卒業論文の概要紹介PARTⅤ

2007年02月09日 | 授業&実習
 概要

 S君:「ヤマザクラ種子の貯蔵方法が初期成長に及ぼす影響」

1、試験方法
 2005年6月邑智郡美郷町酒谷地内で種子を採取し、果肉を取り除き、地下30cmの土中、冷蔵庫(4℃)、室温にそれぞれ300粒づつ播種まで貯蔵した。
 冷蔵庫及び室温保存は発芽促進のため10月25日から一昼夜蒸留水に浸水した。土中保存は発芽促進処理は行わなかった。2005年10月、苗床に1m方形枠を設置して、300粒播種した。
 調査は50cm方形枠を調査対象とし、発芽率、成長量を調査し、苗高、葉数を成長量として計測した。苗高は1ヶ月(4月21日開始、後1ヶ月毎)、葉数は1週間(4月21日開始、後1週間)毎に計測した。
 施肥は、各調査区とも基肥として化成肥料(N:P:K=15:15:15)を12g/㎡瀬用した。

2、結  果
(1)発芽率
 貯蔵方法の違いによる発芽率は、土中貯蔵(93%)が最も高く、次いで冷蔵庫貯蔵(77%)、室温貯蔵(28%)の順となった。谷口(1997)の報告によると土中、冷蔵庫貯蔵を行った場合の平均発芽率は70%であった。本試験おいては、谷口の平均発芽率より土中貯蔵は高く、冷蔵庫貯蔵はほぼ同等だった。このことから、ヤマザクラは発芽率が高かった土中貯蔵が最も有効な保存法方法であると考えられる。また、サクラ属カンヒザクラの室温貯蔵を行った結果は20℃で0.2%の発芽率であった(勝田 1998)。今回の試験では貯蔵期間が4ヶ月であったが、同様に発芽率の急激な低下が認められた。しかし、土中貯蔵は貯蔵中の虫害、苗畑の耕転などの外的要因があるため長期保存する場合は外的要因への考慮が必要である。

(2)成長量
発芽初期の苗高には3貯蔵方法間に差は認められなかったが、発芽から2ヶ月経過した6月から貯蔵方法間に差がみられるようになった。土中、冷蔵貯蔵の苗高は8月下旬まで成長したが8月下旬以降はほとんど成長は認められなかった。しかし、室温保存は9月下旬まで成長した。

 土中、冷蔵貯蔵は発生した苗木が密集し、苗木下部において被陰下と同様の環境になっていた。一方、室温貯蔵は生育密度が低く、解放状態であった。サクラ属の苗高伸長期間は開放下で101~150日、被陰下で90~134日と日照条件で変わってくる(清和 1989)。このことから、日照条件による成長期間の差が発芽後の苗高成長に影響したものと思われる。 
 
 着葉数は7月下旬まで差が認められなかったが、9月以降では室温貯蔵以外の貯蔵方法で減少した。これは苗高と同じく、土中、冷蔵貯蔵は生育密度が高く、陽光が当たらない苗木下部の葉が落下したものと考えられる。

 最終調査日の10月25日おける苗高と着葉数には相関関係が認められた。
   y=20.738Ln(x)-14.198
   R=0.7688  
 現在ヤマザクラには山行き苗の規格はない。クヌギ山行き苗規格と同様の苗高40cmのヤマザクラ苗木では10月25日の着葉数が20枚以上のものが多かった。このことから、ヤマザクラ山行き苗の生産には葉組織の充実を図るためのカリ肥料を追肥とし、10月下旬に葉数20枚を確保する管理がよいと考えられる。
 
3、まとめ
 室温貯蔵では発芽率が極端に低く、ヤマザクラ種子の貯蔵方法としては好ましくないと考えられる。一方、土中、冷蔵庫貯蔵では発芽率がよく種子の保管に適している。しかし、土中貯蔵は虫害、苗畑の耕転など外的要因があるため、採取翌年までの期間に止めることが好ましいと考えられる。発芽率や安全性を総合的に考えると冷蔵庫貯蔵が最も適していると考えられる。



          回答に苦戦するS山君

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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ヤマザクラ (T.F.)
2008-02-01 18:00:11
種子の貯蔵は難しいので、できたら再試験して下さい。広葉樹育苗手引きを参考にしてみて下さい。
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