになる

だが 坂は踏ん張る 歯を食いしばる

─坂の下には人びとが居る! 坂の下には罪なき人びとが生きている!

 

 

 2 皿

皿が手からすべり落ちた

皿はハッとして手をみあげる

手はかたまっている

 

皿はすぐ床(ゆか)から声をかけた

─大丈夫 割れなかったから

 だいじょうぶ だいじょうぶ

 

床も手にむかってさけんだ

─よかったじゃないか

 落ちたのがお皿で

 あなたのこころじゃなくって よかったじゃないか

 

 

 

3 白い雲

拉致(らち)という字を

何度も書いた

忘れてしまわないよう

指におぼえさせた

 

虐待(ぎゃくたい)という字を

何度も書いた

「虐」には「嘘」がひそんでいる

そうつぶやきながら

 

原爆(げんばく)という字を

何度も書いた

ゲンバクと書きたい気持ちで

原発(げんぱつ)とならべて書いた

 

魑魅魍魎(ちみもうりょう)

魑魅魍魎

真っ黒く見える世界

鬼がすぐそばに棲(す)んでいる世界

 

侵略(しんりゃく)という字を

何度も書いた

破壊と書いた 殺戮(さつりく)と書いた

指先に 血がにじんできた

真っ黒の格子(こうし)

その内側に閉じこめられたわれら

 

ああ しかし

かすかに 

ほんとうにかすかにだけれど

ほら 白い雲がのぞいている

 

 

 

●ご訪問ありがとうございます。
ロシア兵によるウクライナ市民虐殺のニュースが、胸に突き刺さります。テレビでは遺体の姿にフィルターがかけられていますが、ネットニュースでは映っています。見ることが苦しくなる映像です。
しかし、自分に言い聞かせます。「それでも希望をうしなわない」と。

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