Entrance for Studies in Finance

信用取引と裁定取引

margin transactions and arbitrage transactions

 

信用取引と相場
 信用取引とは、証券会社から融資あるいは株式の貸付を受けて行う株式売買をいう。これは第二次大戦後、アメリカの占領軍による事実上の統治下にあった日本に、アメリカの証拠金取引margin transactionsを導入したことに始まる。
取引所が証券金融会社と協議して選定する銘柄(このうち株券・資金のいずれも借りられるのが貸借銘柄、融資のみ受けられるのは制度信用銘柄)について日本証券金融や大阪証券金融などの金融会社が資金や株券を証券会社を通じて貸し出す「制度信用」(取引所が選定した銘柄を対象)と、証券会社が扱う一般信用(返済期限は証券会社が自由に決められます)との2つがあります。
 
 信用取引については1997年以降登場したネット証券(オンライン証券)が顧客獲得のため、また収益対策として信用取引利用を促進したとされています。それまでは信用取引開始にあたって、証券会社は多額の預かり資産があることを要件にしていました。この要件をネット証券はどんどん緩めたのです。
 ここでネット証券では自社の顧客属性んどをもとに独自に上乗せ金利(制度信用金利に対する)を設定する。この厚い金利の利ザヤが、ネット証券の収益を支えているといえる。ネット証券は、手数料でサービスしているわけですが、信用取引するような売買頻度の高い顧客をあつめることで、信用取引のところでしっかり儲けようとしてきたわけです。

 信用取引のリスクを割けるためには、逆指値注文が有効だとされます。信用買いの場合は、現在値より安い価格で売る設定にします。信用売りの場合は現在値より高い価格で買う背設にします。このようにすることで、追証に悩まされずリスクを一定の範囲におさえることができます。

 もう一つ最近推薦されているのがペアトレードです。相対的に割安な銘柄を信用買い。組み合わせて割高な銘柄を信用売りします。この二つの銘柄で割高な銘柄が値下がりするほど(あるいは割安な銘柄が値上がりするほど)利益がでます。

   東証の信用取引規制もゆるんだままであり、株価下落による個人の損失が広がりやすくなっている。
 東証では1990年9月以来委託保証金率を30%に下げたままである。これに対し維持すべき比率が維持率でこの比率をあくまで当初取引金額に対し維持する必要→追い証 なお追いを入れないと強制決済され損失は担保から差し引かれます)。時価が買値より10%以上下がると追い証が発生し始める 20%に近くなるころには処分売りが出つくして 株価の反転は近いとされる(信用評価損益率20%超が続く状態は最終局面 投げ売りを経て相場は底とみられる 全く逆に3%未満は相場の過熱を示す)。なお状況により個々の証券会社が増担保規制は可能(たとえば委託保証金率を50%以上、うち現金を20%以上 維持率は20%から30%の間で設定など)

 2012年1月から信用取引の規制が緩められた。信用取引で買った株を売却することで、証拠金を回転すること(新たな信用取引の証拠金とすること)が可能になった。これは12年以降、信用取引を増やす効果があった。また市場統合(2013年7月16日) 大阪の方が制度信用銘柄の選定基準が緩かった。大阪に合わせて東京を緩めたとされる。証券金融会社も、大阪証券金融が日本証券金融と合併された。このほか、証券金融会社より銀行から資金が証券会社にはいっていて、信用取引の規模か拡大を銀行マネーが支えているとされる。1990年代のバブル期にも同じことが、信用買い残の膨張につながったとの指摘がある。

信用取引評価損益率
 信用取引評価損益率=(信用買い残金額ー同左時価総額)/ 信用買い残金額
 損益の含み損益を表示する。この数字が3%未満で相場の過熱。10%超えで追い証発生。20%のところで底値を読み取る。

 20%より悪化すると相場の底入れをいい、0%に近いつくと相場の天井をいう。この数値のもう一つの評価は、個人の投資余力である。マイナス10%を下回っていると、悪化している。10%未満になってくれば改善しているという。

 証券会社の側からみると、証拠金が2割で2割下落すると、強制売却して手元にはようやく貸付金が戻るだけです。
 つまりあとは値下がりした分が損失になります。
1990年10月以来代用有価証券掛け目も80%に緩められたままになっている(過去最高 これ以下に各証券会社が決められるが変更は投資家に大きく影響する。たとえばマネックス証券はライブドア株などの突然の除外措置強行2006/01して投資家の不信を買った)。
なお再担保契約というのも証券会社にとって有利な取り決めとなっているが、この点は債券レポ取引のところで再述する。

