ユーラシアウァッチ:ロシアから見る世界情勢

ロシアは一帯一路の地政学的要所。米中対立や中東対立のキープレイヤー。マスコミのロシア情報は貧しい。その致命的穴を埋める。

プーチン「(北方領土)引き渡さない」とは言っていない 

2019-06-24 15:42:17 | 北方領土
「プーチンが国営テレビのインタビューで北方領土を引き渡す計画はないといった」と報じられている。
例えば24日の産経オンラインは<「(日本に引き渡す)計画はない」と述べた>と言い切っている。
そして「引き渡す計画はない」とプーチンが言ったことを前提に、菅官房長官も「粘り強く交渉」とコメントしている。

実は、このインタビューでプーチンは「北方領土を引き渡す計画はない」とは一言も言っていない。
インタビューは恒例の国民直接対話の後、行われた記者会見中のもの。
北方領土を取材してきたばかりの国営テレビ「ロシア1」のインタビュアーが「南クリル(訳注:彼らはこう呼ぶ)では、。あちらでは皆一体どうなるのかと心配しています。新しい学校もできたし、道路の整備も進んでいる。子どもたちは学校にロシア国旗も掲げたんです。この国旗を降ろすということになるんですか?」と厳しく突っ込む口調で、プーチンをにらむように見据えて聴いた。
それに対してプーチンは苦笑いして「そんな、そんな(旗を降ろすなんて)計画はありませんよ」と答えただけだ。

「旗を降ろす」は確かに「主権を明け渡す」ことの同義だろう。
しかし「引き渡し」という語は、プーチンが何度も言っているように、そして悲しい事実ながら日ソ共同宣言に書かれている表現である。
「引き渡し」は「主権の返還」を必ずしも意味しない、という解釈が法的には成り立ちうる。
だからプーチンは「小学校の旗は降ろさないけど、条件付きで二島は引き渡す」ということくらいは頭の片隅にある。
確実に言えるのは、このインタビューでプーチンは「引き渡さない」とは一言も言っていない。
小学校の国旗を降ろす云々について「そんな計画はない」といっただけだ。
そして真正面からにらんでくるテレビ記者に対して、珍しく目をそらすように苦笑いして答えたプーチンの表情が面白い。
あまり、こういう表情を見たことないなあ。
インタビューの動画リンクを下に張ったので、表情だけでも見てみてください。少しかわいそうにすらなってきますよ。(開始1分あたりから)

https://www.vesti.ru/doc.html?id=3160663#/video/https%3A%2F%2Fplayer.vgtrk.com%2Fiframe%2Fvideo%2Fid%2F1914687%2Fstart_zoom%2Ftrue%2FshowZoomBtn%2Ffalse%2Fsid%2Fvesti%2FisPlay%2Ftrue%2F%3Facc_video_id%3D801845


ちなみに以下は大統領公式サイトに掲載された、ほかの記者からの質問に対する回答。
こちらの記者は、遠慮がちに領土問題を取り上げずに聞いている。
プーチンは「期待するのは対話の継続」と言っているように、今回で条約締結できるとは思っていない。
「最終決定を先送りするような問題」というのは意味深だ。おそらく共同ウラジオストクからの記事のようなことを念頭に置いているのではないか?


6月21日国民直通対話後の記者会見
質問(訳注:ロシア1チャンネルでは、日本の報道機関からの質問と紹介されている):日ロ首脳会談はすぐ目の前ですが、安倍晋三氏を友人とお呼びですね。今回の訪日に期待することは何でしょうか?いくつもの会談が予定されているだけでなく、日本のロシア文化年・ロシアの日本文化年の終了式もあります。何かサプライズは期待できますか?例えば畳の部屋に招待されたり、温泉に入ったり。

プーチン:畳の部屋とか温泉というのは、国際関係において最重要サプライズではありませんね。もちろんそういうのも重要で、面白いことではありますが。雰囲気をよくする効果はありますので。
 日ロ首脳会談に期待することですか?対話の継続ですね。シンゾウは私達同様に、関係の完全な正常化と平和条約締結を望んでいると信じています。もうあと一歩で手が届きそうに思うのですが、そこで最終決定を先送りにするような問題が突然に生じるようなことがよくあります。
 でも疑いようもなく、私は何度も言ってきたことですが。日本の代表者としての安倍晋三首相もロシアも日ロ関係の最終的な正常化を望んでいるのです。日本国民もロシア国民もそれを願っているのです、その最終的な正常化を目指していきます。
ありがとうございます。




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