ラパロスコピストの夢

大阪梅田で子宮内膜症と闘うラパロスコピストのblog
子宮内膜症、子宮筋腫に対する腹腔鏡下手術はどこまで進歩するのか?

はじめにお読みください

健保連大阪中央病院に勤務するラパロスコピスト(腹腔鏡術者)のブログです。婦人科腹腔鏡下手術、子宮内膜症、慢性骨盤痛等の治療を専門としています。

このブログでは腹腔鏡下手術、子宮内膜症、子宮筋腫に関する基本的な事柄については解説していません。まず、下記のウェブサイトをご覧になることをお勧めします。
日本子宮内膜症協会
子宮筋腫・内膜症体験者の会 たんぽぽ

手術を希望される方はこちらをご覧ください。

医療相談、ご質問にはお答えしませんのでご了承ください。

おすすめの本はこちら?ブックス・ラパロスコピスト

子宮筋腫核出術への私のこだわり2  - 子宮筋腫の中心に向かって切開 -

2025-02-11 | ご挨拶
子宮筋腫核出術では、子宮壁を切開して子宮筋腫を核出する必要があります。子宮は血流豊富な臓器であるため、切開時には出血が多くなる可能性があります。そこで、私は以下の点に注意して子宮壁の切開を行っています。

事前準備
まず、腹腔内所見を確認します。子宮筋腫がある位置、子宮の硬さ、大きさなど、術前のMRI画像でのイメージとの違いを把握してから手術を開始します。そして、子宮筋層に100倍希釈したバソプレシンを局注します。これは、血管を収縮させる薬剤で、出血を抑制する効果があります。

超音波凝固切開装置
切開には、超音波凝固切開装置(ハーモニックスカルペル)を使用します。電気メスでも切開は可能ですが、ハーモニックスカルペルの方が、子宮への熱損傷が少なく、出血も少ないため、より安全な手術操作を行うことができます。しかし、ハーモニックスカルペルは、適切に子宮に当てないと上手く切開することができません。

横切開
かつて私が開腹手術での子宮筋腫核出術を習ったころは、子宮を縦に切開するのが普通でした。しかし、子宮の血管走行を考えてみると、子宮動脈上行枝は,子宮体の側縁を上行しながら十数本の弓状動脈を子宮筋層に分枝しています。つまり左右の子宮動脈から横方向に血管が走行しているので、子宮切開時・核出時の出血は横切開のほうが少ないだろうと考えられています。現在では、縦切開・横切開どちらがよいのかは議論があるところではっきりとは確定していません。私は、術中出血量が少なくなること、そして、修復が確実に行える点から横切開での筋腫核出を行っています。(ちなみに師匠のDr.Kohも横切開)

まっすぐ切開する
子宮筋腫を最小限の切開で核出できるように、できるだけ傷がギザギザにならないように、まっすぐに切開することが重要です。しかし、これは意外と難しい技術です。なぜなら、私たちは3次元構造の丸い子宮を、平面に見えるモニターテレビで見ながら手術しているからです。そのため、空間認識能力はもちろんのこと、触覚や位置覚で子宮の形を感じ取りながら、切開を行う必要があります。まさに、腹腔鏡下手術は体で感じ取る手術だと言えるでしょう。

子宮筋腫の中心に向かって子宮壁を切開する
子宮壁を斜めに切り込んでしまうと、切開が長くなり、核出しにくくなるだけでなく、切開面が広くなるため出血が多くなり、縫合も難しく、時間がかかってしまいます。
子宮筋腫の中心に向かって切開することは、手術の効率と安全性を高める上で非常に重要な技術です。


子宮頸部筋腫の子宮筋層を横切開しているところ

当たり前のことを当たり前に
手術を見学に来た医師は、私が簡単そうにやっているので、自分もやってみたいと思うようです。しかし、実際には、子宮を切開するだけでも、これだけのこだわりポイントをクリアしないといけないことに気づいていないかもしれません。

