「奴、今日、来るみたいだよ」
地元の盆踊り会場になっている公園で、ぼんやり立って同級生が居ないか眺めていた3号に友人が言った。
『奴』とは、同じクラスには一回なっただけだが、小学校から一緒で、スポーツは万能と言っていい位で、オツムは弱いが腹筋が割れている、なかなかのイケメン。
中学時代の『奴』は、ズンドー中ランという身なりでも、笑顔に可愛さが残る優しい性格の男だった。
3号的にも、中学卒業以来会っていない『奴』との邂逅を楽しみにしていたので、その報告のおかげで、待っている時間がより楽しいものになった。
どの位時間が経ったのだろうか、暫くすると、『奴』が到着した。
到着するなり地元の連中に囲まれて始めたので、負けじと3号も近づいていった。
『奴』の出で立ちはと言うと、白いスニーカーを素足で履き、白いピチパン、素肌に袖がふわふわの白いブラウスを着ている。
全身白という珍しい出で立ちに驚いている3号なのだが、前もって聴かされていた『奴』の現況を思い出していた。
”芸能事務所に所属しているらしい”
芸能界に入るとセンスが変わるんだと思い直し、更に近づいていくと、何か違和感・・・・
もう一度、下からチェックする。
素足に白いスニーカー
白いピチパン・・・
ん・・? 此処まではいい・・・
ベルトはしていないけど・・・待てよ・・・足の形が変だぞ・・・
あ 足が内股ーーーーー????
中学時代の『奴』を知っている身としては、信じられない事態が彼の身に起きていた!!
が、
上半身に目を移した3号を、容赦無く、更なる衝撃が襲う-----!!
両肘が脇にピタリと付いて、軽く握った両拳は顔の横、爪の方を相手に向け、ふわふわのブラウスの袖をフリフリしながら、血気盛んな男子とは思えない柔らかい笑顔と言葉使い、そして、今ではTVでよく見掛ける、妙な腰つきの妙な身振りで旧友達と話していたのだ。
『奴』の余りの変化に愕然としながらも近付き、『奴』に、どこの芸能事務所に所属したのか訊いてみた。
帰ってきた答えは、『ジャニー◯事務所』
ジャニー◯事務所に関するコッチ系の話は、どうやら本当の話だったらしい。
掘られた男の変わり果てた姿を、初めて目の当たりにした。
芸能界の闇の奥深さと、大人達の怖さを垣間見た夏だった。
その後、『奴』の消息は、とんと聞かない。
掘られるだけ掘られてポイされたんだと思うけど、新宿2丁目に行けば会えるかもしれないと確信している。
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