 信用取引については、売りでもうけるチャンスを個人にもあたえるものという弁明があります。

信用買い残 売り残
 この信用取引について。信用取引の買い売りの積み上がりは相場の勢い(相場の先高観)を示す。また(決済されていない)残高の積み上がりは反対売買による解消。買い残の積み上がりは将来の売り圧力といったように反対の動きにつながる(後述)。この議論は後述する指数先物とよく似ている。
 毎週火曜日に前週末の信用残速報値を発表される。
 買い残(制度信用と一般信用の合計)が積みあがるの相場が右上がりの場合だけでなく、値下がりで損失を抱えた客が株価の反発を待つ局面でも生じる。こうした場合は、売り待ちの客が多いので値段が上がると売り(戻り売り)が増え上値が重くなる展開になる。
 買い残は株式時価総額の1%、あるいは金額で3兆円を超えると、過熱感(peak)が指摘される。
買い残を売り残で割ったものを信用倍率(信用取組倍率)と呼ぶ。株価上昇局面で買い残、あるいは信用倍率の上昇(投資余力 先高期待示す しかし行き過ぎると相場の天井感高まる→利益確定、売り圧力)。買い残の急減(損失拡大による手仕舞売り あるいは買い意欲の減少)。売り残、あるいは信用倍率の低下(→買い圧力)。

信用倍率
 信用倍率(信用取組倍率)の使い方だが、数字はまず上昇するものを相場の人気の度合い、あるいは過熱の程度を示すものとして使うが、信用倍率の高いものは売り圧力が高いと考えられる。これは残高解消を考えると、買い残は売り圧力=売り需要であるため。倍率が1を上回ると、需給圧迫をいい、逆に1未満なら需給圧迫は少ないとする。

 そこで信用倍率が1より低いものを買い候補とする。そして高い信用倍率のものは、売り圧力が高いとして、選別の対象から外すのは賢明であろう。
 信用倍率ランキング 上位 下位 週末値 Yahoo Finance

 逆に信用倍率が低い銘柄は、買戻し余地が大きいという解釈が成り立つ。

信用倍率=信用買い残/信用売り残
倍率の上昇 相場の先行きへの強気→将来の売り圧力の高まり
      押し目買いで上昇続くことも。
倍率の低下 将来の売り圧力の低下(相場反転期待)
個別銘柄の分析により有用

信用買いの信用評価損益率 20%が目安・・・最低保証金20%あるいは25%が多いため。保証金の約3倍の金額の株を購入できる。この比率を切ると追証発生。追証発生から2営業日。払込なかれば強制的に売却する。追証発生の2営業日正午まで。入ら込みなければ午後にも強制売却。 

貸借倍率

 貸借倍率は、証券金融会社段階での貸株残に対する融資残の比率。1を上回ると買いが多い状態。1を下回ると売りが多い状態。売りが過熱しており、借り株のコストを意識する必要があります。営業日ごとに発表さえることと、信用倍率と同様の使い方ができるため、信用倍率の速報(代替)として使われる。
 次に信用評価損率。これは日本経済新聞社が計算しているもの。少し分かりにくいが以下の計算をしたものとみなそう。
 信用評価損率=(信用買いの約定金額ー信用買いの時価金額)/(信用買い残)
 つまり信用取引で買った株式の含み損の割合。株価が上がり約定時より時価が増えると数字はマイナスになる。マイナス5%未満で(マイナス3%未満ともいう)相場過熱感を示す。数字の増加は買い方の損失の増加を意味する。<手じまい売り>が進んでいることを現す。プラス20%を超えたところで相場は底(下限)に近いとも。
信用取引(チャート golden chart)

相場軟調と信用取引
 売りには保有した上で売りをしかける「つなぎ売り」がある。これは手持ち株処分で手仕舞うもの。これに対して保有していないが売りをしかけるのが「カラ売り」である。
 売りが多いと逆日歩(株の借り賃)が上がりコスト高になることもある。(→金融庁は日証金にたいして貸株料手数料を不当に引き上げていたとして改善命令を出した。07/12/06)