当たり前のことを、当たり前にやる。

それが、実は一番難しいことなのです。
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子宮筋腫核出術への私のこだわり1  - 傷を小さく、身体にやさしい手術 -

2025-02-10 | 腹腔鏡
子宮筋腫核出術は、子宮から子宮筋腫を取り除いて子宮を温存する手術です。大きく分けて以下の3つの方法があります。
  1. 腹式子宮筋腫核出術: お腹を10~15cm程度切開して手術を行う方法。
  2. 腹腔鏡補助下子宮筋腫核出術(LAM): 腹腔鏡で手術操作を行い、4~5cm程度の小さな切開を追加して筋腫を取り出す方法。
  3. 腹腔鏡下子宮筋腫核出術(LM): お腹に小さな穴をいくつか開け、腹腔鏡を使ってすべての操作を行う方法。
この中で、私はほとんどの場合、LM(腹腔鏡下子宮筋腫核出術)を選択しています。

なぜLMを選ぶのか?
LMには、以下のようなメリットがあります。
  • 傷が小さい: お腹の傷が小さいため、術後の痛みが少なく、傷跡も目立ちにくい。
  • 身体にやさしい: 腸などへの負担が少なく、術後の癒着が少ない。
  • 出血が少ない: 適切な症例選択と技術により、出血量を抑えることができる。
もちろん、LMは技術的に難しい手術であり、熟練した医師の経験が必要です。

LAMは開腹手術?
個人的な考えですが、私はLAM(腹腔鏡補助下子宮筋腫核出術)は、基本的に開腹手術に近いと考えています。LAMは、腹腔鏡を使いますが、最終的にはお腹を4~5cm程度切開するため、傷の大きさや術後の癒着のリスクは、開腹手術とあまり変わらない可能性があります。

豊富な経験
私は、2000例以上のLMの経験があります。LMの症例数だけでも日本ではトップクラスでしょう。子宮筋腫核出術を行うのであれば、可能な限りLMで手術を行い、患者さんの負担を軽減したいと考えています。

トロッカーの配置
LMを行う際、私は下図のようにお腹に4つの小さな穴を開けて、そこから手術器具を挿入します。この配置は、子宮筋腫を横切開で行うために最適な配置だと考えています。
最後に
大きな子宮筋腫や多発子宮筋腫に対する子宮筋腫核出術は、患者さんにとって大きな負担となる手術です。だからこそ、私は傷を小さく、身体にやさしいLMという方法にこだわっています。適切に行えば、開腹手術やLAMよりも質の高い手術が可能です。これからも、患者さんのQOL(Quality of Life:生活の質)を向上させるために、最善の手術を追求していきます。


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生殖器と「私」の役割2 ー子宮筋腫が問いかけていることー

2025-02-09 | 大阪日記
子宮筋腫は、子宮の中に筋肉のコブができる病気です。
症状としては、月経過多、貧血、腹痛、頻尿などが挙げられます。筋腫が大きくなるまで無症状で巨大子宮筋腫になっているのに気づいて来院される方もいらっしゃいます。子宮筋腫の多くは経過観察することが可能なものもありますが、子宮筋腫核出術や子宮全摘術が必要になる場合も少なくありません。

腹腔鏡下子宮筋腫核出術は筋腫の核出・子宮の縫合・筋腫の細切除去の全ての操作を腹腔鏡下で行う術式であり、その難易度の高さゆえ、現在でも子宮全摘術ほどは普及していないようです。(小切開を併用して行う腹腔鏡補助下子宮筋腫核出術は基本的に開腹手術であり、腹腔鏡下子宮筋腫核出術とは根本的に異なります。)

子宮筋腫核出術を選択した場合は、術中出血量の増加や再発・術後癒着の問題があり、手術のタイミングや妊娠のタイミングを慎重に検討する必要があります。そのため、患者さんの人生設計に大きな影響を与える可能性があります。

