えみくり情報

日常と日記
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償いの雪が降る

2019-08-22 | 読書
「償いの雪が降る」
母子家庭で育ったジョーは実家を出て念願の大学進学を果たす。授業で身近な年長者の伝記を書くことになり、祖父母も父親もいないため介護施設を訪れたところ、末期がん患者のカールを紹介される。カールは三十数年前に少女暴行殺人で有罪となった男で、病気のため仮釈放され、施設で最後の時を過ごしていた。カールは臨終の供述をしたいとジョーのインタビューに応じる。話を聴き、裁判記録を読むうちにジョーは事件に疑問を抱くようになり、真相を探り始めるが……。


一気読みしてしまった。やたら評判の良いミステリー。評判どおりです。

ええもん読んだわーーー


読み出したらやめられませんでした。
すっきりとした文章。
まとまっていてだらだらせずキレイに収束へ向かうのがよかった。姑息な誘導や引き伸ばしのない、どの章も絶対に必要だけど過剰ではないシンプルな筋立て。
美しくて悲しくて、けど読後感のいいこと。タイトルが最後ずしんと来る。
The Life We Bury

主人公のジョーがめちゃくちゃいい。とにかく好きにならずにはいられない大学生。
とても普通。スーパーマンでもやれやれなろう系でもない、とにかくただ普通なんだけど、凡庸なんだけど、考え無しなところもあるんだけど、でも優しくて弟思いで、そして一対一なら、なんとか勝てるくらいには強い。そしてとんでもない危機を創意工夫で何とかそこそこ乗り切る。そこそこ。そこ大事。
弟も、隣人の女の子もいい。
なんといっても余命いくばくもない仮釈放中の暴行殺人犯のカールのキャラクターが切なくて素晴らしい。
憎たらしい奴はとことん憎たらしい、とくに母親…

推理小説としては、すぐに「あ、こいつ怪しい」ってわかるようになってる。つまりはそこはたいした問題ではないのです。
出てくる人物の埋められていた過去が少しずつ少しずつ浄化されていく、そこが多分作者の描きたかったことなんでしょう。
最後の最後、「あーー、よかった」ってなる。
心配がいくつか消えます。清清しいです。夢中で疾走して走りきった後少しずつスピードが落ちていく気持ちよさが残ります。

脇役である刑事や大学教授など、描写は少ないんだけどやたら魅力的だ、と思ってたら彼らを主役にしたスピンオフ的な続編が枝分かれのように続いているそうです。
訳されるのを楽しみにしてます。
次でたら必ず買います。
アレン・エスケンス。これデビュー作なの?すごい。

訳もいいです。務台夏子さんの読みやすくて硬派な文体が、感傷的にならないぎりぎりのところ保っていて、それがまた素晴らしくてしみじみ泣きたくなります。
この方も好きな翻訳家さんです。
後書きもいい。主人公の彼を「応援したい主人公ナンバー1」とか書いててどこがいいか楽しく丁寧に解説されていて、あー語彙の豊富さ的確さ、尊敬します。追いかけます。ジョーとジェレミーの続きが知りたい。




別マガ 進撃の巨人最新119話 ネタバレと絶対間違ってる考察

2019-07-10 | 読書

ネタバレあるので知りたくない人は読まないでください 





ものすごいショックなんですが。エレンの頭部吹っ飛び、死んでないと思いたい。

で、

 エレンは戦槌の巨人の能力使って、人間型エレンを作っておいて、ジークの前でわざとガビに頭打たせたんじゃないかな



つまりジークに「弟が死んだ」とエレンは思わせたいのです

もしエレンが死んだなら、始祖も次のどこかの赤ちゃんに飛んでいく。どこに出るかわからない能力。貴重すぎるくらい貴重な。

だから島の中もマーレも、いや世界中がエレンを殺せないわけです。始祖は「鍵」ですからね。鍵を失うわけにはいきません。それさえあれば全ての巨人を使えるわけです。

うまい使い方さえすれば。みんなその力を使いたい。エレンと王家の人間ひとりいればそれが適う。


エレンが死んでしまって始祖なくすとジークの望む「エルディア人全員去勢もしくは安楽死で緩やかな滅亡へ」は出来なくなる

エレンはジークの計画なんか絶対いやだと思うんですよね。
ジークのそれはそれこそ家畜や奴隷作りみたいなものでしょ。ただぼーっと死ぬのを待つだけのお人形にしたいと言われているんですよ。未来なんていらないと。
その野望をうまくぶっつぶすためには自分が死んだとジークに思わせたい

