まく子
山あいの温泉街で旅館「あかつき館」を営む両親と暮らす、小学5年生のサトシ(山﨑 光)。サトシの母・明美(須藤理彩)は代々続くあかつき館を快活に切り盛りし、父・光一(草彅 剛)は料理長として働いている。人口の少ない町では誰もが顔見知り、クラスメイトも小さい時からずっと一緒で変わらない。小学校の校庭の隅では、いつも風変わりな青年ドノ(村上 純)が声を出して漫画を読んでいる。そんな環境の中、サトシは猛烈な早さで体が大人に変わっていく女子たちを恐ろしく感じ、精神的に成長しない男子たちを冷めた目で見つつ、否応なしに変わっていく自分の体に抵抗感を抱く日々を送っていた。また女に目のないサトシの父・光一が隣町の女性と密会しているところをたまたま目撃してしまい、大人に対しての嫌悪感を募らせていた。初春のある日、従業員用の寮「いろは荘」に母子が越してくる。娘はとびきりの美少女・コズエ(新音)、サトシと同じ11歳だ。コズエも母も無表情で、人との言葉のやりとりにもどこか不自然なところがある。サトシのお気に入りの場所、城跡に立つ大木の根元にコズエが現れ、サトシが落ち葉を拾って投げると、コズエも真似して、落ち葉をすくっては空中に撒(ま)く。そんなつかみどころのないコズエに最初は困惑していたサトシだったが、次第に彼女に魅せられていく。そしてコズエから「私とオカアサンは、ある星から来たの」と“大きな秘密”を打明けられる―。町では子どもたちが作ったおみこしを担いで練り歩き、最後に壊す「サイセ祭り」の日が近づいてきて、みんなソワソワしていた。サイセには再び生まれ変わる“再生”という意味が込められている。お祭り当日、サトシたちが作ったおみこしが壊される寸前にいろは荘から火が出て…。幸いすぐに消火されたが、火事の後、サトシの周りで様々な変化が現れていく。そしてコズエとの別れの日がやって来る。集まってきたサトシや町の子どもたち、大人たちへ、コズエはあるものを撒く——————(C)2019「まく子」製作委員会/西加奈子(福音館書店)