子宮全摘術は文字通り、子宮を摘出する手術です。子宮が無くなるので手術後は妊娠することはできません。また、月経は無くなります。しかし、卵巣を温存した場合には、女性ホルモンは術前と同様分泌されるので、体調に変化をきたすことはあまりありません。また、腟は温存できますのでパートナーとの性交渉は可能です。そして、最近はその多くを腹腔鏡下手術で行うことができます。

患者さんの中には、子宮筋腫と診断されたことで、キャリアプランやライフプランの見直しを迫られる方もいらっしゃいます。
「手術を受けたら、仕事はどうなるのだろうか…」
「子どもを持つことはできるのだろうか…」
「自分の身体と、これからの人生をどう両立させていけばいいのだろうか…」

子宮筋腫も子宮内膜症と同様、患者さんの人生における優先順位を問い直し、自分自身の役割について深く考えさせるきっかけとなる病気です。

子宮筋腫は、患者さんの人生観や価値観を揺るがし、自分自身の役割について改めて考えさせるきっかけとなる病気だと思います。しかし、病気と向き合う中で、新たな価値観や人生観を見出すことができるかもしれません。病気は、決してマイナスなことばかりではありません。病気を通して得られる経験や学びは、私たちの人生をより豊かにしてくれるはずです。

あなたは、これからどのような人生を選びますか? 
あなたは、自分の子どもを産むことにどこまでこだわりますか? 
あなたは、自分の役割をどのようにして果たしていきますか? 
子宮筋腫はそう問いかけているのではないかと、私には思えるのです。
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生殖器と「私」の役割

2025-02-08 | 大阪日記
2月末に日本慢性疼痛学会があり、カイロプラクターの山口純子先生の発表のお手伝いをしています。
彼女は言います。「生殖器は『その人の役割』の象徴」だと。

この言葉、皆さん、どのように感じられますか?
私は婦人科医として、日々多くの患者さんと接する中で、山口先生の言葉に深く共感することがあります。子宮筋腫や子宮内膜症など婦人科の病気は、時に患者さんの人生・仕事やキャリア・パートナーシップに大きな影響を与えることがあります。それは、時に「あなたはこれからどう生きるのか」と問いかけているようにも思えます。今回は、婦人科の病気を通して、私たちがどのように自分自身の役割を見つめ直し、人生を豊かにしていくことができるのか、考えてみたいと思います。

子宮内膜症と向き合う
子宮内膜症は、子宮内膜に似た組織が子宮以外の場所で増殖してしまう病気です。進行すると、月経痛や慢性骨盤痛・性交痛、不妊症などの原因となることがあります。子宮内膜症は再発しやすい病気であり、妊孕性(妊娠する力)にも影響を与える可能性があります。子宮内膜症の治療は薬物治療や手術がありますが、薬物治療はホルモン療法が主体であり、基本的には治療中は妊娠することは難しいです。また、子宮と卵巣を残す保存手術では、再発率は高く、重症子宮内膜症では自然妊娠が難しいことが少なくありません。

私は患者さんには、薬物治療によって子宮内膜症の進行を止めておくか、手術の後は積極的に妊活や不妊治療をしていくようにお勧めすることが多いです。また、時には根治的な手術の選択肢を提示することもあります。そのため、漠然と夫婦生活を送り、いずれ子どもができたら…という人生設計が難しくなることが多いです。

患者さんの中には、子宮内膜症と診断されたことで、将来に対する不安や焦りを感じ、自分自身の役割について深く考える方も少なくありません。
「子どもを産めないかもしれない…」
「パートナーとの関係はどうなるのだろうか…」
「仕事との両立はできるのだろうか…」

子宮内膜症は、患者さんの人生観や価値観を揺るがし、自分自身の役割について改めて考えさせるきっかけとなる病気です。さらに、子宮内膜症による月経困難症や慢性骨盤痛は、体が、その人自身に何らかのシグナルを(痛みとして)伝えようとしているようにも思えることがあります。

