卒業論文の概要紹介PARTⅣ

2007年02月06日 | 授業&実習
 概要                                   
  S君:「スギ心材色と乾燥温度の関係」

1,試験方法
1)共試丸太
 横打撃共振法により周波数を測定し、赤心と黒心を判別した。DBH22,26,28のスギ(36年生)を赤心、黒心3本ずつ選木し、伐倒後3mに造材し1番玉及び2番玉を使用した。

2)共試材の製材
 幅7cm×厚2.6cm×長さ300cmに製材後、幅6cm×2cm×長さ30cmに切断し、赤心60枚、黒心60枚の計120枚を共試材とした。

3)乾燥
(ア)天然乾燥
 屋外土場に桟積みし、乾燥による狂いを防ぐため10,48kgの重量を掛けた。測定は1日1回材色と重量について行い、重量変化が小さくなれば2日に1回とした。

(イ)人工乾燥
 温度条件は40・60・80・100℃の4条件について検討した。40・60℃は1日1回、80・100℃は1日2回(12時間おき)材色と重量について測定した。

4)測色色差分析
(ア)表色法
 表色法はCIE表色系とMunsell表色系であるHunterの⊿L*⊿a*⊿b*表色系を採用した。

 これは⊿L*⊿a*⊿b*の3次元空間で示され、⊿L*は明度指数、⊿a*・⊿b*はクロマティクネス指数を示し、⊿a*と⊿b*により彩度を表している。また、二つの物体の色差は⊿E*で計算される。求めた⊿E*はCIE(国際照明委員会)は⊿L*⊿a*⊿b*表色系により評価した。

(イ)測定機器
 測定は分光式色彩計(SE-2000)を用い、測色面積は反射試料台最大のもので30mmを用いた。
 なお、測定は心材部に限り供試材料ごとに2ヶ所で行い、その平均値で分析した。この試験では含水率15%時の値を用いた。

2、結果
1)心材色と乾燥温度の関係
(ア)明度指数⊿L* 
 明度指数と乾燥温度の関係は、60℃(62.26)、80℃(62.27)が高い値を示し、100℃(50.51)が低い値を示した。天然乾燥と各乾燥温度を比較すると、100℃を除いていずれの温度でも天然乾燥(58.90)より高い値となり、温度条件で差がみられた。特に60℃から80℃の条件で明度が上がると推定される。

(イ)彩度
 彩度は値が高いほど鮮やかな色となり、低いと鈍い色になる。各乾燥温度別に比較すると100℃を除く条件(24.32~24.77)ではほぼ同様に高い値を示し、100℃(21.98)が低い値を示した。これにより、乾燥温度が高くなるほど彩度が低くなることが分かる。

2)乾燥温度による心材色の改善
(ア)明度指数⊿L* 
 黒心の明度指数は天然乾燥、各乾燥温度とも50.52~53.13であり。赤心の天然乾燥の明度指数(以下「赤心(天)」と表示)より低い値を示し、黒心では80℃(53.12)が高い値を示し、40℃(50.52)と低い値を示した。赤心と黒心の差が明らかであることが分かる。

(イ)彩度
 黒心の彩度を乾燥温度別に比較すると、天然乾燥(21.91)が高い値を示し、100℃(18.28)は低い値を示した。赤心(天)は赤心の彩度の範囲(27.40~21.98)の中で最も高い値を示しており、黒心の彩度との違いは明らかであった。また、黒心の天然乾燥の彩度は、赤心の100℃(21.98)に近い値となった。

(ロ)クロマティクネス指数⊿a*⊿b*の関係
 ⊿a*・⊿b*を乾燥温度別に比較すると温度が高くなるにつれて低くい値を示した。また、⊿a*値と⊿b*値の間には相関関係が認められ、⊿a*値が高ければ⊿b*値も高くなることが確認できた。

(ハ)心材の色差⊿E*
 赤心の色差は天然乾燥(6.63)が各乾燥温度(10.53~12.01)に比べて低く、温度条件で差が認められたが、黒心ではほぼ同様の値(10.00~12.01)となった。
 赤心と黒心の製材直後と乾燥終了時の心材色の色差は、CIEの表色系⊿E*の「色差の程度の評語:6.0~12.0・きわめて著しく異なる(Much)」に相当する値である。これは、材色が乾燥前に比べて大きく変化したといえる。

 以上の結果から、赤心の天然乾燥は⊿L*が低い値となるためやや暗くなるが、彩度が高いため鮮やかな色に仕上がると推察できる。人工乾燥では、明度に関しては天然乾燥より高くなる条件もあったが、彩度が低く、天然乾燥の材色に近づく条件はなかった。

 また、100℃における明度および彩度は、他の温度条件に比べ低い値を示しており、変色の大きさを示している。このことから、乾燥温度を100℃未満に下げることが変色を抑制するには重要である。

 一方、乾燥温度による黒心材色の改善方法を検討した結果、赤心の天然乾燥に比べ明度及び彩度が低かった。しかし、明度は80℃、彩度は天然乾燥が他の乾燥条件に比べて高い結果となった。 


丁寧に説明するSさん。

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