 

ガビという子の性格とか気性とかエレンはわかってたと思います
「始祖持つエレンは殺してはならない。殺したら一族郎党死刑」
というマーレの掟もピークにちゃんと説明されてて
それでも尚且つエレンを殺そうとするのはこのガビだけってわかってたと思うのです

だから「サシャを殺したそいつも連れて来い」とガビをわざわざ決戦地につれてったんだと思うがどうかな


ホンモノのエレンは地中にいるとかで。
戦槌は遠隔操作できますよね。
盾や矛を作り出して自在に使えるわけだから、人形も作り出して自在に使えるように訓練したかもしれない。
で、エレンそっくりな人形を動かしてたのです


…酷い予想かしら。絶対間違ってると思うのでそのときは笑うことにします。



あとファルコが鎧ではなく顎を継承したのは、アニの結晶砕くフラグかなーと思っています。
ジークの「ライナーを食え」という命令聞かなかったのは何故かな。
きっとファルコが人間の時ジークに一度裏切られているからかもな、と思いました。
思念の多少は残るような気がします。


ライナーやっぱり死によれへんかったわ。
寿命全うすんじゃね、もう。



へーちょはどうなったんだろう…

進撃の巨人はやっぱりワーグナーが似合う

2019-07-04 | 読書
去年の↑
昔こういうことを書いたんだけど、昨日のBSの深読み読書会「進撃の巨人」でもワーグナーが使われまくっていて、みんな考えることは一緒ね、となりました。
まあ北欧神話モチーフになってるし、そうなればやはりワーグナー連想しますよね。
進撃読むときワーグナー流したりするとすごくぞくぞくしていいですよ
盛り上がりと寂しさとキチガイさがなんとなくマッチしたりする面白さ

鹿島茂さんの哲学と歴史的考察面白かった。

誰が味方で誰が敵か。誰が裏切ってるのか、裏切ってないのか。誰一人信用できない
話すことすることの真意を読み手がチョイスしなきゃならない。ラストに向かってますます面白いです。進撃の巨人。

神々の黄昏。
この物語もたそがれですね。最終予想、ワーグナーここでも効いてたわ。

私はジークの安楽死計画もそれはそれでひとつの考えだと思うけど、ヒストリアの子供という存在がそれを全否定してるような気もするし、まったく予想が付きません。ひとつ言えるのはこの作品をリアルで読めてよかったです。ちょっと世代がずれていたら私の年齢では難しかっただろうから。






そして確かにライナー死にそうで死なないねえ。引継ぎどころかこうなったら寿命まっとうしたりしてね、と思います

ブログと昔の少女漫画

2019-07-01 | 読書
ツイッターは楽しいです。少ない文字でいろいろ気の効いたことを言える人ってすごいなあとも思います。
私も去年から始めていて、シューくん描けたりしたらしゅっと投稿してタイムライン追うのですが、最近クラシカロイドのこと書いてくれる人が減ってしまったので切ない。飢えてるの。放映終わって一年以上たちますからね。あちらは「今」がみんなの遊び場です。

ブログも好きです。いっぱい文章読めるし、ダイエット記録とか映画や本の感想とか読むのも好きだし、日常やお仕事日記とかもすきなんです。イラストとかも楽しい。
すたれてほしくないなあ。
過去のも消さないでみなさん残しておいてねって思います。

好きなブロガーさんは何人かいて、フォローしてるのでときどき読みに行きます。
とある方が自分のごほうびに、と買っていた漫画が懐かしい、私も好きな漫画だったりして嬉しかったりします
昔の少女漫画大好きです。とくに24年組世代のあの独特の世界は何物にも替えがたい。いろいろと制約のある中あれだけのものをよく生み出してくださったものだと思います