「あなたは母親になる人生を選びますか?それとも、仕事で社会に貢献していく人生を選びますか?どちらも選びたいのであれば、どのようなキャリアプランを描きますか?」

子宮内膜症とそれによる疼痛は、私たちが自分自身と向き合い、より良い生き方を選択するためのメッセージなのかもしれません。

婦人科医としての役割
子宮内膜症の患者さんに、病状を説明し、治療を提案するとき、私はただ単に「手術をして治す」で終わることはあまり多くありません。むしろ、「これからの人生をどのように生きるのか」という話になることが多いです。もちろん、直接的にそのような話題を振るのではなく、治療の選択肢をお話しているうちに、そのような話になるのです。患者さん自身の言葉で、将来への希望や不安、そして自分自身の役割について語っていただく。そして、その思いに寄り添いながら、最善の治療法を一緒に考えていく。それが、婦人科医としての私たちの役割だと考えています。

病気を通して得られるもの
子宮内膜症は、確かに辛い病気です。しかし、病気と向き合う中で、自分自身の人生や役割について深く考える機会が得られることもあります。そして、その経験を通して、新たな価値観や人生観を見出すことができるかもしれません。病気は、私たちにとって、決してマイナスなことばかりではありません。病気を通して得られる経験や学びは、私たちの人生をより豊かにしてくれるはずです。
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不安と向き合う

2025-02-01 | 大阪日記
先日、セカンドオピニオン外来に40代の女性がいらっしゃいました。

数年前に円錐切除術を受けられたそうですが、術後に大出血や子宮頸管狭窄といった合併症に悩まされ、最近では月経痛の悪化や経血量の増加もみられるとのこと。主治医の先生からは子宮摘出を提案されたそうですが、ご本人はお子さんはいらっしゃるものの、手術をすることに抵抗を感じていらっしゃるようでした。

これまでの治療経過を詳しく伺う中で、患者さんの複雑な感情が垣間見えます。通常であればお話しをお聞きした後に治療の選択肢を提示するのですが、今回はこれまでの経過をどのように感じておられるのか尋ねてみました。

しかし、ご自分の気持ちを言葉にしていただくのは容易ではありません。私のほうから尋ねてみました。

「術後の経過が思ったより芳しくなかったことに対して、トラウマを感じてる?」 
「『腹立たしい、くやしい』とも少し違いますよね?」 
「置いとけるものなら置いときたい、ご自身の体に対する漠然とした不安なのかな?」

さまざまな言葉で患者さんの気持ちを表現しようと試みましたが、なかなかうまくいきません。それでも、「再発したら怖い」ということだけは明確に言語化できました。その対話を通して、患者さんの気持ちを完全に理解することはできなくても、共感し寄り添うことできていたと思います。

そこで、私は治療の選択肢を提示しました。
  • 腹腔鏡下子宮全摘術
  • 薬物療法(レルミナ、リュープロレリン、ジエノゲスト、低用量ピルなどで経血量を減少させてしばらく経過観察する)
最終的な決断は患者さん自身に委ねましたが、彼女の表情がたいへん明るくなったのが分かりました。

患者さんの不安を完全に払拭できたとは思いませんが、今回は、その気持ちに寄り添い、共有できたのではないかと思います。この出会いから、私はまた一つ学ぶことができました。
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─ Kohカップ、RUMI2システム ─ TLHへの私のこだわり12

2025-01-31 | 腹腔鏡
TLH(腹腔鏡下子宮全摘術)のこだわりのラストは、Kohカップ、RUMI2システムです。

Kohカップ、RUMI2システムとは?
Kohカップ、RUMI2システムは、子宮頸部に装着するカップ状の医療機器です。TLHにおいて、腟切開時の安全性と精度を向上させるために、私の師匠であるCharles H. Koh先生が開発したデバイスです。なのでKohカップと呼ばれてます。

