無関心の向こうに
1 公園
朝の公園に外寝(そとね)のひとがいる
かたわらに古ぼけた自転車
石のベンチのうえには赤いナップザック
外寝のひとは背をむけて
樹か鳥をみている
トイレには黄色のテープのバツ印
水道には蛇口(じゃぐち)の栓がない
街に疫病(えきびょう)がはやっているのだ
ぼくは足早に公園をぬけていく
露を吸った青草が靴をぬらす
外寝のひとは
まったくふりむかない
樹か鳥をみている
2 浜辺
猫が浜辺で遊んでいる。
それは いっぴきの仔猫(こねこ)。
ちいさな菓子箱が小さな彼女のおうちです。
猫は浜辺で笛をふいています。
猫は生まれたばかり 目が見えない。
おおきな波が彼女のおうちを欲しがっている。
波打際(なみうちぎわ)には箱のようなものがころがっています。
そして波は―
波はただ無表情に寄せてきます。
3 駅
ドア開いて
能面の群れ
入れ替わる
4 一日
いっしゅんの微笑みと
ずっとのしかめっ面
きょうも
それで一日
たくさんのノーと
ほんのすこしのイエス
きょうも
それで一日
あした
天気に
なあれ
●ご訪問ありがとうございます。
侵略のひろがりは、平和や自由やいのち、そして隣のひとへの無関心によるのでなく、関心をもちながらも、毎日の暮らしに忙殺され、平和や自由やいのち、そして隣のひとへのいたみをつい心の片隅に置いてしまったとき、その黒い羽を広げていくのでしょうか。
だれかに愛をもたらしたいと思うなら、
その人に密接にかかわらなければなりません。
(ヴォルフガング・バーダー編、山本文子訳『マザー・テレサ100の言葉』、女子パウロ会)