顔顔
そのひとの時間が終わろうとしている
ベッドのまわりで顔顔がのぞきこんでいる
夫の建てた家
あと数ヶ月で百歳
食べなくなって飲まなくなって三日
時間がもどることをもうだれも望まない
―やすらかに
―これまでありがとう
―おばあちゃん!
思い思いの顔顔がこんなにも優しくのぞきこんでいる
二枚の枯れ葉
朝の玄関のまえに
枯れ葉が二枚
風が来て これから
次の世界へ行こうとするのだろうか
一枚は半年前に旅立ったひと
一枚は七日前に別れを告げたひと
仲良しだったふたり
いっしょに朝日をあびて
★いつも読んでくださり、ほんとうに有難うございます。