ユーラシアウァッチ:ロシアから見る世界情勢

ロシアは一帯一路の地政学的要所。米中対立や中東対立のキープレイヤー。マスコミのロシア情報は貧しい。その致命的穴を埋める。

イラン・スレイマニ司令官殺害をめぐるロシアからの反応 英雄視する声も根強い

2020-01-06 13:08:47 | 中東におけるロシア
1月3日、マクロン仏大統領の呼びかけでプーチン大統領は電話会談に応じ、中東情勢に関して意見交換した。
同日付ロシア大統領府公式サイトによれば、両大統領は、アメリカによるバクダッド空港ミサイル攻撃によるイラン革命防衛部隊司令官スレイマニ氏殺害が中東情勢を深刻な混乱に導くことを懸念する姿勢で一致した。
1月5日ロシア下院国際問題委員会のアレクセイ・チェパ副委員長は、イランが核合意離脱を表明したことについて「スレイマニ氏殺害によって生じた状況は軍事衝突、イランによる核開発プログラムの歯止めの利かない発展につながりうる」と懸念を表明した。
一報中東情勢に詳しい現代イラン研究センターのサファロフ所長は「イランが核兵器開発に突き進むとは思えない。イランで軍事用核技術開発を推進する決定は取られていない」と指摘する。
同時にサファロフ所長は「最大の問題は(合意離脱により)、イランが核開発プログラムで何を行っているのかチェックするすべがなくなったことだ」と述べる。

ロシア国内ではスレイマニ氏の殺害を批判するだけでなく、同氏の対テロ戦英雄としての業績を肯定的に評価する声も強い。
1月5日在モスクワイラン大使館前では、スレイマニ司令官追悼集会が開かれ、イラン、イラク、シリア等中東諸国出身者約50人が集まった(同日付イズべスチア)。
「奴らはスレイマニを殺害してこれで終わりだと勘違いしている。スレイマニ司令官は我々に道を示し、偉大な英雄となるための生き方の見本となったのだ。殺害者達にはそのことが分かっていない!」とアリと名乗る追悼集会参加者は言う。
1月6日付イズべスチア紙報道によれば、ロシア連邦防衛省はスレイマニ氏殺害を「近視眼的行為」として批判すると同時に同氏を「対テロリズム戦での疑い難き功労者」と評価する声明を出している。