(まるで鱗面のようですが、寿のタガネ散らしでございます。)
2020.1.1 大晦日の昼寝に見た夢の話
腹が減ったから何か食べようと中華料理屋へ入った。
40才くらいの中国人らしき細身の男が厨房にいて、おそらくその男の母親なのだろう年配の女性が料理を運んだりレジを打ったりしていた。
私は椅子に座り、まあ大晦日だから少し飲んでもいいかなと肴にもなりそうな料理を3品注文し、誰もがそうするように店内を見渡した。
掃除は行き届いていない。あちこちに生活の匂いがする。つまりこの店は彼らの仕事場であり生活の場でもあるわけだが、まあそんなことはどうでもいいいさ。腹を壊さない程度の料理が出てくれば。
私は鷹揚に構え、まだ何も料理のないテーブルの上の醤油の瓶などを見ていた。すると突然テーブルに皿が乱暴に置かれた。動いている。何かが。皿の上で。エビか。
すぐに振り返り、ひと仕事を終えて定位置に戻る割烹着の後ろ姿に声をかけようかと思ったが、その「私はなんにも答えませんよ」という鉄壁の守りが如実に顕われた背中を見たら少しばかり気圧されて、ほんの一瞬だけ息を呑み、いやしかしここで負けるわけにはいかないと奥の厨房に届くくらいの声を私は発した。
「ちょっと、このエビ、オレは頼んでないぞ」
文字にするとマヌケであるが、私は確かにそう言った。
そう言いながら無意識に皿を返そうと思ったのか自然と手が皿に伸びて、がしかしまだ動いているエビに躊躇し、私の手は皿の手前の空中で中途半端に止まった。
「まだ食べちゃダメ!」
声が飛んできた。割烹着の声である。手を伸ばした私がエビを食べると思ったのだろう。要するに紹興酒に漬けたエビがもっとぐったりとして味も染みるまで待ちなさい、ということらしい。が、いやいや、まず頼んでもないし、食べる気もないし、第一この酔っぱらいエビとかいう料理は生で食べるものじゃないだろう。煮ようが焼こうが今まで食べたことはないが。だって私はエビをそんなに好きじゃないから。
だからエビの料理の番外地にありそうなこんなメニューを金輪際頼まないわけだよ。たとえ夢の中であっても。
男が厨房から出てきて母親と話をぼそぼそと始めた。そして男が私のテーブルへ来て、あなたはメニューの写真を指差して注文をしたが、その写真がエビだったと母は言っている、とわりと穏やかに主張してきた。
いいや違う。オレが指を指して注文したのはこれだ、とメニューを開いてその写真を探した。のだが、あれ、写真がない。これは違う。これも違う。おかしいな。いやおかしいな。
私はメニューを初めから捲り、注文した写真を探した。
男は私の横に立ったまま、どうやらもう勝ったかのようにふふふと笑っている様子。
どうしても写真が見つからない。すっかり術中に嵌ったか。もう鷹揚さも空腹感も失せてしまって、これ以上ここにいると私は何かやらかしそうなので、面倒だから金を払って出ようと決めた。で、いくらだ?
「3750円デス」
また微妙な値段を言ってきたな。安くはないが高くもない。
「3000円にしとけよ」イライラして言動も尖ってきた。
「ハイ、ジャ3000円デス」素直に負けるとこもイライラする。
支払って店を出ようとすると靴がない。
あれ、そういえばここで靴を脱いだのか。よく憶えていないが、まあそういうことなのだろう。振り返ると店主の男がニコニコしている。
「靴ハ外ニアリマスデス」
そうはいっても外で脱いでここまで来たのか。そして帰りは外まで裸足で行くのか。
疑問はいくらでも湧いたが、しかしもうこいつらに関わっているのがすっかりイヤになっていたから私は裸足で外に出た。
靴、靴、靴、オレの靴。おっと、まさかアレか。
突き刺さっているのだった。私の靴が。どこに。何かのデカい塊に。何の? どう見てもあれは“運固”だ。象の運固だ。象のだとなぜわかる。回りが象の足跡だらけだからだ。つまり切り株くらいのデカい運固に私の靴が45度の角度で見事に突き刺さっているのだった。
この運がたっぷりついた靴を履いて帰るか裸足で帰るか、それが問題だ。
迎春
皆様、素晴らしい一年をお過ごしください。E V O L U C I O 手島
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