パソコンに使われる電解コンデンサーの区分けでは、使用温度範囲で85℃品・105℃品、寿命で標準品(1000H~2000H)・長寿命品(5000H~6000H)で大雑把に区分けできます。
85℃品は、パソコン基板や電源ユニット基板などではほとんど使われません。コンデンサーの寿命は10℃上がると半分、逆に10℃下がると倍になります。
つまり寿命が1000Hのコンデンサーでも、85℃品と105℃品では、同じ使用温度で比較すると105℃品の方が4倍長いことになります。
では同じ105℃品でも標準品(寿命2000H)と長寿命品(寿命6000H)ではどうなのでしょうか。(どらともでは、電源回路の平滑用コンデンサーは低ESR・長寿命品を使用しています)
2000H(およそ83日)、6000H(およそ250日)と聞くと、ずいぶん寿命が短いと思われますが・・・これは105℃の使用温度での寿命です。
標準品(2000H)の場合、寿命は
105℃・・・2000H(83日)
95℃・・・4000H(167日)
85℃・・・8000H(333日)
75℃・・・16000H(666日)
65℃・・・32000H(1333日・3年半)
55℃・・・64000H(2666日・7年強)
長寿命品(6000H)の場合、寿命は
105℃・・・6000H(250日)
95℃・・・12000H(500日)
85℃・・・24000H(1000日)
75℃・・・48000H(2000日)
65℃・・・96000H(4000日・11年)
55℃・・・192000H(8000日・22年)
ざっとこのようになります。
一日を24Hで計算しています。一日に8時間くらいしか使用しないからもっと寿命が延びると思うかもしれませんが・・・パソコンのマザーボードや電源ユニットには、パソコンの電源がONになっていなくても、コンセントにさしてあれば常時通電している回路部分があるので24Hで考える方が妥当です。
マザーボードの電源回路部分や、電源ユニット内の平滑回路部分に標準品(2000H)の電解コンデンサーを使っているような製品は論外ですが・・・いろいろ修理していると、ほとんどは長寿命品が使われていることが多いです。
長寿命品が使われていれば、使用(周囲)温度が65℃の場合で、11年持つことになりパソコンの他の部品(ハードディスクなど)の寿命を考えると、十分なのですが・・・なぜ3年~5年使っただけでコンデンサーの故障(液漏れ)が発生するのでしょうか?
ここからはどらともの推測なので、間違っているかもしれません。
1.熱設計の問題
前述のようにコンデンサーの寿命は、使用(周囲)温度に大きく影響されます。熱くなる放熱板の近くにたくさんの電解コンデンサーを配置したり、放熱効果が十分でない場合に、液漏れを起こしているコンデンサーが多く見られます。
長寿命品を使用しても、周囲温度が75℃の場合は、寿命は5年半になります。
2.回路設計の問題
マザーボードや電源ユニット内の電源部はスイッチング電源・回路となっており平滑用電解コンデンサーには、高周波でスイッチングされるので、容量や耐圧に十分余裕がないと寿命が短くなる場合が多くなります。
3.電解コンデンサー自体の信頼性
今まで見てきた液漏れ電解コンデンサーは、99%海外メーカー製のものです。仕様書をみると、長寿命品(5000~6000H)となっているのですが、実際にそれだけの寿命を保証できているのか疑問になってしまいます。
Win95やWin98の、まだとっても高価だったパソコンには、国産の部品が使われていましたので、いまでも電解コンデンサーの液漏れが少ないです。ただハードスペック的にもう使用不可能ですが・・・
パソコンのマザーボードや、周辺機器に「日本製コンデンサー使用」を売り文句にしているものも多く見られるようになっており、製造メーカーも海外メーカー製の電解コンデンサーの信頼性について疑問を持ち始めているようです。
どらともで修理を行う場合は、1.の熱設計の変更は不可能なのですが・・・2.3.については、同形状・同容量であれば耐圧が大きく、低ESRの長寿命品の日本メーカー製の電解コンデンサーに交換することで対応しております。
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