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代々木で 泳いで ヨモギ餅
元気な 演技で 六本木
寒気が抜ければ 萌黄色
ロマンスカーで 行きますかぁ
代々木の先の
この踏切りを待っていたらふと思い出した。
何十年も前の朝に、ここで同じように
踏切りが開くのを待っていたら、
前の車から視線を感じたのだった。
前の車の後部座席に乗った若い女
というより女の子が私を、いや
たぶん私の真っ赤な車を見ていたのだった。
当時、アラレちゃんメガネと呼ばれた
縁の太い大きなメガネをかけた少女。
彼女の乗っている車は、
カローラかサニーのような大衆車で、
リヤガラス越しにいくつかの
ぬいぐるみが置いてあるのが見えた。
その時は私もまだ若かったから、
彼女が誰かすぐにわかった。
私を見ているのか、車を見ているのか、
それとも俗世間を眺めているのか、
しかし楽しそうには見えなかった。
私はカゴの中の鳥を思い浮かべた。
助手席の男が気がつき、
後ろ向きの彼女を軽く咎めたように見えた。
そして踏み切りが開いて、
車は必要以上にダッシュで走り去った。
しかし、
私にはそれがスローモーションのように見えた。
evolucio