Kohカップ、RUMI2システムの利点
Kohカップ、RUMI2システムを使用することで、以下のような利点があります。
  • 安全な腟切開: 子宮頸部にカップを装着することで、腟切開の際に尿管を損傷するリスクを低減することができます。
  • 尿管との距離の確保: 腟円蓋部を押し上げることで、尿管との距離を確保し、尿管損傷のリスクをさらに低減することができます。
  • 腟長の維持: 腟が長くなるため、仙骨子宮靭帯を切断する必要がなくなり、術後の腟長を維持することができます。
  • 骨盤サポートの維持: 仙骨子宮靭帯を切断しないことで、骨盤のサポートを維持し、術後の腟脱などのリスクを低減することができます。
子宮内膜症の場合
子宮内膜症に対するTLHの場合は、ダグラス窩の硬結を切除するために、仙骨子宮靭帯を切除する必要がある場合があります。その場合でも、Kohカップ、RUMI2システムを使用することで、腟切開時の安全性と精度を向上させることができます。

私は、多くのTLHにおいて、Kohカップ、RUMI2システムを使用してきました。これは、手術の安全性を向上させるだけではなく、患者さんのQOLを改善するデバイスでもあります。

TLHのこだわりについて、12回にわたって解説してきました。(本当はまだまだこだわりはあります)『こだわりという言葉は好きではない』と言いながら、こんなに書き込んでしまいましたが…😅

次回から子宮筋腫核出術・子宮内膜症の手術・卵巣嚢腫核出術・卵管摘出術などなど『こだわり』は続きます。これからも、より良い医療を提供できるよう、『こだわり』を続けないと、ですね😊
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─ 超音波凝固切開装置 ─ TLHへの私のこだわり11

2025-01-30 | 腹腔鏡

TLH(腹腔鏡下子宮全摘術)を行う上で、欠かせない「相棒」がいます。それは、超音波凝固切開装置、Harmonic 1100です。

Harmonic 1100とは?

Harmonic 1100は、超音波の振動を利用して、組織の切開と凝固を同時に行うことができる医療機器です。従来の電気メスと比べて、周囲組織への熱損傷や出血が少ないため、より安全で精密な手術操作が可能となります。

TLHにおいて、Harmonic 1100を使用することで、以下のようなメリットがあります。

  • スムーズな切開と剥離: 超音波振動により、組織をスムーズに切開・剥離することができます。
  • 出血の抑制: 優れた凝固能力により、出血を最小限に抑えることができます。
  • 解剖学的構造の把握: 出血が少ないため、術野がクリアに保たれ、解剖学的構造を正確に把握することができます。

Harmonic 1100を使いこなすコツは、「自分が手術をするのではなく、道具に仕事をしてもらう」という意識を持つことです。私は、難易度の低い手術から高難度症例まで、あらゆるTLHにおいてHarmonic 1100を使用しています。特に、損傷したくない臓器や血管が近くにある場合でも、Harmonic 1100であれば、精密な切開を行うことができます。


私は、4000例以上のTLHでHarmonic 1100を使用してきました。ジョンソン・エンド・ジョンソン社がHarmonic Scapelを発売してから30年近くになりますが、初期のモデルからずっと使い続けています。(たぶん、日本では私だけ?)何度もバージョンアップを重ねて現在のモデルになっています。世界中の外科医が使用しつづけた智恵がこのデバイスには詰まっています。電気メスのように、患者さんの体に高熱を伝えないため、身体に優しい手術ができるのも魅力です。

Harmonic 1100は、TLHに欠かせない私の「相棒」です。これからも、Harmonic 1100とともに、患者さんに安全で安心な医療を提供できるよう努力を続けていきます。


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─ 腟断端縫合:しっかり剥離する ─ TLHへの私のこだわり10

2025-01-27 | 腹腔鏡
腟断端縫合のこだわり、最後のポイントは「膀胱をしっかりと剥離しておく」ということです。

どんなに運針の技術を磨いても、そもそも縫うところが十分に剥離できていなければ、適切な縫合はできません。そこで、子宮頸部・腟と膀胱の間を十分に剥離しておくことが重要になります。これは、TLHの序盤における重要な手術手技です。

子宮を摘出して、いざ縫合という段階になってから「あ、縫うところがない!」と慌てて剥離操作をするのは、容易ではありません。ですから、手術は逆算して考えながら進めていくことが重要なのです。



