テレビ番組を見ていると 「何でも直す街の電気屋さん」とか
「お客様のニーズに何でも応える」印象を与える電気屋さんの話題とか 見かけます。
当店は 家電製品の販売・工事・修理をしています。
「これ、直せるかしら?」と 修理の相談を よく依頼されますが、
最近では 直せない物が増えました。理由は また後日詳しく記述しますが、
今回の話は「通常直せないと判断するのだが 私が無理に直した結果 もやもやしている修理の例」です。
ご年配の上品な女性の方でした。身だしなみが綺麗で笑顔の優しい方。
依頼品は持ち込みで クレイツのヘアーアイロンです。
7年弱位お使いで、電源コードの付け根にひび割れが入り銅線が見えそうです。
お客様は
「くせっ毛なので ヘアアイロンをどうしても使いたいの、他社製品も使ったけどこれが一番使い心地良いの」
「これはね、仮設住宅にいてまだ1年目、物が少なかった時に
娘が お母さんヘアアイロン使いたいでしょ?ってプレゼントしてくれた物なの」
と おっしゃいました。出来れば直したい、無理なら諦めるけど、と・・・。
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クレイツというメーカーとは 当店は取引が無いので 部品は取れません。
送料・代引き料を負担して メーカーから出してもらったとしても そこに工賃を入れたら いくらに?
7年使ったことを考えたら 新品を買った方が安全 安上がりなのでは?
通常なら 残念ながら無理ですと お返しします。
でも私は その時 ちょっとだけお預かりしていいですか?と預かってしまいました。
開けてみて。次にパナソニックのヘアアイロンの展開図を見て。
・・・似てる、かなり似てる。ひょっとしたらいけるかもしれない!と心の中でつぶやき、
パナソニックの電源コードを取り寄せました。
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似てるけど 実際手にしたら 凸凹の形状など違います。当然です。
それをカッターで少しずつ削りました。気長な作業です。割に合う仕事ではありません。
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削り出して やすり掛けて 何とかはまるようになりました。
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こちらにも少し切り欠きを作って・・。
スイッチオン・・・・暖まります。しばらくつけました、サーモも働きます。
・・・・・・なおっちゃった・・・・。
かくして お客様はとてもとても喜んでくれました。
「電源を入れている間は 絶対に離れないで下さい」
「ちょっとでも 熱くなっている 焦げ臭い 音がするなど異常が出たら使わないで下さい」
「あくまで 改造して直した製品だということを忘れないで下さい」
と、お客様に念を押しました。
その後も スーパーなどで顔を合わせる度に 「心地よく使ってますよ」とか
「娘にも直してもらったって言っちゃった」とか 喜んでくれています。
お客様の喜んで下さっている顔は嬉しいものです。
でも私の中で お客様の嬉しいを優先し、改造をしてしまった罪悪感?があります。
安全を最優先させるべきなのに 「使っている間は目を離さない製品」であることを良いことに
情にほだされて お客様にいい顔をしてしまった・・・。
でも お客様はとても喜んでいる。それが一番じゃないか、サービス業だもの。
だけど改造は改造だ・・・!
「お客様のニーズに何でも応える電気屋さん」「どんなに古い物でも直す電気屋さん」だったら
この件はどう思うのだろう?ずっともやもやしております。
以上、嫁の修理記録でした。