個人売買に占める信用取引の比率

period 売り 買い
20100329-20100402 47.3% 55.0%
20100405-20100409 52.3 57.9
20100412-20100416 54.5 58.1
20100419-20100423 55.6 58.8


資料:東証一部部門別売買統計

上場投信ETFを使った信用取引
値下がり局面では現物株の信用売りのほか、株価指数先物の売り、株価指数オプション取引もリスクヘッジ手段にはなる。
 注目されるものに上場投信の信用売りもある。これは信用取引内の含み益・含み損が通算されるメリットを生かして、現物株買いでの損失を上場投信売りの利益でカバーするというもの。
上場投信は株価指数連動型投信から始まっている。これは通常のインデックスファンドに比べて投資金額が大きくなってしまうものの信託報酬の安さが大きなメリットとされる。
 日本では1995年5月29日に日経300株価指数連動型上場投信が全国8取引所に上場されたのが最初。その後、投信法の改正を経て2001年7月3日に東証と大証にあわせて5銘柄が上場され取引が本格化している。

株価指数先物取引、裁定取引、オプション取引
 1988年9月3日 日経225先物(大証)
 1988年9月3日 TOPIK先物(東証)
 1989年6月12日 日経225オプション(大証)
 1989年10月20日 TOPIXオプション(東証)
 値が上がるという場面では株価指数先物の建て玉の急増。しかし先物が増えると、今度は先物価格の上昇に対して株価指数先物を売って指数採用銘柄の現物を買う(割高な先物を売り、割安な現物を買う)動きがでてくる(先物売り+現物買い)。これを裁定買い残の増加といい、現物株相場の強気を示す。
 先物には現物株にくらべ流動性が高く、売買に必要な資金が少ない特徴がある。相場が不安定になると価格下落リスクを回避する目的での取引が膨らむ。ヘッジ売りが増えれば市場の流動性が高まり、短期の値幅取りもしやすくなる。
 しかし先行きに不安が出てくる(先物が大きく下げると)とこの残高は売り圧力になる。裁定解消売りといって、先物を買い戻して現物を売る動き(これが裁定解消売り)に転ずる(先物買い+現物売り)。
 SQ(特別清算指数)算出日(3,6,9,12月の第二金曜日)を中心に乗り換えるか手仕舞うか(解消売りがでるか)が毎度の議論となる。
 先物の持ち物が増えると現物の買い持ちを減らして調整(外国人の先物売り+証券会社先物買い+証券会社現物売り)。
 なおオプション取引は先物のニーズにもつながる(これは現物株が先物のニーズを生み出すのと同様である)。オプション取引ではたとえばコールの買いポジションをとった投資家が、相場の下げ局面で先物の売りポジションをとる。
 なお現物株の商いの薄さが、オプション取引の活発化につながるという。まず相場変動率の低下はオプション料の減少につながり、収益確保のため取引枚数が増える。また合わせて証拠金の低下が、オプション売りにつながるともされる。
 
 値が下がる局面ではヘッジ目的での指数先物売り。現物が下げるほどヘッジ売りが増える。先物が下がると割安になった先物を買い戻し、現物株に裁定解消売りを出すものも。

 先物取引は現物株と異なり、信用取引と同様に売りでも利益を出せる。また現物株に比べ流動性が高い。証拠金取引である点は信用取引と同じだが、証拠金比率の違いから信用取引よりコストが低い。なお信用取引は日歩や貸し株料などの面からも先物に比べコストが高い。また信用取引は個別株が相手であるため投機性が高く(変動率も高い)。これらの点から先物取引のメりットは大きいが、投資単位の違いという制約があった。そこでミニ日経平均先物が始められた。
 2006年7月18日からは大証は取引単位が10分の1の日経225mini先物も取引開始。miniは個人投資家が主体。日経平均先物は主に証券会社や外国人投資家。

 日経平均先物(ラージ)は大証(午前9時から午後3時10分 刻み10円)、シンガポール証券取引所(日本時間午後4時から午後8時 刻み5円)、シカゴマーカンタイル(CME 24時間取引 円建てとドル建てがある)にも上場されている。

Corrected and reposted in Aug.10, 2011

Corrected in April 8, 2017

株式について
株価の割高・割安の判断
財務管理論 証券市場論  

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