全てを「ちゃんと」やる
2層で縫合する、左手の使い方、Two-stage pass、膀胱の剥離など、腟断端縫合を完璧に行うためには、一つだけのポイントに注意すれば良いというわけではありません。
切開剥離と縫合結紮、すべてを「ちゃんと」やることで、術後腟壁離開のリスクを数千分の1にまで減らすことができます。

これで、一般的な腟壁離開のリスク1/100~1/300を、1/10以下にしてしまうのですから、すごいことだと思います。

術後のQOL
術後に安心して性交渉ができたり、腹圧をかけたりできることは、患者さんのQOLにとって非常に重要です。TLHによって無くなるものは、子宮と月経と痛みだけであってほしい。私は、そう願っています。

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手術室の不安と安心

2025-01-25 | 大阪日記
手術を受ける患者さんは、誰しも不安を抱えているものだと思います。

ある患者さんには、手術室に入室したとき、私が座っているのを見て安心したと言われました。「私が手術室に入った時、先生座ってたやろ、それ見て、すごく安心した。😮‍💨リラックスしてはるから、自信あるんやなと思った。」なるほど、患者さんはそんなふうに感じているんですね。(はい、自信あります😎)

また、別の患者さんは、手術室に大変緊張した様子で入室されました。横になっていただいた後、私と目があったのでニッコリ微笑んだところ、緊張の糸が切れたのか、泣き出してしまったことがありました。😭その時は、「何か悪いことをしてしまったかな」と少し反省しましたが、その方も安心してくれていたのかもしれません。(ごめんね🙏)

術前説明では、大丈夫だとは思っていても、稀に発生する合併症についても説明する義務があります。起こりうる合併症について詳しく説明することで、かえって患者さんを不安にさせてしまっている可能性もあります。🥺

患者さんの不安は、本当に様々です。手術前に、患者さんが不安を打ち明けるのは決して悪いことではありません。もちろん、私たち医療従事者が、すべての不安を取り除くことは難しいかもしれません。しかし、患者さんの言葉に耳を傾け、共感することで、少しでも不安を和らげることができればと思っています。

ちなみに、私は早めに手術室に入っているのが好きです。
座って、ただ、リラックスしています。
何をしているのかって?
私が結界を張っています👈。
だから、大丈夫なのです。👌
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─ Two-stage pass:一度出す ─TLHへの私のこだわり9

2025-01-24 | 腹腔鏡
今回は、TLHにおける腟断端縫合の運針で、私が実践しているTwo-stage passというテクニックについて解説します。

Two-stage passとは?
縫合の際、組織が固かったり、左手がうまく寄せようとしても、一度で深く運針するのが難しい場合があります。このような場合に、無理に一度で運針しようとすると、浅い運針になってしまい、組織をしっかりと寄せることができず、腟断端離開のリスクが高まる可能性があります。そこで、私はTwo-stage passを採用しています。


これは、前壁と後壁を二度に分けて運針する方法です。簡単に言うと、一度針を出して持ち直すということです。

Two-stage passのメリット
一度で運針した方が早く済み、持ち直しもないので心理的にも楽です。一見すると早くてカッコよく見えるかもしれません。しかし、浅い運針になりそうな時には、Two-stage passを採用することで、深くしっかりと運針し、創部を正確にしっかりと寄せることができます。

もちろん、毎回Two-stage passを行う必要はありません。しっかり縫えるのであれば、One-stage passで問題ありません。かし、「ちょっと寄りにくいかな?」と思う時には、Two-stage passを採用することで、より安全で確実な縫合を行うことができます。



早さよりも確実性を
私は、早さよりも確実性を重視しています。「ちゃんとやっておきたい」という気持ちから、Two-stage passを採用しています。筋腫核出術でもこうすることで、しっかりと子宮筋層を縫合し、安心して妊娠出産を迎えていただくことができます。小さなことにも手を抜かないでおきたいですね。😊 
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