新吾×摩利でした。リバ認めない。
40年前の漫画で主張するのもなんですが、リバは認めません。

摩利くんが新吾に切ない片思いしている頃が一番楽しかったなあ。この二人はフィジカルでは結ばれるべきではなかったのでは、とちょっと思っています。ただ心が繋がってる、だけでよかったかも。
えと、私は摩利くんが受だと信じています受希望の子の片思いが好きなのね私。(シューくんとか厩戸皇子とか)それと夢殿さんのことはやっぱりどこかまだ許してないみたいです私。へへっ😥 

可愛いエミリー

2019-06-10 | 読書
本棚の整理をしていて久しぶりにモンゴメリのエミリーシリーズを読みたくなって手に取ったんだけど
それはそれは古い本なので黄ばみを通り越してまっ茶色になっていて、衰えた目にしんどく読みにくいの何の


小学生の頃に買った本だからなあ
好きな本はそのとき持っていたお気に入りの紙でカバーかけて背文字も見えるように穴をあけてセロテープで窓を作ったりしていました。

新装判を買いなおしまた一から読みすすめました




ひりひりするようなエミリーの文学的野心や頭の良さ、融通の効かない性格、行く先々で敵が出来てしまうへたくそな生き方とそれに負けない精神の不思議な気高さ
辛辣な観察眼と描写力そして
「いわゆる美人ではないけれど、睫毛と甲高な足にかかと、尖った耳の妖精っぽい魅力」
今でも変わらず夢中で読めます

とにかく何かを書かないでは生きている意味がない、と思うエミリー。
内面をこれでもかと描写され辛辣さとかたくなさがしんどいです。わりと真面目に選民意識高いし。
正直あまり好きにはなれない主人公です。
ていうかこのシリーズ出てくる人がみんなあまり好きになれない。
私はエミリーも親友イルゼもテディもペリーもジャーバックも伯母さんたちもカーペンター先生もみんな全然好きになれません。みんなすごく自分勝手です。
でも好きな小説なのです。


久しぶりに読んでちょっとだけ印象が変わったのが、エミリーの求婚者のひとり
子供の頃身の毛がよだつほど気持ち悪いと思ったディーン・プーリストこと、ジャーバック

昔読んでた時はただひたすら嫌悪感しかありませんでした。
14のまだ幼いエミリーに40前のおっさんが「育ってきた。育って来た」と思いながら、キスしたくなるような唇だ、とか首筋のラインがいいとか思うところとか
その「恋愛小説の書き方がわからない」という作家志望の少女に
「僕が教えるよ。高校へ行っても僕以外に教えてもらおうとしてはいけない」
としたり顔で言ったりするところとか

ぎょえーーー
「君の命を助けたのが僕だということを忘れてはいけない、君は僕のものだよ」
なんてことを言ってしまうの。ロマンチックどころかあつかましい気持ち悪い
こういうのは圧倒的魅力がある人がちゃんとその影響を与えているとわかっている相手以外に言っていい台詞ではありません。


エミリーが憤然と「私の命は私のものだし」と心理的抵抗を感じるところリアルです。
のちにディーンがそういう対象として自分を見てることに気付いてからはエミリーの惧れと葛藤がとても怖く感じます。
そしてのちのち弱ったエミリーがそれにすがろうとしてしまうところもリアルで怖い

ディーンはエミリーの父親と高校の同級生。
なのに娘を見る目ではなく最初の出会い、12のときから女としてみてるのですがその描写がいちいち気持ち悪い

ここまで書いたが、ディーン・フジオカなら許されるかもしれん。いやあかんて。やっぱし



子供の頃は「まー結局エミリーはテディが好きだし」
「それにディーンが小さいとか足が悪いとか背中にコブがあるからって嫌ってはいけない」
って妙な真面目さでその薄ら怖さから必死で目を背けてたのですがそう思わないと耐え切れなかったのです

頭もいいしお金持ちだし、だけど「自分より高みにいっちゃうと僕の手に入らなくなる」
からって若いエミリーの作家としての才能をこっそりうまく言いくるめて捨てさせようとするところが一番酷い。
弱ってるところに付け込んで結婚申し込むところも怖くて仕方がない
それは昔も今も同じ感想です

ですが今回十数年ぶりに再読して、ていうかもう何十回も読んだものなのに、今回初めてディーンが可哀想で愛おしくて、特に最終章は泣いてしまいました

若く才能もあり未来もあるエミリーの残酷なこと。そしてディーンの優しさ弱さ、諦めと情けなさ。
しかしその残酷さに対する哀れさを私自身も年を取ったので、わかってしまえるんですね。



すごくよくできた三部作だと思います


それにしてもエミリーの相手のテディは今も昔もほんっとーーーにマジクソ嫌いだわ。
マザコンで優柔不断な優男。超絶美男子という設定も嫌い。結局顔か!!って言わせたいのかい。
そしてテディを支配する母親は最初から最後まで恐怖の存在でしかありません。可哀想だけどずるくて弱くてああああ耐え難いわ
ほんと嫌なキャラばかりよ。
アンは優しいいい友達もいっぱいいて、学校生活の描写も楽しかったけど
エミリーはその高すぎる自尊心と選民意識で友達とか全然作らないで周り敵ばっかりだからどこにいてももめたりいじめられたりスキャンダルに巻き込まれたりでほんと辛い。

でも面白いのよ。



赤い靴 大山淳子さん素晴らしいです

2019-05-16 | 読書


「あずかりやさん」や「猫弁」の大山淳子さんの「赤い靴」

これほんとに大山さんの作品なの?ってなんども読んでる最中思いました


素晴らしかった。
北軽井沢の別荘地
幼いが賢い子供の自意識

目の前でふわふわとした母親と、生活面での母親みたいな人を惨殺された七歳の少女が、山の中で謎の人物に助けられ最終的に復讐を遂げる話なんだけど
いわゆる復讐モノの後味の悪さより、それぞれの人物の生い立ちの凄まじさや悲しさや、そしてとてつもない愛に慰められる読後感なのです

大山さんの描く優しく善意ある勤勉な人の美しさって言ったらないです
愛媛のあのお母さんのストローが上手く使えないところや
異形の息子やそれに連なるものへの静かな愛が圧倒的です
ストローはあるところでもちょっと印象的な小物として使われています

山の中のサバイバル描写と葵ちゃんが情緒面以外はどんどん成長していくさまがとても楽しい。
その欠落の理由もちゃんと描かれています。中二なようでいて中二ではないのですね。意味なくやれやれ、かっこいい感情欠落、みたいなキャラはいません。


ラストの後味のよさ。あーー大山さん節です!!



もともと冷静な主人公葵が自分を失い、取り戻し、またなくし、そして取り戻す過程の丁寧なこと


大山さんは日常の謎などを丁寧に描かれる作家だと思っていたので、今回ものすごくびっくりしました
かなり血なまぐさくて怖い描写があるからです
けれどそれらも全て最後のカタルシスに繋がるんです

園美ちゃんという女の子もとてもいい。えくぼが効きますね。それも対比なんですよね。うまいなあ

クズはどクズですが、ちゃんとクズとして描かれていて、
もちろんよくある「彼にも又そうなる理由があったのだ」もありますが、読者が許さなくていいように描かれているので嫌な気持ちにはなりません。

「復讐は何も生み出さない、復讐なんて殺されたあの人は君に望んでない」
なんて復讐モノにありがちなこと言い出すお花畑の馬鹿はいませんし、その私の嫌いな、だけどしたり顔で示される正論らしきものもちゃんとうまく処理されていて安心します


映像化されるとしたら、葵役はGOTの少女期のアリアクラス連れてこないとダメだろーなーと思いますがどうなんでしょう。
とにかく面白い話が読めて満足です。
読み終えて、途中飲むの忘れてしまうくらい没頭した結果冷めたコーヒー飲み干しながらほっと息をつきました。
面白かったし読んでよかった。